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ゾンビダラボッチを倒す条件

宿屋への道すがら、白薙様からゾンビダラボッチの正体について説明があった。


「あやつは、怨念を含んだ墓土を鎧にしておる。何をしようと、外側からでは、中にある本体を倒せぬ」


「だから、シャーリーの聖属性の魔法でも倒せなかったのですね」


「大聖女といえど、外側からは無理じゃ。墓土を浄化して、その中にいる奴の本体を叩かねば」


「浄化するとは、どうすれば?」


俺がそう聞くと、白薙様はピタリと動きを止めた。……まずいことを聞いたのか?


沈黙の後、白薙様は重い口を開いた。


「伝承によると、奴を上回る霊力を持ったものを、体内に送り込むといいそうじゃ。簡単に言うと、生贄」


「!!」


「高い霊力を持つ、神官か巫女を食わせてやればいい。その血肉が奴に張り付く墓土の怨念を鎮め、浄化すると言われておる」


「そんな……生贄以外の方法はないんですか?」


「高位の巫女や、神官の血肉以上の浄化力を持つものを奴に食わせられるか?」


「……レアアイテムで何か……」


「どこに?」


「……」


「完全浄化するには、全身が喰われねばならぬ。我はな、我が身を差し出すつもりだ」


「え!」


「これも何かの縁。我を食ったゾンビダラボッチが、本体を現した時、お前たちが討ち取っておくれ」


「……あなたが犠牲に?」


聖騎士ギルバートが言うと、白薙様はふっと笑う。


「我は十分に生きた」


魔導士ティトがそれを聞いて、悲しそうな顔をした。


「いやはや。同年代に目の前で言われると、身に染みるのう。若者を犠牲にするわけにはいかぬが、年寄りの命が軽いわけではないからな」


「おう、我にはたった一つの重い命よ。自分の死は、それは怖い。何年生きていても、関係なくな」


「当たり前じゃ。」


そりゃそうだ。それに、白薙様を慕う人たちも悲しむ。俺も、じっちゃんが死んだら悲しむもの。


本当に、他に方法がないのだろうか。


俺の力で、奴自身の攻撃を跳ね返させても、奴は再生していた。


目から出る高熱ビームも、奴を滅ぼすまでにはならなかった。


他の能力ならなんとかなるか?

いや、結局浄化するまではうまくいかない気がする。


現状わかっているのは、ゾンビダラボッチより高い霊力をもつものの血肉が、本体を暴き出す鍵。


全身に高い霊力が巡った体だからこそ、効果があるのかもしれない。


高い……霊力……強い……浄化力……それなら。


「霊泉の水を飲ませるというのは?」


俺は提案してみた。魔導士ティトが、体調を崩して鼻血を出すほど影響の大きい、霊泉の水。


白薙様は、呆気に取られた顔で俺を見ている。


ダメかな。


「霊泉の水かえ? 霊泉は、汲み出すことができぬ水ぞ。あの場所に、ゾンビダラボッチは大きすぎて入らぬしな」


「汲み出せない水?」


「そう。霊力の源が、水の形をとっているだけのものぞ。外に出れば消えてしまう。どうやって持ち出すのじゃ」


そういえば、霊泉に濡れた体は、外に出る頃には乾ききっていたな。


俺は自分の弓矢を前に取り出して、じっと見る。これに染み込ませても、ダメか。


「なら、聖櫃は?」


俺は白薙様を見た。

彼女は、目を丸くする。


「聖櫃か!!」


「そうです。聖櫃いっぱいの霊泉の水なら、人間一人分の体重に匹敵する。そして、浄化力は桁違い」


「聖櫃は思いつかなんだ。あれは国の神器である、あの砂時計が入っていたと言われるもの。どちらも人外の力が生み出したものだ!」


「それなら、可能性があります。聖櫃ごと、ゾンビダラボッチに食わせれば、確実に体内に取り込める」


「だ、だが、聖櫃をそのように使ったことはない。許可もいるし、何より……本当に汲み出せるかは、わからぬぞ」


「白薙様が、犠牲になるよりはいい」


「アーチロビン……」


「試してみましょう! 聖櫃ならここにある。犠牲は、全ての手を尽くした後の最後の手段!」


みんなが頷いてくれた、その時だ。

白薙様がハッと顔を上げて、村の入り口を見た。


「敵の侵入じゃ!!」


「!!」


俺たちも思わず彼女を見る。

白薙様が腕を一振りすると、村の鐘がカーン、カーン! と打ち鳴らされた。


村のあちこちで、子どもたちが呼び戻され、みんな家の中に閉じ籠る。


俺たちは、敵を探し始めた。


どこだ……どこだ!?


「───来るぞ!」


魔導士ティトが、ロッドを構えて前方を睨む。


人影だ。

……あれは……。


「あら、馬鹿弓使いじゃないの。それにケルヴィン殿下まで」


シャーリー!!


俺たちは驚いて彼女を見た。


なぜ、ここにきた!?


今は正気のようだが、いつ変わるかわからない。それに、なぜ服が血だらけなんだ。


誰の血だよ、それ。


「お前、なぜ。神官たちと一緒に国に帰ったんじゃないのか」


俺が弓を構えて、いつでも打てるようにすると、シャーリーは笑い出した。


「あははは! あんなレベルの低い神官たちに、私が止められるわけがない。霊力だって、私が上なのよ?」


「そりゃ、そうだろうが。まさか、その服の血……」


「さあ? 私にもわかんないの。気がついたらこうなってたわ」


「!!」


「それより、なんであんたここにいるの? 封印されてたはずよ」


「……」


「はあぁ、イルハートの奴の秘密、てこれかぁ。こそこそ誰かに会ってると、ネプォンが愚痴ってたもんねぇ」


「……」


「クスクス、何、あんた、イルハートとできてんての? ネプォンが知ったら、半殺しよ?」


「違う」


「でしようね。あんたみたいなヘタレに、イルハートが靡くわけない」


「何しにきたんだ?」


「手ぶらじゃ国に帰れないじゃない? ゾンビダラボッチをやっつけて、ネプォンにみせつけてやるの。あいつの悔しがる顔が見たい」


「それで?」


「倒すには、霊力の高い巫女か神官の血肉がいる、てね。初めて会った時、ユバロン司祭が言ってたの。戯言だと思って聞き流したけど」


「それがどうして、ここにくる理由に?」


「……ここにいるんでしょ? クリムティナ・フィオ・グライア神官」


読んでくださってありがとうございます。

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