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空中の要塞

「……あ!」


気がつくと、俺はフィオに軽くキスをしていた。


おおっと、無意識にしてしまった。


フィオは、狐の耳をぺたんと倒して、顔を真っ赤にしながら嬉しそうに俯く。


モジモジしながら、ご機嫌に左右に揺れる尻尾も、かわいい。


「ニャニャ! ひゃー、見てしまったニャ!」


ニャルパンが、わざとらしく目を隠しながら、指の隙間から覗いていた。


「こりゃこりゃ。他所でやらんかい、アーチロビン」


魔道士ティトが、苦笑いして言う。

つい、やってしまった。


「あー、えっと……」


俺は照れながら、神弓を装備した。それを見たケルヴィン殿下が、ニヤリと笑う。


「運がこっちにも回ってきたな。これで、魔王との戦いもやりやすくなる。見ろ、装備品も良さそうなのを買えたぞ」


聖騎士ギルバートが、担いでいた荷を解くと、頑丈そうな装備品が出てきた。


「おやおや、魔王と対決するのに、これだけじゃいかんニャ」


ニャルパンは、装備品をチェックしてケルヴィン殿下を見上げる。


ということは……。


「俺っちに任せるニャ! グレードアップしてあげるニャ!!」


「おおー」


「その前に、ニャ」


ニャルパンは、鍛冶場にある神棚に向けて、変形した元ネプォンの剣を捧げる。


「ニャニャ、ニャンニャカ、モゴモゴ……」


そのまま、ぶつぶつと、祝詞らしきものをあげた。すると、捧げた剣がスーッと、消えていく。


天に返した……のか?


ニャルパンは満足した顔で、俺たちを振り向いた。


「さあ! これでいいニャ!! それじゃ……」


ぐー!!


盛大なお腹の音がした。

そういえば、俺も空いてきたな。


「腹ごしらえニャ! おいしい弁当屋を知ってるニャ!!」


俺たちは和気藹々しながら、、ニャルパンのオススメの弁当を買ってきて、食卓を囲んだ。


「それじゃ、ニャルパンさんが鍛冶屋を休業していたのは、神器のメンテナンスがなかったから?」


フィオが、ニャルパンに質問する。

想像を絶する埃だったもんな。


「そうニャ。こう……やる気が出なくてニャ。待てど暮らせど、ネプォン王は訪れて来ない。真の英雄なら、神器の導きによって必ずここに辿り着くはずなのに」


「どうして、神器がここに導くの?」


「俺っちは、どんな神器にも知識があるニャ。神器は、最高の状態を保つために、俺っちの鍛冶屋に定期的に持ち主を導こうとするニャよ」


「使っていれば、どうしても状態は落ちてくるものね」


「そうニャ。場合よっては、分解して組み立て直す時もあるニャ。魔族によっては、神器にヒビを入れるほどの技を持つものもいるからニャ」


「ヒビを!?」


「そうニャ。そんな英雄を助ける技を持つのが、代々この鍛冶屋なんだニャ。やっと英雄が誕生して、楽しみにしてたニャ。でも、ネプォン王は来なかったから」


「だからって、お風呂にまで入らないのは、ちょっと……」


「ごめんニャ、フィオちゃん。でも、これからはちゃんと入るニャよ。何せ、兄さんは神器を大事にしてくれるからニャ」


ニャルパンが、俺を見てニコニコ笑う。

確かに、定期的にプロに見てもらえると安心だ。


「使い込んでたら、汚れるし、微調整も必要になるニャ。その弓に合う矢も、うちならたくさんできるニャよ」


「そうだよな」


「ニャ」


いい鍛冶屋だよな。

ネプォンの奴も、普通にしていたら普通の英雄として凱旋できたはずなのに。


まあ、もういい。


魔王を倒す役目を、俺たちは背負ってるんだ。

結果はわからないけど、全力で果たすまでだ。


「魔王が復活するとしたら、どこに出現するだろうな」


俺が言うと、聖騎士ギルバートが食べ終わった弁当を片付けて、地図を広げる。


「過去の歴史で言うと、北のここ、東のここ、もしくは西のここだよ」


「ふむ、どれも山であることが多いな」


「地形的な利点もあるからね。高いところから見下ろせば、敵の接近もわかりやすい。あ、海中なんてのもあったよ」


「なるほど」


魔道士ティトが、地図を引き寄せて、トントンと叩いた。


「地下かもしれんぞ。700年前の魔王出現の時は、魔界により近い地下世界がアジトだったのじゃ」


「地下ね……」


確かに、地下の可能性もあるだろうな。

地下となると、灯りになるものも用意しないと。


話を聞いていたケルヴィン殿下は、うーん、と腕を組む。


「アーチロビン、今度の魔王は、英雄並みの実力を備えた魔王なんだろ?」


「ええ」


「俺なら、今までになかった場所に現れて、他との違いを示すな」


「今までにない?」


俺は地図を見て、どこだろうと首を捻った。

ケルヴィン殿下は、地図を引き寄せて上の方をトントンと指す。


「空だ」


「!!」


「空中に島を浮上させて、そこを拠点にする」


「空ですか。だとしたら、俺たちも飛ぶ手段がないと」


「ベヒモムートを借りるか、もしくはタインシュタ・フランに頼んで、転送してもらうか、だな」


「ええ」


俺たちは、ニャルパンに装備品のグレードアップを任せて、一旦月の神殿に戻ってきた。


太陽は相変わらず、異様な色のまま。空にもし何か現れても、納得の色だ。


「各地の魔族も、召集されているんだろうか……」


俺が呟くと、魔道士ティトが答える。


「おそらくは、な。体で主人の帰還を感じているはずじゃ」


「魔王の元まで辿り着く前に、眷属たちとやりあわないとな」


「心配するな。それはワシらに任せぃ」


「!」


「お前は、必ず最深部へと辿り着け。この弓矢で今度こそ魔王の魂を砕くのじゃ」


「だ、だけど、みんな一緒に!!」


「魔王の敵意が分散されれば、お前の力が効きにくくなるじゃろうが。これまでの戦いで、それがよくわかった」


「そ、それは」


「少しはワシらの腕を信用せんか? アーチロビン。お前の前では霞むじゃろうが、ワシらとてそれなりの戦士ぞ」


「わかってるよ……ただ、失いたくない。誰一人」


「けけ、ワシは死なん。ギルバートも、ケルヴィン殿下も。もちろん、フィオも」


「ティト……」


「アーサーに会えるまで、死ぬわけにはいかんのじゃ」


「!!」


「みんな、生きる理由がある。そのためには、この世界に存続してもらわねばならぬ。だからこそ、お前に魔王討伐を託すのじゃ」


「ああ、任せてくれ」


「心配なのは、お前の方じゃ」


「え」


「お前こそ忘れるな。他の人間さえ助かれば、自分はどうなってもいいなんて、絶対に思うなよ。魔王が消えた世界を生きるのは、お前も一緒じゃ」


「あ……ああ!」


「そうだよー! アーチロビン!!」


「わ! ギルバート!!」


「この先も、同じ世界を生きるんだからね!」


「おう」


「死ぬなんて、絶対許さん」


「ケルヴィン殿下……」


「お前は、大事な友だからな。どれほど修羅場になろうと、欠けることは許さない」


「ありがとうございます」


「この旅が終わったら、また一緒に冒険するよね? アーチロビン」


「フィオ」


「ベヒモムートの星空のブランコで、約束したもの。私はあなたといたいの」


「俺も……」


「ヒュー、ヒュー!」


「やめろ! フェイルノ!!」


「フィオ、オフロモ、イッショ、ネルノモ、イッショー」


「やめろって、お前は! 大きな声でバラすんじゃない!!」


「ほほー、やるな、小僧ども」


「あ、テ、ティト、これは……」


「手が早いよね、アーチロビン」


「ギルバート、あのな……」


「ふふ、色々教えてやるよ、アーチロビン。女性の愛で方をさ」


「ケ、ケルヴィン殿下まで……!」


「いいから、こっち来い、て! ゴニョゴニョ……」


「待て待て、女の立場で言うと、ゴニョ、ゴニョ」


「ティト、そうなのか?」


「おう、それ以外は演技と思え」


「そうなんだ……」


「楽しそうですね」


「!!」


そこへ、テレクサンドラがやってきた。


すぐに聖騎士ギルバートが、恭しく挨拶をする。


「ご休息はとられたのですか?」


「はい、おかげさまで。皆様を、テデュッセアが呼んでいます」


「え」


「禍々しい島が、天空に現れたそうです」

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