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夢の世界で、龍王に出会う

翌日、俺たちは無事にポリュンオスに着いた。


俺は一晩中起きていたから、今はすごく眠い。


「すまんのぅ、アーチロビン。ワシが酔っ払ってしまって、みすみすイルハートや敵の接近を許してしもうた」


魔導士ティトは、朝から俺に謝りっぱなし。

気にすることはない。


結果的に犠牲者はいないから。


「いいよ、ティトだって息抜きしないと。それに、今回一番痛い思いをしたのは、フィオなんだ」


「アーチロビン、私は平気」


「すまん、フィオ。今度はワシが体を張るからな。まったく、イルハートのやつめ! あやつの狙いがいまいち読めんわ」


「それより、今は月の神殿に行こう」


「お、おぉ、そうじゃな、アーチロビン」


そう、今は大魔導士イルハートにかまう暇はない。早く日の本へ渡る足がかりをつけないと。


入国手続きを経て、ポリュンオスの観光案内を見る。


月の神殿は、首都『チュア・サンク』の西にあるとか。


東には太陽の神殿があり、二人の巫女がそれぞれを統括している、とある。


「テデュッセアによると、太陽と月の神殿の巫女は、双子なんだそうだ。とても仲がいいらしい」


ケルヴィン殿下が、俺たちに説明してくれる。

テデュッセア? あぁ、昨夜ケルヴィン殿下と仲良くしていた、あの……。


「ケルヴィン殿下、彼女はこの国の?」


「そうだ。現地のことは、現地の人と仲良くなることでよくわかる。彼女はその点最高だったよ」


「彼女はどこに?」


「家に帰ったよ。私のカジノの儲けを半分持って」


「半分!?」


「今朝、全部持って行こうとしたから、流石に引き留めたよ。交渉してやっと、半分にしてくれた」


「そ、それはまた……」


「まぁ、また会う約束もしたからな」


「えー」


「いつか、会いましょう、て」


「そ、それって……」


「ふふ、ていよくフラれたわけさ。ほら、馬車に乗ろう」


俺たちは、月の神殿まで馬車に乗ることになった。


「アーチロビン、着くまで寝ない?」


フィオが膝枕をしてくれる。な、なんだか照れくさい。


ためらっていると、腕を引っ張られて、彼女の膝に頭を乗せられた。……気持ちいいな。


彼女が優しく頭を撫でてくれるので、目を閉じる。安らぐな……本当に。


音が遠ざかり、振動も感じなくなって眠りについた。

そんな中、俺は夢を見た。


見知らぬ場所、見知らぬ人たち。彼らに囲まれた、一頭の龍。


あれが、龍王?


少し気の弱そうな龍王が、俺の方を見て驚いている。


「アンタ……アンタ、誰?」


龍王が喋った!?


周りの人々は、龍王を見て周りを見回している。彼らに俺は見えないのか。


「龍ちゃん、誰と話してるの?」


赤児を背中におんぶした女性が、手に布のついた棒を持って掃除をしながら、龍王に話しかけている。


龍ちゃん!? え、龍王が、こんなに人と近い? しかも、まるで家族のように扱われている。


「カジカ、静かにして。ハタキで掃除するなら向こうをお願い。アタシは来客があるの」


龍王はそう言って、俺の方に近づいて来る。


いや、なんというか……こんなに威圧感を感じない龍王は、初めてだ。


まるで、友人のような腰の低さと、龍王としての力強さを両方感じる稀有な存在。


これが、七体目の龍王なのか?


「アンタ、違う世界から来たのね?」


龍王が、俺の近くで質問してくる。


「あ、あぁ。俺はアーチロビン」


「アーチロビン……なるほど。この世界の海外の人間でもないわけね」


「あんたが、龍王?」


「そうよ。アンタ、夢の世界を渡ってきたのね? てことは、アタシに何か危機が迫ってるの?」


俺はこの世界のこと、魔王のことを龍王に伝えた。


龍王は、紙を取り出して、尻尾の先に墨をつけると、サラサラと書き込んでいる。


「ふんふん、なるほどね」


「この国ではそうやって、文字を書くのか?」


「んー、そうよ。今の時代はね。未来はもっと便利になるわ。スマホとかタブレットに打ち込むようになるから」


「スマホ? タブレット?」


「あぁ、やめましょ。世界観が壊れるわ」


「世界観……」


「話を戻すわね。そのレディオークとかいう魔物が、アタシを倒しにくる、と。アタシが負ければ、アンタの力を削いでしまうわけね」


「そうだ。七体目の龍王を倒したレディオークを、龍神が勇者と認めれば、俺は力を削がれる」


「アタシ、逃げた方がいいのかしら?」


「無理だ。こちらの世界からアンタの目の前に、道が開かれてしまう。おそらくどこに行っても、追いつかれる」


「ひゃー」


龍王は怯えて縮こまる。


おいおい、こんなに気弱でこの龍は、龍同士の戦いを制したのか?


「龍ちゃん」


カジカと呼ばれた女性が、ハタキをブン!と振ってやって来る。


な、何やら、破壊力を感じるな。


「龍ちゃんの話で、大体わかった」


「カジカ、アンタは関わらないのよ」


「いやよ、龍ちゃんは私が守る」


「アンタには、ダンナと赤ちゃんがいるでしょ」


「私の可愛い龍ちゃんに、手出しする魔物なんか、これでぶん殴ってやるんだから!」


「痛い!!」


彼女が振ったハタキが、龍王の尻尾に当たって、龍王が痛さに悶絶している。


え、掃除道具がそんなに武器になる世界?


俺が戸惑っていると、涙目の龍王が尻尾をフーフー吹きながら、俺を見た。


「あー、痛い。六体の龍王を倒したということは、相当強い魔物ね」


「あぁ、だから、俺たちがそこに行ってあんたを守る」


「まるで、武士ねぇ」


「武士?」


「日の本では、軍人のことをそう呼ぶ時代なの」


「へぇ」


「とにかく、こちらのことをあらかじめ伝えておくわよ。アンタたちみたいな格好した人が、ゾロゾロ来たら、この国の人は卒倒しちゃうわ」


「異邦人、ていうんだよな? 絵本に書いてあった」


「そうそう。ま、アタシの世界も正史の日の本じゃないけどね」


「そうなのか?」


「ん? あぁ! 忘れて! とにかく、早く来てちょうだい。アタシはなるべく海の中にいるわ。村から離れた方が、みんなを巻き込まないから」


「海だな」


「頼んだわよ、アーチロビン───」


周りの光景が白んでいって、見えなくなっていく。


夢から醒めるのか……。


「アーチロビン、アーチロビン」


体が揺さぶられて、目を覚ます。


フィオが、月の神殿に着いたと教えてくれた。


俺は起き上がると、みんなと馬車を降りて月の神殿を見上げた。


「入るかの」


魔導士ティトが言うので、俺は呼び止める。みんなに、さっきの夢のことを伝えておかないと。


俺は道々、夢で見たことをみんなに話した。


「夢……というのが、信憑性に欠けるけど、状況を考えると本当に夢を渡れたのかもしれないな」


ケルヴィン殿下が、考え込みながら聞いてくれた。


「日の本……その人たちの着ているものから察するに、かなり昔だね。武士なんて言葉が、サラッと出るんだから」


聖騎士ギルバートが、顎に指を置いて、うんうんと頷く。


「龍ちゃん、と呼ばれてるなんて可愛い。その龍王は、きっといいことを沢山して慕われた龍なんだわ。徳高い龍なのかも」


フィオが、ニコニコしながら俺を見た。慕われてるというか、馴染んでいるというか……。


近所で顔を合わせる、隣人のような龍王だった。


「しかし、聞けば頼りなさそうな龍王じゃのう。レディオークを歯牙にもかけぬほど、強かったらよかったのになぁ」


魔導士ティトが、ぼやいている。

まだ、戦闘力はわからない。それに、そばにいたハタキを振るう女性も、なかなかの迫力だった。


彼女が、最強の戦士なのか?


まさかな……。


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