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気弱な龍王、強気のレディオーク

「一日千秋の思いで待ったわよ」


龍王は、少し震えながら言った。そりゃ怖いよな。異世界から魔物が狙ってくるんだから。


「んで? アーチロビンと、その肩にいるのがフェイルノ。そして、白狐のフィオちゃん、でいいのかしら?」


龍王は確認するように、俺たちを見回す。


「そうだ。いざという時は、フィオにしっかり回復魔法をかけてもらう。それに、彼女のシールドは強固だ。そばにいた方が安全だ」


「ありがたいわぁ。───でもさ」


「ん?」


「長期戦になりそうじゃない? 相手は、瀕死になるたびに体力入れ替えをするんでしょ?」


「だからこそ、神龍酒の力が必要なんだ。レディオークの判断力を奪って、戦いを有利に進める」


「なるほどね」


「それと、俺の力は敵意が俺に向かうことが条件だ。手は出さないでくれ」


「ふむふむ……て、アンタ一人が戦うの?」


「そうなる」


「ええー、なんか申し訳ないわよぉ」


「龍王がやられれば、それこそ俺が危なくなるんだ」


「あ、言ってたわね。大帝神龍王の力が、五分まで削がれる、て」


「そうだ」


「確かに、アンタの力はすごいよね」


「わかるのか?」


「わかんない」


「?」


「わからないから、わかるのよ」


「どういう……」


「龍同士は戦って強さを決めるけど、向き合った時点で相手との力量差というのは、ある程度わかるもんなのよ」


「へぇ」


「アンタの力は、測ることができない。だから、それだけすごいってことなの」


「そういうものか」


「アタシが、先代の龍王と戦った時はさ、もうダメと思った。勝てないと、すぐにわかったの」


「それでよく勝てたな」


「まあ……運がよかったというか、知恵を絞ったというか。でもね、最後にトドメを刺したのはこのカジカよ」


「ええ!?」


俺は思わずカジカを見た。

カジカは、得意そうにブン! とハタキを振り下ろす。


「私が、龍ちゃんをいじめる前の龍王を、これで殴ったの」


「それ、武器なの? 掃除道具なの?」


「両方」


「ええ!? すごい」


「安心して。人間を殴ったことはないから」


「そ、そう」


「旦那も私がこれを持つと、距離をとって謝ってくるわ」


「こわ……」


恐妻家なのかな。

それにしても、強そうな女性だ。


「カジカ、あなたは戦士なのか? つまり、武士?」


「いいえ、百姓の娘」


「……?」


「ああ、ダメよ、アーチロビン。カジカの力をそんなふうに考えちゃ」


「よくわからない」


「いいの、いいの。理屈で考えると、頭痛くなるから」


「女戦士なんだろ?」


「まぁ、アンタの世界のジョブで言えばそうかな。でも、カテゴリーは、村娘よ」


「村娘!?」


「理屈じゃないのよ」


「ふーん」


それから、俺たちは作戦を練った。あとは、うまくいくことを願うばかりだ。


夜が来て、空に満月が浮かんだ。

向こうでは、月食が来ている頃か……。


ズシン。


異様な足音が響いてくる。


月明かりで、その姿はよく見えた。


俺は弓を構えて、容姿を確認する。身長は三メートルほど。


分厚い唇は真っ赤に塗られ、発達した胸筋は女性の胸のように、見えなくもない。


だから、レディオークと呼ばれるのか。


鋭い牙が口の端から見えて、ガタイのいいその腕には、大きな斧が握られている。


ドラゴンアックスか。

龍の首を、一太刀で断てそうな斧だな。


俺は、素早く地面に向かって矢を射た。地面がカッと光って、準備が整う。


敵の力の流れに干渉する力場は、しっかりとレディオークを捉えた。

さぁ、来い。


「ファーッファッファッ! キサまが、アーチロビンか!! 今更、ワるあがキか!?」


レディオークが、大声でそう吠えた。


こいつも人語を喋るのか。


「龍王に手出しはさせない」


「フン! おれサまを、これまデの連中と同じだと、思うナよ! おれサまは、六体の龍王たチも、倒したゾ!!」


「固有スキルを駆使したんだろ?」


「ファッファッ、無敵のすきルだ!!」


「そうか」


「なヌ?」


「それがどうした。俺には勝てない」


「雑魚のくセに、言いヨるわ!!」


「かかってこいよ」


「ファッファッ、その手ニのるか。貴様の術中にかかルなと、マ王が教えてくれる」


……もうすでにかかっているけどな。

間抜けなやつ。


「ふーん?」


「なンだ」


「いや、今日は満月だ。月見酒を飲むには、いい夜だろう」


俺は、神龍酒の入ったトックリをゆすってみせた。


チャポン、ポチャン。


「ゴクリ!」


レディオークが喉を鳴らす。


「欲しいのか?」


「やかマしい!!」


「そうか、いらないのか」


俺は、トックリを傾けて飲もうとした。

のってこい、レディオーク。


「サ、酒……極上のサけの匂い……」


レディオークの口から、ヨダレがポタポタと落ちていく。


「欲しければ、俺を倒すんだな、レディオーク」


「グブォオォォオ!!」


レディオークが、突進しようとしてピタッと動けなくなる。


一回目……。


「グブ!!」


今度はドラゴンアックスを投げようとして、また止まる。


二回目……。


「グググ……きサまぁ!! 大地ヨ、わガ怒りに応え、敵を撃テ!! サドン・トスラブ!」


三回目!!


大量に巻き上げられた砂が、レディオークに襲い掛かった。


「オワァァァォァ!!!」


砂つぶといっても、大量にぶちあたるとかなり痛い。奴は自身の攻撃魔法に苦しめられて、傷だらけになる。


瀕死にまではなっていないようだけれど、半分くらいの体力を無くしたはずだ。


「やったぁ!!」


後ろから、龍王の声がする。

馬鹿! 声なんてたてたら……!!


レディオークは頭を起こして、ニヤリと笑った。

ふらつきながらも起き上がり、声がした方を睨む。


「龍王ゥゥゥゥ!!」


奴はそう叫ぶと、大きくその場で跳躍して、俺の真後ろに降り立った。


ズシン!!


オーク特有の跳躍力だ! これで、龍王たちの首を、落としてきたな!


海の中から頭を出していた龍王は、レディオークと目が合ってガタガタ震えだした。


「あ、あ、アワワ……。」


「ググォフフフ……ファッファッファー」


勝利を確信しているのか、レディオークが不気味に笑った。


よし、今だ!!


「レディオーク!!」


「ファッ、ファッ、ンが?」


「俺の奢りだ! 一杯やるか!?」


俺はトックリを矢に括ると、奴の前に回り込んで笑い続けるレディオークの口の中へと向けて放つ。


ガポン。


大きな口の中に、神龍酒の入ったトックリが飲み込まれていった。


「クブォ!? オー、オー……オオオオ!!」


飲み込んだものが、何かわかったのだろう。奴の足元が、目に見えてふらつきだした。


レディオークは酩酊しながら、俺に向かって斧を振りかぶってくる。


「バォ!?」


攻撃抑止が働いて、奴の体がピタリ止まった。


「グググ!?」


奴はそのまま、攻撃を続けようとして、三の倍数回ごとに体を傷つけていく、そして、ついに片足を折って跪いた。


瀕死までのダメージの蓄積は、全てこいつの攻撃力に加算されるという。


おそらく、今は最大値まで高まったはずだ。


このまま起死回生の、体力変換を使うか?


龍王の頭に乗った、フィオが緊張している。いつでも、リザレクションをかけられるよう、構えているのだ。


「フ、フグ、グォエー!! ゲボ!」


その時、急にレディオークが、腹部を押さえて何かを吐き出すような動作をしだした。


まさか……飲んだ神龍酒を吐き出すつもりか!?


判断を鈍らせる酒を吐いて、龍王を狙う気だ。


今のうちに、蒼炎で……!


ダダダタダ!!


え?


その時カジカが凄い勢いで走ってくると、レディオークをハタキの柄で殴りつけた。


ボコ!!


「グファ!!」


「私がせっかく譲ったお酒を、吐くんじゃないわよ!! 勿体無い!!」


……い、痛そう。けれど。


「カジカ! 下がれ!!」


俺は彼女の腕を掴んで、後ろに引きずり戻した。


「離してよ! やっつけないと!!」


「お前が倒されれば、龍王が怒りから接近してしまう。みすみす、ピンチを招くな」


「龍ちゃんが危なくなる?」


「あぁ、こいつは俺が叩きのめす。手を出さないでくれ」


俺はカジカを背に庇うと、レディオークを睨みつけた。


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