撃破
レディオークは、神龍酒を吐き出せていない。まだ、酔いが回っているはずだ。
「お前の相手は、この俺だ!!」
「ドけ! キさまは、この龍王を倒シタ後に、たっぷりと相手をシてやるわ!!」
「そうは、いくか!」
俺は素早く矢をつがえて、三本同時に放った。
矢は額と、喉と腹部に刺さる。
よし、これで……そこに、後ろから龍王がやってきた。
「アーチロビン、アタシも手伝う!!」
「手を出すな!! 龍王!!」
「でも!!」
「カジカのそばに、いてあげてくれ」
「グヌヌヌ! な、なんダ?この矢……ヌケない!?」
レディオークが、がむしゃらにドラゴンアックスを振り回しながら、必死に矢を抜こうとする。
「その矢は抜けないよ」
俺は弓を背中に装着し直すと、両手を前に突き出した。
もう、能力の出し惜しみはしない。
攻撃抑止以外も、積極的に使っていってやる。
次第に矢は、刺さったところから凄まじい熱を発し始めた。
「グググゥゥゥゥ……アト一歩一歩、あト一歩だったのニ!! おのれ、大帝神龍王め!! ダンジョンの奥に、収まっていればイイモノを!」
「灼熱の限界解除、解放」
「グファァァァァ!! お、オボえていろ!完全タイのマ王は……あらゆるスキルを身に付けし……無敵の……!!」
レディオークは、最後の力でドラゴンアックスを最大限に振りかぶると、龍王に向かって投げつけようとした。
ボロボロと、崩れかかった腕はそのパワーを全て武器に注ぐことは出来ずにいる。
それでも、意地なのか根性なのか、手が砕けながらもドラゴンアックスをぶん投げた。
龍王に届いてしまう!
俺は彼女の名前を呼んだ。
「フィオ!!」
「慈悲深き我らが神よ、聖霊を使わし、我らの盾となる力を貸し給え、セイントシールド!!」
フィオの声が響いて、龍王の前に強固なシールドが立ちはだかる。
ドガガガ!!
ドラゴンアックスが、フィオの張るシールドに阻まれて、火花を散らしながら落ちていった。
フィオのシールドの防御力が、更に上がっている。彼女が一緒に来てくれて、本当によかった。
おまけに、彼女はまた、祈りの書を開かずに詠唱している。完全に、大聖女クラスまで霊力が上がった証拠だ。
「クソ! ア、あと、もウ一度……体力変換で……龍王に……トドメを……」
「しつこい魔物ね!!」
龍王が全身に雷を纏うと、俺が射抜いた矢に向かって電撃を喰らわせた。
電撃は矢尻を通して、レディオークの全身に巡り、ついにレディオークは倒れる。
「やぁ!!」
そこへカジカが駆け寄って、ハタキで鋭い一撃をくわえると、レディオークは粉々に砕け散った。
凄い……!
俺たちの攻撃で、レディオークの肉体は崩壊しかけていただろうけど、砕くなんて。
「やっぱり最後はカジカねぇ」
龍王はほっとした顔で、フィオと一緒に俺たちのそばにやってくる。
よかった……。
なんとか、七体目の龍王を守りきった。
俺の世界でも、新しい六体の龍王が決まるまで、まだ時間がかかる。
実質、大帝神龍王の力を削ぐことは、これでできなくなったはずだ。
「ありがとう、アーチロビン」
龍王は、尻尾の先を伸ばしてくるので、俺はそれを握って握手のようにする。
やっぱりこの龍王は、親しみやすい。
いい友達になれそうなのに、もう、お別れだな。
「俺の方こそ。やられないでくれて、ありがとう」
「危なかったけど、回避できたわね」
「ああ」
「元の世界に戻るの?」
「そうだ。もう会うこともないだろうけど、知り合えてよかった」
「寂しいわね」
「そうだな。また、夢でなら会えるかも」
「あははは、そうね。主人公同士の特権よね」
「主人公同士?」
「わかんないなら、いいのよ。アタシにはアタシの。アンタには、アンタの物語がある、てことだから」
「……?」
「はい、深く考えないの」
「ふふ、わかったよ。あ、そうだ。髭を一本くれないだろうか」
「ヒゲ?」
「欲しがってる人に、あげないといけないんだ」
「また伸びるからいいわよ。一番いいのをあげる。はい」
「ありがとう」
隣では、フィオとカジカが、お互いの無事を喜んでいた。
「カジカさん、よかった」
「フィオちゃんも頑張ったね」
「いいえ、あなたがレディオークを倒したんです。龍王と、アーチロビンの恩人です」
「うふふ、嬉しい。この果実酒、大切に飲むね」
「はい」
「カジカ、ノミスギ、ナイデネ」
フェイルノも、カジカに向かって話しかける。
龍王も、うんうんと頷いて、カジカを見た。
「そうよ? アンタ、解禁日はまだ少し先だからね」
「龍ちゃん、ケチ」
「また、隠しておかなくちゃ」
「意地悪!!」
ブン! とハタキが振られて、龍王が逃げ回る。
「やめ……! やめなさい! きゃー!」
これがいつもの二人のようだ。
それにしても、あの電撃のように素早いハタキをよくかわせるな。
「アーチロビン!」
その時、フィオがレディオークの砕け散った場所を見て叫んだ。
光り輝く球体が、浮き上がってくる。
最後の、魔王の魂の欠片!!
……。
またこの、陰鬱な空気。
ゾンビダラボッチの時より強くなってる。
闇の底に引き込まれそうな、暗い思念が感じられた。
これは、敵意。はっきりとした敵意だ。
俺を、倒すべき敵として定めたんだ。
一番の邪魔者だと。
決着をつけたがってる。
この俺と。
そう解釈した途端、魔王の魂の欠片は、空高く舞い上がった。
バキバキ!! 空の空間が歪んで、魔王の魂がその中へと飛び込み、消えていく。
あんな高いところが、道なのか!?
「アーチロビン!!」
空から、聖騎士ギルバートの声がする。
太陽の神殿で見た、水面が揺れるような空間の歪みが、満月の表面に浮かんでいる。
「と、届かないって! あんな高いところ!!」
俺たちが戸惑っていると、龍王が素早く俺たちを背に乗せて空に向かって飛び上がった。
「お礼よ! しっかり、掴まってなさい!!」
龍王に言われて、俺はフェイルノを懐に隠し、フィオを抱えて必死に鬣に掴まる。
凄いスピードだ!
風がビュウビュウと吹き抜けたかと思うと、今度は耳鳴りがする。
どこまで、飛ぶんだ!?
そう思っていると、目の前に空間の歪みが迫っていた。
「じゃあね、アーチロビン!! フィオちゃん! フェイルノ! ありがとう!」
龍王はそう言って、空間の歪みに向かって俺たちを振り飛ばした。
「わあー!!」
「きゃー!!」
「ヒャアー!!」
各々叫び声をあげながら、俺たちは元の世界へと戻っていった。
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