表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/88

まさかの本音

俺たちは、ネプォンたちの気配が消えるまで、声を潜めていた。


そっと聖騎士ギルバートが、テントの入り口から顔を出して、外を確認する。


「うん、大丈夫。危なかったですねぇ。ネプォン王が、すぐそこまで来ていましたし」


それを聞いて、ケルヴィン殿下は、ふぅーとため息をついた。


「……心臓に悪いな。まったく。それに、大聖女代理シャーリーの話も出たな」


シャーリーまで、来てるなんて。

会いたくもない相手が、また増えたな。


シャーリーの名前を聞いたフィオは、戸惑うような表情で片手を口にあてて、


「ケルヴィン殿下。シャーリー様……は、何か危害を加えられてしまうのでしょうか」


と、言った。

相手は大聖女。王といえど、理由もなく危害なんて……あ、でも。


シャーリーに代わる、他の大聖女候補者がいれば、彼女を排除できる。


俺はフィオに声をかけた。


「フィオ、シャーリー以外に大聖女候補はいるのか?」


「……」


俺が聞くと、フィオは複雑そうな顔をする。

……まだ、怒ってるのか?


「フィオ、ワシも聞きたいのじゃ」


答えにくそうなフィオに、魔導士ティトが助け舟を出した。


彼女はハッとして、小さく『ごめんなさい』と言うと、俺を見上げる。


「え、ええ、それはもちろん。シャーリー様が候補者の筆頭ではあるけど、他にも何人かいらっしゃるわ」


「ということは、シャーリーがいなくなっても、困らない……」


やはり、そういう結論になってしまう。

本来の大聖女であるオベリア様は、病床にいるとはいえ、まだ生きているしな。


「フィオも、候補者じゃないか」


と、ケルヴィン殿下が言った。


フィオも? あ、確かに彼女は、魔王ダーデュラの魂の存在を感知した一人だ。

潜在能力はとても高いんだろう。


言われたフィオは、慌てて首をブンブン横に振る。


「いえ! いえ、前にも言いましたけど、私は誰にも期待されていない新米なんです!」


「慌てん坊なところさえ落ち着けば、シャーリーを上回るんじゃないのか?」


ケルヴィン殿下が言うと、魔導士ティトも顎を撫でながらフィオを見る。


「うむ。オメガゴーレムの攻撃を防いだシールドといい、悪霊を散らし続けた霊力といい、素質はいいはずなんじゃ、フィオは」


そうだよな、あの耐久力もすごかった。俺が行くまで、持ち堪えたのだから。


「シャーリー様より、フィオの方が大聖女向きかもね。シャーリー様は、大聖女として威張ってる感じがするし、ヴォルディバ先輩の彼女なんでしよ?」


聖騎士ギルバートも、髪型を整えながらフィオに言う。


そう、シャーリーは暗黒騎士ヴォルディバの恋人だったはずだ。


もし、彼女に何かあれば、ネプォンと暗黒騎士ヴォルディバとの間に、溝ができるだろう。


まあ、二人の関係の深さが、遊びなのか真剣なのかすら、俺にはわからないけど。


「そういえば、ネプォン義兄上(あにうえ)はフィオの話もしてたな」


ケルヴィン殿下が、心配そうにフィオを見る。

そうだった……あいつフィオと付き合いたいなんて、言ってたな。


魔導士ティトも、厳しい表情で俺たちを見回す。


「とにかく、当面ワシらは、ゾンビダラボッチのことを考えようぞ。モタモタして、フィオがネプォン王に見つかれば、手籠(てご)めにされるかもしれんでな」


!!

……何!?


手籠(てご)め……て?」


フィオは、意味がよくわからないという顔で、魔導士ティトに聞いていた。


彼女は、低い声でフィオに告げる。


「望まぬ相手に、乱暴されるということじゃ。あちらは、王。お前は、泣き寝入りせねばならなくなる」


「!! ……いや!!」


フィオが、両手で自分の体を抱き締めて怖がる。


ネプォンに乱暴されるだと?


俺は頭に血が昇って、気がつくと叫んでいた。


「冗談じゃない!」


あまりの大声に、みんなが驚いて俺に注目する。


「おい、落ち着け、アーチロビン。ティトが言っているのは、最悪の事態が起きた時の話だ」


「そ、そうだよ、アーチロビン。そりゃ向こうは王だから、権力を振りかざされたら敵わないけど、ボクらが見つからなきゃいいんだから」


「そうじゃ、落ち着かんかい。フィオよりも、お前が熱くなってどうする」


三人がそれぞれなだめてくるけれど、ネプォンはフィオを目の前にしたら、絶対に手を出すだろう。


そして、適当に遊んだら見向きもしなくなる。

前に付き合っていた孤族の女の子も、『飽きたから捨てた』と言っていたじゃないか。


「あいつは、フィオを弄んで捨てるに決まってる!!」


俺は三人に向かって、はっきり言った。

そういう奴だ。


頭の中に、フィオが奴に奪われる光景が浮かんで、奥歯を食いしばる。絶対にさせるものか。


熱い想いが込み上げてきて、テントの入り口を睨みつけた。


ケルヴィン殿下は俺の表情を見て、困惑したように声をかけてくる。


「な、なぁ、アーチロビン。少し落ち着け、て。まだ、何かされたわけでもないのに、そんなに怒るなんて、一体どうし───」


「何かされた後じゃ遅いんです! フィオが悲しむじゃないですか! 心が死んでしまう!」


「いや、フィオは……」


「フィオが奪われるなんて、俺は嫌だ!」


よりによってネプォンなんかに! いや、誰であったとしても!!


俺の様子を見ていた魔導士ティトが、ため息をついてニヤリと笑う。


「ふぅ、奪われることが嫌、か」


「ああ」


「フィオを、失いたくないからじゃろうが」


「大事な仲間だから」


「お前の振る舞いは、仲間以上の感情がある者の態度だ。他の男が近づくことを、毛嫌いしておるしな」


「は? 仲間以上? 毛嫌い? わからないことを言うな」


「フィオがネプォン王に夜伽(よとぎ)をさせられることを、本人以上に嫌悪しおって」


「当然だろ!?」


「そんなに、フィオが好きかえ?」


「あたりまえだ!!」


……。

……。


ん?


みんなが呆気に取られたように、俺を見ていた。


は? なんだ?


「予想外の……」


「熱いお返事……」


ケルヴィン殿下と、聖騎士ギルバートが、パチパチと拍手している。


「ひゃーはっはっは! よかったのぉ、フィオ。やはり、恋はライバルがいる方が燃えるもの。ワシとアーサーとの恋を思い出すぞ」


魔導士ティトが、フィオを見てニコニコ笑う。

フィオは、時を止めたように固まってしまっていた。


あ……れ?

俺、今なんて言った!?


無意識にポロッと口から(こぼ)れた。

なんて言ったんだ? 俺。


た、確か、俺、彼女のことを───!


読んでくださってありがとうございます。

ブックマーク登録と、評価ポイント★で応援していただけると嬉しいです。とても励みになります。


(ポイントは広告の下↓にあります)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ