表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/88

孤族の村

魔導士ティトは、目を細めて俺たちを見る。


「ふふ、いい男じゃな。フィオは幸せ者じゃ」


「ティト」


「……しかしじゃ、あの孤族の娘たちも努力して、ハーレムのトップにならねばならんのじゃよ?」


「ハーレム!?」


「おや、知らんのか。アーチロビン。ガルズンアース国の未婚の王族は皆、自分のハーレムを持つぞ」


「あ、いや、俺も思い出したよ。何年か前に、ヘレン姫のハーレムに入らないかと勧誘を受けたから」


あの時はハーレムの意味がよくわからず、高い報奨金の方にばかり気がいって、承諾しようとした。


じっちゃんに止められて、結局入らなかったけれど。


「ほー、やはりお前も声をかけられたのか、アーチロビン。ま、その容姿ならヘレン王妃の目にとまっていたかもしれんのう」


「な、何言うんだよ、ティト」


「わかる気がするな、アーチロビン。お前は無自覚だが、色気のある美男子だからな。トップをとったかも」


「色……!? ケ、ケルヴィン殿下まで!」


「もー、アーチロビン。次から次に女性に好かれてるじゃない。フィオが苦労しそうだな」


「ギルバート、誤解だって。今だって、ケルヴィン殿下に女の子たちが集中してるじゃないか」


「あのなぁ、アーチロビン。俺は王族という『オプション』があるから、モテてるだけだぞ。素でモテるお前とは違う」


ケルヴィン殿下が、クラリスとターニャの肩に手を置いて、俺を羨ましそうに見た。


モテるの定義がよくわからない。


それに、その姿で言われても、イマイチ説得力がないんだけどな。


「もー、ケルヴィンのイジワル」


「そんなふうに言わないで……お願い」


クラリスとターニャはケルヴィン殿下の肩に頭を乗せて、しがみつく。


「ボクは今のケルヴィン殿下が、羨ましいです」


聖騎士ギルバートが、身を乗り出して素直に言った。


……俺も正直、少し羨ましい。


ケルヴィン殿下は、苦笑いしてターニャとクラリスを抱き寄せる。


「やれやれ。俺も早くアーチロビンみたいに、運命の女性に出会いたいものだ」


……そういう割に、ケルヴィン殿下は二人を離さない。本当に、説得力がない。


「運命の相手はきっと私」


「違う、私よ」


「もう、黙ってて、クラリス!!」


「あなたこそ、ターニャ!!」


「はいはい、ハニーたち。それはこれからわかるよ」


「ケルヴィン王子……」


「そうね、ケルヴィン王子」


二人と軽くキスを交わして、ケルヴィン殿下は片目を閉じた。


上手いな。

オプションがデカいと、やっぱり得しかないんじゃないか?


……まあ、いい。俺にはフィオがいる。

フィオの笑顔を思い出すと、胸が温かくなった。


二度と、彼女を失いたくない。

冷たくなったフィオを腕に抱いた時、『失う』ことの辛さと絶望感を知った。


他の女性とのひと時の快楽で、簡単に癒せるものじゃない。


彼女が戻ってくるから、今は平静でいられるだけで、それがなければ発狂しそうだ。


……フィオ。


その時、馬車を走らせていた、パジルが声をかけてきた。


「着きましたよ、私たち孤族の村です」


ついに……ついに来た!

フィオ、待っていてくれ!!


俺たちは聖櫃を担いで、馬車を降りた。

のどかで、静かな村だ。


孤族の子供たちが、元気に駆け回っている。

フィオが見たら、喜ぶだろうな。


ん? あれは誰だ?


村の奥の方から、巫女の姿をした女性がやって来た。


この村の、巫女か?

魔導士ティトと、同じ歳くらいに見える女性だ。


「大きな力を感じてやってきた。村に仇なすものではなさそうだが、長居は無用ぞ」


と、言われた。

大帝神龍王の力を、警戒しているんだろうな。


パジルが俺たちの前に来て、巫女に頭を下げる。


白薙(しろなぎ)様、この方々は恩人です。彼等の仲間であり、我らの同族の白狐が、危機に瀕しております。どうか、霊泉への道をお開きください」


「恩人……そういえば、ゾンビダラボッチの気が動いたな」


「ええ、それで……かくかくしかじか」


「ほう、そんなことが。同胞の恩人となれば、話は別だ。霊泉への道を開けよう」


白薙(しろなぎ)様と呼ばれた巫女は、俺たちを大きな洞窟へと連れて行ってくれた。


しめ縄が施された大きな岩が、洞窟の入り口を塞いでいる。


白薙(しろなぎ)様は、呪を唱えてその岩を横へスライドさせた。


ゴゴゴゴ……ゴトン。


重い音が、洞窟内で反響している。奥が深そうだ。


「履き物は脱いでから、ついてきなさい」


白薙(しろなぎ)様にそう言われて、俺たちは言われたとおりに履き物を脱ぐと、聖櫃を担いで中に入った。


「わぁ……」


「ガー! キレイ! ウツクシイー」


オウムのフェイルノも、思わず叫んでいる。


中は鍾乳洞になっていて、幻想的な世界が広がっていた。


ほのかに光り苔か輝いて、確かにとても美しい。


「滑りやすいから気をつけてな」


注意を促す白薙(しろなぎ)様は、スタスタと前を歩き、奥へと進んでいく。


何度も滑りそうになりながら進むと、目も眩むような光が見えてきた。


「あ、あの先が……霊泉じゃ……ふ……」


魔導士ティトが、額から汗を流しながら教えてくれる。なんだか、苦しそうだ。


「ティト?」


俺が心配になって覗き込むと、彼女は座り込んだ。


「ここで待つ。強すぎてワシにはきつい」


魔導士ティトの鼻から、鼻血まで出ている。

そんなに影響を受けるのか?


「ヌシは魔導士か」


白薙(しろなぎ)様が聞いてくる。


「そうじゃ」


「ならばきつかろう。そこで待つがよい」


「すまんな」


大丈夫なのか? ティト……。

俺は心配になって、魔導士ティトを振り向くと、彼女は俺に向かって早く行けと手を振ってくる。


「構うな、行け。フィオを取り戻すのじゃ」


「ティト……」


「ワシも早う会いたいからな」


「わかった」


俺たちは彼女と別れ、霊泉のある場所へと進んでいった。


読んでくださってありがとうございます。

ブックマーク登録と、評価ポイント★で応援していただけると嬉しいです。とても励みになります。


(ポイントは広告の下↓にあります)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ