第24話
「こちら一時間単位でのご利用となっています」
「はい、ありがとうございます」
私は、市が運営する図書館に居た。そこは県内でも有数の大きな図書館で、よほど希少な本じゃなければここに大概は存在すると、そう認識している。
案内された番号と照らし合わせて、自分の座る席を探す。
この図書館に来た理由は、加賀君の発言の真意を知ること、ただそれだけ。
今日の加賀くんの発言に対して、私はいまだに、違和感を拭えずにいた。
加賀君は、セカイという女の子のことについて、私に一生懸命説明してくれた。だけど、そこで度々説明される場所や状況は、明らかに今居る現実のものではなかった。
理解はし難かったけど、加賀君の冗談かとも考えた。
だけどいつまでも加賀君が冗談と言う気配もなく、話は終わってしまった。
――その人……セカイさんの話は、ア、アニメとかの話ですか?
私がこう発言したときの、加賀君のキョトンとした顔が、私はいまも忘れられない。
そのあとの加賀くんの落胆した表情も、同じ様に記憶に残っている。
どんな言葉のチョイスが正しかったのかとか、捉えるべき真意はどれだったのかとか、それすらも私にはわからない。
でも、だからこそここにいる。
パソコンが立ち上がったのを確認して、検索エンジンを開いた。
思いつきで私は「世界 アニメ」と調べてみた。その他にも「世界 マンガ」「世界 ゲーム」などと検索してみたけど、核心を突いたものは出てこない。「世界」では余りにもヒット数が多すぎるので、「セカイ」と入力してみても、相変わらず、目ぼしいものは見つからない。
「……」
……心のどこかでわかっていて、あえて直視しようとしなかった可能性が、現実味を帯びてくる。
私は「空想 友人」とキーワードを入力してみる。
「……イマジナリーフレンド」
検索した結果多く出て来たのが、そんな聞き慣れない言葉だった。
その後、私は次から次にイマジナリーフレンドに関するページを読み漁った。そして、自分なりではあるが、結論をまとめた。
どうやらイマジナリーフレンドというのは、文字通り空想上に存在する友人だということ。
それは、本人にとってリアルな存在であること。この点においては、加賀君の状況と一致している。
だけど、調べていくうちに様々な疑問が出てくる。
まず一つに、イマジナリーフレンドは幼少期によく現れるものであり、加齢と共にほとんど現れなくなっていくこと。
そして加賀くんに限っては、現実上にイマジナリーフレンドが現れるのではなく、またこの世界とは別の場所で出会っているような口ぶりをしていること。
詳細を調べるため、私は図書館の蔵書検索ページを開く。指定された棚に行き、幾つかの事例を調べるが、いずれも加賀君のケースに類似した例は見当たらない。
「……」
だけどいずれにせよ、加賀くんを放っておくわけにはいかないのだろう。
検索結果の一番上に出て来た本を斜め読みしていくと、加賀くんのように高校一年生でイマジナリーフレンドを持っていることは稀有な例であり、このような場合は、本人を取り巻く環境に問題があるか、ストレスに対応できていない可能性が考えられると、その本には記されている。
「……」
掛けられた時計に目をやると、時間はすでに五時だった。
次にやるべきことは、頭にある。だけど、それは今すぐにできることじゃなかった。
……結局、いまの私に出来ることは、加賀君に対して返答の選択を誤ったという事実、それをただ、反芻することだけなのかもしれない。




