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交易都市ガルミット

周りがネプォンを追って行ったおかげで、通りはとても静かになった。


「ケルヴィン殿下」


ネプォンが引き連れていた軍の騎士団長が、ケルヴィン殿下に跪く。


「お助けくださいまして、ありがとうございます」


「感謝いたします」


次々と彼らは跪き、感謝の言葉が告げられた。


ケルヴィン殿下は、片手を挙げてみんなの前に立つ。


「いいんだ。皆、民間人に最後まで手を挙げなかった、素晴らしい騎士たちだ。その胆力を持つお前たちに、俺の方こそ国を代表して、感謝する」


「勿体無いお言葉です」


「そもそも、追われる原因を作ったのは俺だしな。迷惑をかけた」


「いえ、そんな。今では、ケルヴィン殿下こそ正しかったと、皆思っております」


「今後は、俺に従ってくれ。すぐに帰国して、姉上を助け、魔族の襲撃に備えるのだ」


「は!」


「仰せのままに」


「……それで、その、ネプォン王はいかがいたしましょう」


騎士の一人が、おそるおそる尋ねてくる。


「ほっとけ、と、俺に言われたと姉上に報告を。お前たちを見捨てた事実も、正直に伝えるのだ」


「わかりました」


ガルズンアース軍は、隊列を組み直して帰国して行った。


ふぅ……。これで、隠れながら旅をする必要は無くなったか。


ケルヴィン殿下は、すぐにテデュッセアの方を向くと、彼女の手にキスをしている。


「テデュッセア」


「ケルヴィン殿下」


「辛い思いをさせたな」


「いいえ、寝室までネプォン王についてこられたことは、たまらなく不快でしたけど」


「な!! あいつ……!!」


「ご安心を。しっかり、お仕置きさせていただきました。あちこち火傷して、お見せしたかったわ」


彼女は、涼しげに笑う。テレクサンドラともハグをして、二人はティアラを交換した。


「さぁ、魔王誕生までの間に、こちらも準備しましょう」


「えぇ、テデュッセア。結界を張る準備をしなくては」


「テレクサンドラ、あなたは少し休みなさい」


「でも」


「日の高いうちは、私が守るから」


「わかったわ……」


テレクサンドラは、月の神殿へと戻っていく。ほとんど休まずに、俺たちが帰還するまで頑張っていたからな。


テデュッセアは、テレクサンドラを見送ると、俺たちに声をかけてきた。


「皆さんも、休まれませんか?」


「いや、テデュッセア。その前に、いい武具を揃えられる店はないだろうか」


「ケルヴィン殿下、武具をですか?」


「ああ、何が起きてもいいように、準備してから休みたい」


「そうですか……それでは」


テデュッセアは、しばらく考え込んだ後に、太陽の神殿の馬車を指差した。


「では、皆さん。この国の交易都市へと、この馬車で向かわれませんか?」


「交易都市?」


「はい、ガルミッドといいます。伝説の武具には敵わなくても、世界中のレアなものが集まる場所です」


「ガルミッド」


「ええ。魔王復活の不安から、他の人々も武具を買い付けているかもしれませんが、行かれて損はないと思います」


「ありがとう、テデュッセア」


俺はテデュッセアにお礼を言って、みんなで馬車に乗り込んだ。


御者が道を知っていて、迷わず現地に着く。

一目見て、思わず驚いてしまった。


「すごい人出だ!」


みんな押しかけるように、武器屋や防具屋に押しかけている。


そうだよな……。魔族がいつ襲撃してくるか、わからないからな。


一般市民ばかりではなく、卸業者も買い付けているようだ。


これじゃ、いい武具なんて、売り切れてるかもな……。


「とりあえず、各自店を回ろう。終わったらこの馬車の前に集合だ。その方が効率がいいだろう」


ケルヴィン殿下に言われて、俺たちは散り散りになって店を見て回る。


どこも、人がいっぱいだな。

……ん?


キーン……キィィィーン。

音がする。何の音だろう。


「フィオ、何か音がしないか?」


「え? いいえ?」


彼女には聞こえていないのか。

……耳鳴りでもないし。


どこから聞こえてくるのか、わからないな。


「ねぇ、アーチロビン」


不意に、隣を歩くフィオが話しかけてくる。

なんだろう。


「ん?」


「神器のない状態は、やっぱり不安ね」


「……」


「ネプォン王のように、肉体だけ消滅させても、また魔王の魂が受胎したら延々と繰り返になるし」


「そうだな」


思わず俺は胸に手を当てる。

ここに埋まった、あの三叉のクリスタル。

魔王ダーデュラを封印するはずだった神器。


俺と大帝神龍王が、融合するきっかけになったもの。


どうしてもの時は、これを……。


そう考えていると、フィオは俺が胸に当てた手に自分の手を重ねてくる。


「それはダメ」


「!?」


「ダメだから、それを使うの」


「フィオ……気づいていたのか?」


「ええ。ケルヴィン殿下も、ギルバートも、ティトも言わないけど、気づいているの」


「……みんな、か」


「ちゃんと見てるよ、仲間だから」


胸がズキッと痛む。誰も口にしないから、誤魔化せていると思ったのに。


「温泉で私がイルハートに痛めつけられていた時、アーチロビンはものすごく怒ったでしょう? 私以上に怒ってくれた」


「そ、それはもちろん」


「それは私たちも……私も同じ。あなたが傷付けば、胸が痛むの。あなたが大好きだから」


「フィオ……」


思わず、足が止まりそうになる。

その時だ。


「おおっと、へへ、可愛いおねーちゃん、ぶつかるぜぇ?」


後ろから歩いてきた男が、俺と一緒に止まりそうになったフィオに、勢いで抱きつこうとしている。


危ない!フィオ!!


読んでくださってありがとうございます。

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