第15話 冒険者の危機(2)
では、カルディア周辺図の地図画像をどの話に入れるかを検討します。
次は、実質18話『第15話 冒険者の危機(2)』です。私としては、入れるならここが最初の候補だと思います。どう思いますか。もし、入れるのに賛成ならどこに入れるかも考えて下さい。以下に本文を掲載します。
カルディアの冒険者が行くダンジョンは二つあるが、人気があるのは『ゾルタンの迷宮』だ。
だが、ゼロスがアルンを伴ってやってきたのは、カルディアからほど近いダンジョン『シェルノックスの洞窟』だった。
(やはり、こちらに来たか)
後をつけたフィンは、それを予想していた。
ゼロスが『シェルノックスの洞窟』を選んだのには理由があるからだ。
アンデッド系の魔物が多く、レベルの低い冒険者にとっては敵の強さ以上に消耗が激しい。一つ一つの階層がやたら広く、同じ階層でも奥に行くと魔物が強くなり、冒険者にとっては危険性が高い。
本来なら敬遠されるこれらの条件はゼロスにとっては好都合なのである。
アルンを階層の奥まで連れまわし、疲労を蓄積させ、窮地に追い込み、金目の装備品を奪って置き去りにする。あとはモンスターがケリをつけてくれるだろう。自ら手を下してもいいが、いかに素人に見えようとも隠れた技量を持つ新人がいないでもないのだ。無用な対人戦闘は避けるにしくはない。問題は他の冒険者に助けられ後で訴えられることだが、ただでさえ人気がなく探索に適さない今の時間帯ではその可能性も低い。
ゼロスは躊躇わず、ダンジョンの入り口にアルンを誘った。
「それじゃあ、入るか」
「は、はい」
フィンは止めたいところだが手段がない。
優馬が助っ人を連れて来るには、まだ時間がかかる。かといって、ダンジョンの中まで尾行を続けることもできない。ある程度離れていても優馬に念話を飛ばすことができるが、さすがにダンジョンの中からは無理だからだ。
フィンは現状を報告し、優馬を急がせることにした。
(優馬、急いでくれ。場所は『シェルノックスの洞窟』だ。奴らはもう中に入る。どれくらいで着く?)
(それほど時間はかからない。すぐに行く)
ゼロスたちはダンジョンに入り、ジリジリしながらフィンは優馬を待つ。
到着したのはそれから五分ほど後のことであったが、フィンには一時間にも感じられた。
(遅かったな。それで助っ人はどこだ?)
(来ないよ。奴は誰も追ってこれないような状況を選んだんだ)
もう、隠れる意味はない。
フィンは姿を現した。
「どういうことだ」
「今の時間は休養中で次の仕事を探すか、すでに仕事を終えた冒険者しかいないんだ。エルフィナがゼロスをマークしていたんだが、ハメられて手が離せなくなってしまった」
「……では、どうする」
「追うよ。僕らだけで」
フィンは後悔していた。
優馬はゼロスのステータスを見ようとして弾かれたが、フィンは精霊の力によりゼロスの力量をある程度掴んでいたのだ。優馬にはこの出来事がいい経験になる。いわばパーティというのは冒険者にとって最小の組織である。そこで知り合いのリュークに関わる事件に関わることは、アリシア様の『国を組織的な腐敗から救う』という願いを叶えるための縮図になると思っていた。だが、力量が違いすぎる。今の優馬ではアルンを助けるどころか自分の身を守ることさえ容易ではない。
本当は止めたい。
だが、フィンは「無茶だ」と言おうとしてやめた。ここまで優馬に付き合ってきてその人となりはわかっている。何にでも首を突っ込む好奇心の塊。とりわけ困っている人がいれば向かっていかずにはいられないバカな正義感を持つ男。それをフィンを悪くは思っていない。
逆にここで行かなければ優馬ではないと思っているぐらいなのだから。
「わかった。でも、どうする?」
「まずは尾行を継続する。アルンを放っておくわけにはいかないからな」
こうして優馬は初めてのダンジョンに入ることになった。
入り口から少し行ったところに大きな広間がある。このダンジョンの広間を冒険者たちは部屋と呼ぶ。最初の部屋にはゼロスたちは居なかった。部屋の奥には二つの通路が繋がっていた。
「どっちに行ったと思う?」
「右だと思うが、どちらでも構わん」
「なんでさ」
「このダンジョンの最初の区画は、どこを通っても同じ部屋にたどり着くからだ。難易度は多少異なるが、ベテランのゼロスなら問題ない。流石に入り口に近いところで新人を始末することもないだろう」
相変わらずよく下調べをしていると優馬は内心舌を巻いた。
しかし、それには何も言わず「わかった」と一言のみ。一方、フィンの方もくどくどダンジョンに対する注意点を並べ立てたりはしなかった。周囲に注意を配り、ダンジョンを進んでいく。
二つ目の部屋を過ぎ、次で三つ目の部屋。
入り口での待ち伏せはない。
中を覗き込むと……魔物だ、スケルトンが二体。
「いけるな」
「当然」
優馬は走り出し、スケルトンに切り掛かると見せて左に回り込んだ。
スケルトンはつられて一体は前に出てしまい、もう一体は体勢を崩している。
ガッ………どさっ
まず一体を袈裟斬りにする。
腰骨が砕け、すぐに動かなくなる。
キンッッッン
カン、カン ――カタッ
二体目とは剣を合わせたが、押し切れると分かり連続で頭蓋骨、肩、肋骨と打ち据えると力無く倒れた。
「終わったな。優馬、魔石はどうする」
「今はいい、先を急ぎたいからな」
「了解した」
中々先行する二人に追いつけず、焦り始めた頃
前に見える二つの部屋の一つから、剣を交える音が聞こえてきた。
それはまもなく止む。
戦闘が終わったようだ。
この入り口から静かに中を覗き込むと……ゼロス達がいる。
アルンは無事だ。だが、肩で息をしており、疲労しているように見える。
「ようやく追いついたな」
「アルンが想像以上に疲れているように見えるんだが……」
「ああ、極度の緊張からだろう」
フィンはそう考えていたが、実はそれだけではなかった。
それからさらにダンジョンを進んでいくうちに分かったのは、ゼロスがアルンを先頭で歩かせ魔物にも先に当たらせていたことだ。
助けには入るが、それは通常より一歩遅い。何度も死を覚悟する場面をアルンは味わわされていた。
「あんのヤロー」
「優馬。抑えろ」
「わかってるよ……仕掛けるにしてもまだ早いし」
キレそうに見えたのでフィンは宥めようと思ったが、当の優馬は落ち着いているようだ。
それより優馬が言った ”仕掛ける” という言葉が気になっていた。
何か作戦があるんだろうか。フィンにしてみれば、できればゼロスとの戦闘は避けたい。勝てるかどうかわからない……いや、正面切って戦えば、勝算は低いだろう。いよいよ自分も持てる力の全てを使って戦わなければいけないと覚悟した。それは、尾行するなら姿を消していた方が有利であるはずなのに、わざわざオオカミの姿を表している理由でもあったのだ。
フィンの精霊力は、あまり戦闘向きではない。
それでもオオカミの姿を取ることにより、魔物の力を使うことができるのだ。その力は中級冒険者の魔法に匹敵する。
ただし、その全てを使ってもゼロスには届かないとフィンは感じている。
大部屋で戦闘があり、さらに一つの通路の先にある小部屋でゼロスたちは休憩をとった。
このタイミングも普通より一歩遅い。
わざとリズムをずらしているため、アルンの体力はもう限界だ。
フィンは優馬が飛び出すのではないかと気が気でなかったが、妙に落ち着いた様子で何か考え込んでいる。
「どうした、優馬。何か対策でもあるのか」
「ああ、ある。それにはフィンの協力が必要なんだけど……」
それからの優馬はゼロスを追い払い、アルンを助ける作戦をフィンに打ち明けた。
フィンはそれを聞くと目を見開いて驚いていた。
「なんと!……しかし……うむ。確かに可能ではあるが」
「頼む!! アルンを助けるためにはこれしかないと思うんだ」
「わかった。やってみるとするか」
優馬は背嚢から汚いズタ袋を出した。
それに魔法を付与するようにフィンに頼み、あとはどのタイミングで仕掛けるかを相談した。
フィンは一旦姿を消して、ゼロスたちの前に回り込み、優馬は後方の死角になる地点で待機する。
新人冒険者アルンを救い、ゼロスを撃退する。
そのための仕掛け。
これから一人と一匹のほとんどペテンのような奇策が開始される。
イレギュラーですが、明日も一話投稿します。




