第7話
「だ、だいじょうぶ? 圭太?」
「……ん?」
視界の先にあるものは、セカイの不安そうな表情と、灰色の曇り空だった。落ちてくる雨粒に、思わず目を瞑る。
「よかった、目、覚ました」
「……」
ぼーっとした頭の中、状況を整理する。……そうだ、僕は。
「いきなり叫びながら圭太、倒れちゃって、ワタシ、びっくりして……」
そういってセカイが鼻をすすった。雨で顔が濡れる中、左目から一滴の涙が頬を伝わるのがわかる。
「……ごめん。ちょっと見えてきたのが、その、嫌なものだったから」
覗き穴の向こうに見えたものは、酷くおどろおどろしいものだった。それは、確かに非現実的で、安い悪夢のようで、いま見たら叫びはしないであろうものだったけど、その時の僕にはやけにリアルに見えて……つまり、すごく恐かった。
「ごめん、ホントにゴメン。私には、すっごく綺麗な景色が見えたの。明るくて、キラキラしている天国みたいな景色。だから、圭太にも見てほしくて」
「うん、もう落ち着いてきたから。平気だよ」
「でも、ホントに、ホントに、圭太苦しそうだったから、ごめんね。ホントにごめん」
セカイは僕のために、いま泣いてくれた。それが嬉しくて、同時にすごく苦しかった。
「うん、もう平気だから」
笑える気分ではなかった。だけど、僕は今できる精一杯の笑顔をセカイに向けて、肩に手を添える。
「……それにしても、さすがに寒いや。セカイ、悪いけどもう帰らない?」
雨で冷えた地面から背中を離して、立ち上がった。
「うん、帰ろう」
そういってセカイは僕に背中を差し出した。
「圭太、おぶろうか?」
その姿に、思わず僕は笑ってしまう。
「はは、流石ににそこまでじゃないよ。気遣ってくれて、ありがとう」
「……さっきからありがとうばっかり。辛い時は、辛いっていっていいんだよ?」
セカイの目はすごく優しかった。そんなことを言われるとは思ってなくて、僕は少し驚いてしまう。
だけど、セカイ。僕はホントに、心から有り難いんだ。
「僕のことをそんなに気にかけてくれるのは、セカイだけだからね」




