表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/88

鍛冶屋のニャルパン

「誰ですか? あなた」


俺は、声をかけてきた男に尋ねた。思わず、周りの人間まで避けて通るほど臭う。


フィオも、必死に我慢しているけど、鼻をつまみたくてたまらないようだ。


男は、有無を言わさず近づいてきて、俺の腕を掴んでくる。


うう! く、臭い……!


何日風呂に入ってないのか、こっちが失神しそうだ。


猫は綺麗好きのはずだ。

猫族は違うのか!?


フィオは、たまらず俺の背中に顔を埋めてしまっている。


「キョウレツー!」


オウムのフェイルノも、俺の懐に潜り込んできた。


お、おいおいみんな、俺は?


俺はなるべく、浅く呼吸しながら相手を見た。


「へへっ、臭うか。悪りぃニャ、兄さんたち。この半年、風呂に入ってニャいのよ」


「!!」


「いいから、俺っちの店にくるニャ! ほら、そこの鍛冶屋ニャ!」


俺たちは有無を言わさず、彼の言う店に押し込まれた。


鍛冶屋……。

中は埃っぽくて、あまり稼働してるように見えない。


こいつ、本当に商売してるのか?


「ニャあ、兄さん」


俺は、ポンと背中を叩かれる。


「ん?」


「その手に持ってるのは神剣ニャろ?」


「え!?」


「さっきも言ったけど、そいつは穢れを纏いすぎて、もう限界にきてる。本来なら持ち主が浄化できるはずなんだニャ……」


「あ……あぁ」


「持ち主が、勝手に手放したみたいだニャ」


「そう……だ」


「やたらと剣が哭くのが、おかしいんニャが」


「キィィィーンて、音のことか?」


「ニャ? あんた、聞こえるのニャ? 持ち主か、神器専用の鍛冶屋にしか、聞こえないはずニャのに」


「そうなのか? これはネプォンが……持ち主が持っていた時に錆びたらしくて、それで……」


「ニャにい!?」


男は俺にさらに近寄ると、襟を持ってガクガク振ってきた。


「持ち主の手にある間に、神器が錆びるニャんて、そんなおかしなことがあるかニャ!」


「そ、そんなこと言ったって、本当だよ!」


「あぁ、なんてことニャ」


鍛冶屋の男はブツブツ言うと、神剣を俺の手からもぎ取って、鞘から剣を抜いた。


「ギニャー!! こ、こ、これは、瘴気を吸いすぎて、錆びているのニャ!! 兄さん! 風呂を沸かすニャ!」


「え?」


「仕事の前に、身を清めるニャ! ついでに、ここを掃除するニャ!!」


「ええ!?」


「人手があるんだから、できるニャ!! ほれ! 急ぐニャ!!」


ちょっと待て。わけのわからない状態で、客のはずの俺たちが、こいつのために風呂を沸かして掃除を?


「どう考えても、おかし……!」


「いい仕事をするためには、綺麗な方がいいニャろ!?」


「まさか、面倒くさいから、こうやって客が来るまで基本放置してるんじゃ……」


「はいはーい、これも世のため、人のため、俺っちのた……いやいや! 神剣の浄化のためニャ!」


俺たちは、とにかく鍛冶屋を風呂に入れて、掃除をする。


「ホコリ、ダラケ、ムシモ、イッパイ!!」


フェイルノも、食べられそうな虫が出てきたら、食べている。


お腹壊すなよ……。


「何をしとるんじゃい? お前達」


そこへ、魔導士ティトや聖騎士ギルバート、ケルヴィン殿下もやってきた。


「みんな、よくここだとわかったな」


「なにやら、半年ぶりに鍛冶屋が仕事していると、あちこちで噂されていてな。覗きに来てみたんじゃよ」


「それで、なんで掃除なんてしてるの? アーチロビン」


「ギルバート、実はかくかくしかじか……」


「ふんふん、て、ええ!? なに、そのカオスな状況」


「とりあえず、フィオを手伝って掃除をしてくれないか。俺は、鍛冶屋の背中を流すように言われてる」


「えぇ〜……」


「仕方ない、やろう、ギルバート」


「ケルヴィン殿下、汚れちゃいますよ」


「つべこべ言うな。テレクサンドラにバラすぞ?」


「はい、すぐにやります、殿下」


みんなに掃除を任せて、俺は鍛冶屋の背中を流しに行く。


とにかく綺麗にして、終わった頃には俺は汗だくになっていた。


「ニャニャ。さっぱりしたニャ」


鍛冶屋は、満足そうに仕事場に戻ると、みんなに挨拶する。


「当代きっての鍛冶屋、ニャルパン。参上」


「掃除、終わりましたよ、ニャルパンさん」


「おおー! ありがとうニャ。可愛い孤族の女の子だニャ。俺っちの彼女になる気はないかニャ?」


「なりません! 恋人がいますから」


フィオが、俺のそばにやってきて、甲斐甲斐しく汗を拭いてくれる。


「チッ。まぁ、いいニャ。今はこっちが大事ニャ」


ニャルパンは、神剣を改めて眺めた。


「酷い状態ニャ、兄さん」


「確かに」


「神器の神力は、持ち主の魂と循環している間は、枯渇することはないニャ。これは異常事態ニャ」


「異常事態」


「そうだニャ。ネプォン王は、賢王とは言えなかったみたいニャけど、だからといって瘴気で錆びたりしないニャ。ニャにをしたのか……」


ニャルパンは、そう言って炉に火を灯す。

炉の熱が鉄を打てるほど高音になるには、相当時間が要るだろう……と、思っていたら、ニャルパンは不思議な舞を踊り出した。


「ニャンニャらー、ニャンニャらー」


滑稽に思える動きでも、炉はみるみる熱されて火を噴き出し始めた。


こんな短時間で!?

嘘だろ……フイゴの力も借りずに。


「すご……!」


「腕前は確かなようじゃなぁ。製鉄の神に愛された鍛冶屋じゃ」


ケルヴィン殿下と、魔導士ティトが感心している。

そこまで愛された鍛冶屋が、仕事場を埃だらけにするなんて、バチが当たらなきゃいいけどなぁ。


「世界広しといえど、神器を扱えるのはこのニャルパン様だけニャ。この炉は、浄化の炎を起こせるニャ」


「浄化の炎……」


「とりあえず穢れを落とすニャ。真っさらにして、天に返すニャよ。さぁ」


ニャルパンが、神剣を火箸で挟んで、燃え盛る炉の炎に翳したその時だ。


ブワ!!


神剣から、ものすごい瘴気が噴き出した。


炉から立ち昇る炎が、その瘴気を舐めるように絡め取っていく。


「すごい量ニャ!! 予想より沢山出るニャ!」


「ニャルパン! 大丈夫か!?」


「ぐぬぬ……!」


炉の炎が取りこぼした瘴気が、ニャルパンを覆っていく。


「ニャルパンもうよせ! 神剣を手放せ!!」


俺が叫んでも、ニャルパンは首を横に振った。


「だめニャ! もう少しで穢れが落ちるニャ!」


「お前が瘴気に取り憑かれるぞ!?」


「神器を穢したまま、にする……わけに……は……」


ニャルパンの体の中に、瘴気が入り込んでいく。


「アーチロビン!!」


フィオが俺の名前を呼んだ。


「彼の体から瘴気を抜く!」


「頼む! フィオ!」


「慈悲深き、癒しの神よ。禍つ気を取り去り命を救いたまえ、クリナピュアフル!!」


フィオの力で、ニャルパンから瘴気が出てきた。


それは一箇所に集まって、巨大な蜘蛛のような生き物になる。


「外に出すわけには行かない! 倒すぞ!!」


俺たちは武器を構えて、巨大な蜘蛛に立ち向かった。

読んでくださってありがとうございます。

ブックマーク登録と、評価ポイント★で応援していただけると嬉しいです。とても励みになります。


(ポイントは広告の下↓にあります)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ