地下室の攻防
魔法陣の光に包まれて、目を瞑ったかと思うと、見知らぬ場所に立っていた。
……地下……地下だ。
光のささない、暗い場所。
フィオ、みんな、どこだ……?
オメガゴーレムは、石化の力を持つ。
発見したら、すぐ奴の動きを止めないと。
「カンテラ、ヒ、ツケル」
「あぁ、待ってろ」
フェイルノに言われて、俺は手探りでカンテラを背嚢から取り出して、火をつける。
広い地下室のようだ。
ところどころに、砕かれた石像がある。
いや、石像じゃない。
これは……石化した冒険者たちだ!
ケルヴィン殿下たちでは、なさそうだが。
俺はカンテラをフェイルノの嘴に咥えさせて、弓を構えた。
ギシリ、ギ!
足元の床を踏む音が、大きく聞こえる。
やがて、ボゥッと淡く光るものが見えてきた。
「ティト!」
俺は、淡く光る石像を見つけてゆっくり近寄る。魔導士ティトが、ロッドを構えたまま石化していた。
何か魔法を放とうとして、そのまま石化したようだ。
淡く光るのは、フィオのマジックシールドのおかげだろう。
よく見ると、少し離れたところに、盾を翳した聖騎士ギルバート、さらにその向こうに、転んで誰かを突き飛ばしたような姿勢で石化している、ケルヴィン殿下が見えた。
三人とも、淡く光るマジックシールドに守られて、どこも壊されていない。
フィオがまだ、生きている証拠だ!
「フィオ、フィオ!」
声をかける俺の横を、暗い影がスーッと追い越して行った。
!?
悪霊!!
フェイルノからカンテラを受け取ると、前方に翳す。
影の行った方向を照らすと、祭壇のような場所があり、そこに悪霊たちが群がっていた。
「じ、慈悲深き、癒しの神よ。聖なる光をもって、悪き魂を遠ざけたまえ! セイントリヒカ!!」
フィオの声がして、強い光が地下室に輝き、悪霊たちがパッと散っていく。
それでも、散らしてるだけだ。
また集まってくるに違いない。
待ってろ! 今、俺が……!!
フィオを助けようと、弓を引き絞ろうとしたその時だ。
ゴゴゴゴ!!
重い音が聞こえ、振り向くと地下室の天井に頭がつきそうな、巨大なゴーレムがいた。
こいつが、オメガゴーレム!?
オメガゴーレムは、横にある土壁の中から、分離するようにゆっくり這い出し、構えていた俺の弓矢を弾き飛ばした。
「うぐ!」
カラーン!!
俺の弓矢が、遠く離れた場所に吹き飛んでいる。
しまった! 弓矢が!!
そう考える間もなく、オメガゴーレムの体が光始める。
全身に古代文字のような模様が、流れる水のようにつたい落ちていった。
その刹那、キン!! と音がして、俺の全身を光が包む。
石化の光!!
みんなこれをくらったんだ。
俺の肩にとまっていたフェイルノが、石になってゴロンと肩から落ちる。
「フェイルノ!!」
俺は素早くフェイルノを受け止めて、懐に戻した。
普通なら、俺も石化している。
だが……。
俺は予備の弓矢を装備して、矢を足元に打ち込んだ。
力場が、矢を打ち込んだところから広がっていき、オメガゴーレムを包んでいく。
その瞬間、オメガゴーレムの動きが止まった。
「俺に、石化は効かない」
俺は奴に、はっきり言い放った。
そう。元々大帝神龍王が、あらゆる状態異常を無効化する存在だったのだ。
オメガゴーレムは、二回ほど石化を発動しようとしてできず、三回目の攻撃を打撃に切り替えようとして、自分から後ろに吹き飛んだ。
そのまま胴が割れて、上半身が床に落ち、下半身は崩れて動かなくなる。
床に伏せた上半身も、動かなくなった。
絶対反転による、自滅だな。
……ふぅ。
俺は懐からフェイルノを取り出すと、『解呪の針』を刺して石化を解く。
「ガー! カタマッタ、コワカッタ!!」
「よしよし」
フェイルノは、羽根をバサバサ動かして、興奮しているのを、撫でて宥めてやる。
大切な相棒だからな、大事にしないと。
……ん!?
ゴゴゴゴ!
なんだ、この異様な気配!!
直後、オメガゴーレムの体から、ヘカントガーゴイルの時と同じような光が溢れた。
「まさか、また魔王の魂のカケラ!?」
俺の目の前で、光は帯を引きながら高速で去っていった。
オメガゴーレムが制御不能になったのは、このせいか?
とにかく、今はフィオを先に助けないと!
俺はゆっくり歩いて、フィオの声がした祭壇に近づいていった。
「フィオ」
「……え……」
「来たよ、俺だ」
「アーチロビン!?」
「出てきて、オメガゴーレムは止めた」
ゴトゴトと音がして、祭壇の下から白狐の白い耳が見えた。
「ほら、手を出して」
俺が言うと、恐る恐る手が出てくるので、そっと引っ張る。
ゴロゴロ……と音がして、彼女と一緒に霊力回復薬用の薬瓶が何本も転がり出てきた。
回復薬で霊力を補いながら、マジックシールドをかけたり、悪霊を散らしたりしてたんだな。
ようやく、彼女を引っ張りだして立たせると、後ろから迫る何かの気配がした。
「あ!!」
フィオの顔が真っ青になる。
俺は素早く弓を構えて、不穏な気配に振り向いた。
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