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第10話 盾を買おう!

「今日から優馬さんの討伐依頼禁止を解除します」

「ありがとうございます」


 緊急依頼を続けて受けたのが、ギルドの心象を良くしたのかも知れない。

 とりあえず、ホッとしたのは確かだ。


「今日はどんな依頼を受けますか」

「それでは、これとこれを」

「えっ!」


 フィオナが驚いたのは無理もない。

 優馬が選んだのは近場の森でキノコを取って屋台に卸す仕事と農家の引越しの手伝いである。


(魔物を相手にせんと戦闘力は増やせないぞ)

(そうだけどさ。もう鉄板を使いたくないんだよ)

(やはり、気にしているのか……お前が責任を感じることではないだろう?)


 フィンも抗議をしてきた。


 “鉄板の件” はバルカンが悪い。

 そんなことはわかっている。

 それでも、くよくよと悩んでいるのは、鉄板を使ったことで、若い冒険者の武器偏重の空気を助長してしまったこと。

 

 その空気を払拭したい。

 今の優馬の頭にあるのはそのことだけ。



(フィン、金を貯めたいんだけど)

(盾を買うつもりか。……まあいいだろう。だが、それで他人の意識まで変えられるものじゃないぞ)

(わかってるよ。いくら僕が正規の盾を使い始めても、誰もが真似するとは思えない)



 フィンがポンと白い煙をあげて姿をあらわす。


「おい、ここ人が通るかも知れないぞ。大丈夫か?」

「大丈夫だ。それより優馬。もう、責任を取ることは考えるな。盾を買うことには賛成だが、それは単に今のお前が防御に金をかけることは間違っていないからだ」

「ああ……わかったよ。それじゃあ、頑張って仕事するか!」

「ああ、それがいい!」


 フィンが人に見られる危険を冒してまで姿を現して、伝えてきたことの意味を優馬は正確に把握していた。



 翌日。


 優馬は冒険者ギルドに着くなり、すぐに掲示板へ。

 フィンは受ける仕事に “魔物討伐” と条件をつけていた。

 

 ”逃げるな” ということだ。

 おあつらえ向きの案件がある。


 場所はエイデンシェール大草原。討伐対象は一角うさぎ。

 何のことはない。初日と同じ獲物だ。


「この依頼をお願いします」

「あら、優馬さん。珍しいですね。掲示板の討伐依頼とは」

「ええ、少しお金が必要になりまして」

「ギルドとしても助かります。討伐をよく引き受けてくれたベイルさんが怪我をしてしまったので」

「えっ!」


 ベイルが。

 嫌な予感がする。


「どんな怪我ですか」

「革鎧の金具が弱っていて戦闘中に壊れて、ブルーハイウルフの牙を凌ぎきれなかったらしいです」

「復帰できるんですか」

「ええ、でも全治一ヶ月はかかるでしょう」


 二重の意味でホッとする優馬。

 一つはベイルが無事復帰できること。もう一つは怪我の理由が鉄板由来ではなかったことだ。


「あの……優馬さん? 依頼はどうしますか」

「……受けます」

「そうですか。それではすぐに手続きしますね」


 フィオナは、それ以上、何も言わなかった。

 彼女は、何も言う必要はないと判断したのだ。


 エイデンシェールの危険についてもつべこべ言う必要はない。

 優馬にはそれだけの実力がある。危険に見合う覚悟も。





「そろそろ、着くぞ」

「ああ、そうだな」



 盾の件は気にはなる。

 ベイルの怪我は鉄板のせいではなかったが、攻撃偏重の流れは自分のせいではないか、と考えそうになる。


 それを振り切る。

 今は仕事に集中が必要。


 依頼は一角ウサギ七匹。詳細事項には ”角の状態の良いもの” とある。

 単に倒せばいいわけではないとなると、なかなか骨の折れる仕事だ。


 気配を消し、相手に近づき、魔物の角を傷つけないように一撃で。

 手早く解体して、次の獲物を探す。


 それを繰り返すこと一時間。

 草むらから気配を感じとり、フィンが指示を飛ばす。


「前方右、出てくるぞ!」

「わかった」


 キュイィィィーーッ

 ガン

 ザクッ


 正面から突進してくる一角うさぎを弾き落とし、ナイフでトドメ。

 体勢が悪ければ、一度いなして相手の攻撃に備える。


 両手で持った鉄板に突っ込まれ、尻餅をついていた初日の優馬とは違う。

 技を磨き、力を付け、前は苦労したこの相手を今では問題なく討伐できる。


「よし、六匹目。かなり安定して狩れているな」

「怖いは怖いけど、さすがに慣れた」


 一角うさぎを狩る上で一番大事なのは、動体視力と反射神経である。

 魔物と毎日、対峙していれば身につく能力ではあり、このスピードに対処できるかどうかは、ちょっとした冒険者の基準になっている。


「この仕事の本質について気がついているか?」

「スピードだね。自分のと相手の両方」


 優馬はすでにこの仕事のキモについて把握していた。

 そして、いずれそれが自分を活かす道になることにも。


「なあ、フィン。買うとしたら木製バックラーだろう」

「そうなるな。単純な守備力では厚い鉄板にも劣るが、それ以上に…………その話は後だ。構えろ! もう一匹来たぞ。左手のクリプト草の茂みだ!」


 ガサガサッ

 キュウゥゥゥ

 ザクッ


 一撃で仕留める優馬。これで七匹討伐完了。


「どうする、フィン。薬草でもついでに取っておく? 常設依頼で買い取ってもらうと少し安いけど」

「いや、その必要はない。町に戻って防具屋に行ってみようじゃないか」

「いいのか! それじゃあ是非行こう、早く行こう」


 大草原を後にし、町に戻る。

 冒険者ギルドに一角ウサギの角七本を提出し、依頼は完了した。


 もちろん、担当職員はフィオナである。


「優馬さん、早かったですね」

「ええ、今日はこの後、防具屋に行こうと思っていて。それじゃあ……」

「あっ、ちょっと待って下さい。ガルス!」


 窓口から離れるところで呼び止められた。

 フィオナに声をかけられたガルスがやってきた。


「どうしたんだ、フィオナ……ああ、なんだ坊主じゃないか。また、別の獲物の解体を覚えたいのか」

「いえ、優馬さんは防具を揃えるそうなんですよ。初めてだと言うので、それで……」

「そうか。そう言うことなら………………職人通りの二つ目のブロックにある『ガルドの店』ってのに行ってみな。店主の口は悪いが、品物は俺が保証する」

「ありがとうございます。行ってみます」


 優馬はガルスが答えるまで、少し間があったことが気になったものの、それには触れず礼を言い冒険者ギルドを辞した。



 しばらく歩いていくと言われた場所にたどり着いた。


 職人通り。

 普通の人は立ち寄らない区画だ。


 ボッタクリに一見さんお断り。

 何を売っているのかもわからない店に客を客とも思わない面倒な店主までいる。


 フィンは、そういう周りの雰囲気を肌で感じているせいか、機嫌が悪い。

 姿を消しているのに、優馬にもわかるぐらいなので相当なものだ。


(胸糞悪いところだな。信用できるのか)

(まあ、ガルスさんお勧めの店だし……二つ目のブロックの……ああ、ここだ)

(仕方ない。とりあえず入ってみるか)


 大きな幅広の木製ドアを開けると無骨な親父が立っている。

 

「いらっしゃいませ」


 最初にかけられた声は普通だったが、すぐに豹変した。


「何をお探しで、って………お前、もしかして優馬とかいう冒険者じゃないか?」

「ええ、そうですけど」

「えーい、何しに来やがった。お前のせいでウチは商売あがったりだ!!」


 いきなり怒鳴られた。ギルドで紹介された店でまさかの喧嘩腰。

 やっと貯めた金で盾を買いに来たのに、優馬はすでに腰が引けていた。

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