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ゾンビダラボッチの来襲

この国の司祭は、大聖殿にいるらしい。


観光案内のパンフレットによると、百年前トゥンカル・ミズ国は暴君がいて、国民が長く苦しめられた歴史があるそうだ。


多くの国民が犠牲になり、その墓土の中から生まれたのが、ゾンビダラボッチ。


「ゾンビダラボッチは、国民の怨念が作り出した、とも言われている」


ケルヴィン殿下が、道々歩きながら説明してくれる。


「怨念……て、ゾンビダラボッチは魔族なのでしょう?」


おそるおそる質問するフィオ。

彼女は今、「忍者」と呼ばれるジョブに扮している。頭に被る布が、耳をうまく隠してくれるからだ。


尻尾は腰に巻きつけて、帯のようにして誤魔化している。


「アンデッド系の魔族じゃの。じゃが、犠牲者の埋まる墓地の中から出てきたから、まるで怨念を背負っているように見えるのじゃろう」


魔導士ティトが、杖をつきながら肩をすくめる。


アンデッド系か。聖属性の力を持つフィオが、奴にとっては一番脅威になるだろうな。


「いやー、それにしてもこの国はいいですね。半人半馬族もたくさんいるから、馬に化ける必要がありませんよ」


聖騎士ギルバートは、ニコニコして周りを見回している。


はは、確かに。

でも、馬に化けた彼を見たかったな。


やがて、大聖殿が見えてきた。


む? あれは……。

大聖殿の入り口に、馬車が停めてある。


「大聖女専用の馬車です! シャーリー様がいるんだわ……」


フィオが、小声でみんなに告げる。

おっと、シャーリーが来ているなんてな。


ネプォンもいるかもしれない。

鉢合わせは、まずいな。


出直そうか……そう思った時だ。


ズズーーーーン!!


ものすごい地鳴りがして、異様な気配が接近してくる。これは……!?


すぐに大聖殿の中から、法衣に身を包んだ、半人半馬の男性が飛び出してきた。


聖騎士ギルバートと同じ種族?

法衣を着てるということは、この人は司祭?


「みんな!! 大聖殿の中へ!!」


と、慌てふためきながら叫ぶ。


なんだ!? 何が起きた?


俺たちが走り出そうとしていると、背後から巨大な影が、山が盛り上がるように高くなっていく。


地面から、何か湧いて出たのか?


俺の肩に乗ったオウムのフェイルノが、空を見上げて悲鳴をあげた。


「ギャー! デカイ!! オバケェー!!」


お化けだ?

俺も思わず見上げると、巨大なゾンビが街を見下ろしていた。


大きい! まさか、これがゾンビダラボッチ!?


まるで土の塊。

それが第一印象だった。


俺は反射的に弓矢を構えて、地面に向かって放つ。


矢を打ち込んだところから、敵の力の流れに干渉する力場が広がり、ゾンビダラボッチを包んでいった。


矢が刺さった地面が、いつものようにカッと光るのと、ゾンビダラボッチの目が光るのが、ほぼ同時。


まさか……これは戦闘開始直後に、自動的に発動されるという、『瀕死波動』か? 相手の体力の九割を削いでしまう固有スキル。


間に合うか!?


……。


ゾンビダラボッチは、街中を見回すばかりで、何もできずにいる。


……ほ。

ほとんど僅差だった。


俺がほっとしていると、奴は稲妻の光を全身に纏い始めた。二度目の攻撃は、雷の魔法を放とうとしているな。


常に全体攻撃中なら、俺も対象に入ってる。これなら、ずっと止められる。


プスンと音を立てて、稲妻が消えていった。

二度目も攻撃抑止の効果で、発動できずにいる。


三度目……奴自身の攻撃が跳ね返る。


そう思っていると、踏み潰そうと思ったのか、ゾンビダラボッチは片足を大きく上げた。


人々の悲鳴が響き渡る中、足が振り下ろされる前に、ゾンビダラボッチがグシャ! と、潰れる。


土が崩れるように、ゾンビダラボッチは地面に落ちていった。


三度目の踏み潰しのダメージが、跳ね返ったな。


絶対反転の効果は、絶大だ。


ついに、やったか?


その時、大聖殿から笑いながら出て来る神官がいた。


シャーリーだ。


豪華な法衣に身を包み、これでもかといわんばかりの装飾具をつけている。

あいつ、大聖女の品位を落としていないか?


「ほほほ! ごらんなさい。この国の神器などなくても、私が来ただけで、ゾンビダラボッチは倒れたのです」


彼女そんなことを言っている。

そして、怯える街中の人の前で両手を広げて、語りかけた。


「皆様、どうかご安心を。私は大聖女シャーリー。ゾンビダラボッチは、アンデッドの魔物。聖属性の魔法の最高峰にいる私に、敵うべくもありません」


なんて言ってる。お前が何をしたんだ?

俺の心の中のツッコミをよそに、人々はシャーリーに感謝して拝み始めた。


終わったのだろうか……ゾンビダラボッチは、肉体が消滅せずに、潰れた土の塊のようになったままそこにある。


「いえ、ゾンビダラボッチは倒れていない!」


俺の隣で、フィオがゾンビダラボッチを見つめて叫んだ。


何!? まだ、体力が余っているのか?


そう思っていると、ゾンビダラボッチは再び起き上がる。


それを見た人々は、悲鳴をあげた。


「大聖女様、お助けを!!」


「奴を倒してください!!」


口々に、彼女に懇願の声があがる。

シャーリーは一瞬、戸惑いの表情を見せたが、サッと切り替えて祈りの書を開いた。


「我らの女神、ルパティ・テラ。我が敵を打ち滅ぼすため、その矛を貸し与えたまえ、ホーンス・リラー!!」


直後、空から雲を割って、光り輝く巨大な矛がゾンビダラボッチに襲いかかる。


シャーリーの一撃必殺技だ。

これを耐え切れたアンデッドは、見たことがない。


見た目が派手なことも手伝って、あちこちから賛美の声があがった。


「大聖女様!」


「大聖女様ぁ!!」


みんな彼女に跪き、手を合わせている。

でも、彼女の隣で法衣を着た半人半馬の男は、険しい表情を崩さない。


なぜ、そんな顔を?


周りの賞賛に気をよくしたシャーリーは、満面の笑みでそれに応えようとした。


その時だ。


「ヴガァァァァー!!」


ゾンビダラボッチが吠えた。

そのまま刺さった矛を引き抜いて、握りつぶしてしまう。


「な……!!」


「そんな!!」


見ていた人々が、驚きの声をあげた。

シャーリーの聖属性の魔法が、効かないなんて!!


シャーリーは、もう一度同じ呪文を詠唱したけど、結果は同じ。


「そ、そんな馬鹿な!」


彼女は、戸惑いながら祈りの書のページをめくって、より強力な魔法を探している。


いや、ダメだ。


何かが、攻撃という攻撃を吸収して、ダメージにならない。


奴自身の攻撃さえ、意味をなしてない。


考えろ……考えるんだ!!


読んでくださってありがとうございます。

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