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館への潜入

気絶した暗黒騎士ヴォルディバは、彼の部下たちに保護されて、宿屋へと連れて行かれた。


彼は部下から『将軍』と呼ばれていた。

そんな身分になったのか。


こいつも出世したんだな。

まあいい。


俺は、さっき忠告してくれた男を見つけて、声をかける。


「すみません、オメガゴーレムの住む館の方向は、こちらですか!?」


俺が言うと、男はゆっくり振り向いた。


「……なぜ?」


「あの、仲間……い、いや知り合いが、助けを求めて来たのです!!」


「ほう」


「メンバーが次々と石化したらしくて、最後の一人が奮戦してみんなを守っているそうなのです。お願いです、場所を教えてください!」


「いいだろう。その代わり」


彼は俺の弓を指差した。

なんだ?


「それをよこせ」


「!!」


「その弓をくれるなら、教えてやる」


「ガー! イジワル! イジワルジジイ!!」


オウムのフェイルノが、男性に向かって叫ぶ。


俺は慌てて、フェイルノの嘴を指先で押さえた。


「よせ! フェイルノ!!」


「ふふふ、面白いオウムだ。この『タインシュタ・フラン』様を捕まえて、イジワルジジイとな。」


「え! あなたが?」


まさか、ここで本人に会うなんて!!


俺が驚いていると、タインシュタ・フランは、ニヤリと笑った。


「大きな力の接近を感じて、港に来てみたらお前が来た。古代から続く偉大な力だ。お前自身のものか、その弓が力を宿しているのか、よくわからんでな」


「……」


「武器屋はこの街にもある。弓は新しいものを買うといい」


「いいでしょう。どうぞ」


俺は弓を渡した。なんの変哲もない『木の弓』だ。冒険者の初期装備だし。


今は何より時間が惜しい。


タインシュタ・フランは、満足そうに受け取って、オメガゴーレムの館の場所を教えてくれた。


「この道を真っ直ぐ行くといい。武器屋はほれ、すぐそこだ」


「ありがとうございま……」


俺がお辞儀をして顔を上げた時に、彼の姿はもうなかった。俺は武器屋に入り、新たな弓矢をすぐに購入する。


『ミスリルの弓』か。


俺の場合、弓そのものの攻撃力は意味をなさない。けれど、悪霊の装備破壊スキルは要注意だ。


予備にもう一つ購入して、隣のカウンターで防具も見る。


そうだ。

店員に、情報収集も兼ねて、質問してみよう。


「ここでは、走ってはいけないんですよね」


俺が言うと、防具屋の店員が頷いた。


「そうだ。死にたくなければ」


「オメガゴーレムの館まで、急いで行きたいのにな……」


「あー、あの冒険者さんたちの知り合い?」


「!? ご存知ですか?」


「防具の力で悪霊を防げないかとか、しつこく聞かれたから覚えてる。そんなに簡単なら、みんな走れていますよ」


……相当難しいのだな。

俺の力は、ソウルイーターをも抑え込めた。


けれど、さっきの悪霊が一体とは限らない。

後から、次々と湧いて出て来たら厄介だ。


「あと、石化を解く『解呪の針』はありますか?」


「オメガゴーレムに石化されたのかい? ありゃりゃ、だからよせと言ったのに」


オメガゴーレムは、石化の魔法をかけてくるのか。


「彼らも購入して行ったのでしょう?」


「あぁ、持てるだけ持って行ったよ。けどな、オメガゴーレムだけに気を取られてると、悪霊が来るからな」


「!!」


「オメガゴーレムの石化を解く間に、悪霊の攻撃をさばかないといけない」


「走らなければ来ないんでしょ?」


「……走ることになるのさ。あの館に入ってしまえば」


「!?」


「あんたも、『ミイラ取りがミイラになる』ことになるぞ。ましてや、ソロで行く気だろ」


「はい」


「たく、タインシュタ・フランの尻拭いさせられる冒険者が気の毒だ」


尻拭いだ?

どういうことなんだろう。


「というと?」


「古代秘術で奴が作り上げたのが、オメガゴーレムなんだが、結局制御できずに放り出したんだよ、あの館に」


「!!」


「あの館に閉じ込めるのが精一杯。そのくせ、オメガゴーレムを回収したくてたまらないから、何も知らない冒険者にこうやって頼むのさ」


「彼が生みの親……」


「生み出したものに責任をとる、というこの街の鉄則を、あいつは堂々と破る鼻つまみもんなんだよ」


「そうですか……」


「とにかく、走るな。人間は決して」


「!? 『人間』は?」


「不思議と動物が走っても、悪霊は出てこないんだよ。あ、半人半馬は人間にカウントされるからな。あの聖騎士のお兄さん、馬に化けてたけど、悪霊はだませない、って」


聖騎士ギルバートが、馬に化けてた?

想像つかないな。


と、とにかく!!


「馬を貸してくれませんか!?」


「いいけど、館の中には連れていけないぞ? 怯えていうことを聞かなくなる」


「かまいません!!」


「イソグ、イソグ!! ガー!!」


俺とフェイルノの剣幕に押されて、防具屋の店員が馬を貸してくれた。


俺は馬に飛び乗ると、崖の淵に建つ館を目指す。


みんな! フィオ!! 生きていてくれ!!


館の前に来ると、馬が怯えて前に進まなくなった。


「よしよし、ここでいい、ありがとうな」


俺は馬を降りて、館の扉を開いた。


大きな館だ、誰もいない。

シーンとして、あちこちに蜘蛛の巣がかかり、調度品は埃をかぶっている。


だが……。


床を見ると、埃があまり落ちてない。

天井と壁も、シミがついているけど何かおかしい。

足元の床を叩くと、場所によって音が違う。


仕掛けだらけの証拠だ。


よく見ると、強い摩擦の痕がある。

壁一面に、何かが動くようだ。


ここはオメガゴーレムが住むと同時に、トラップが張り巡らされてる。

奴を外に出さないために。


冒険者が走ることになる、ということは、鉄球が何かが、転がってくるのかもしれない。


皮肉にも、ネプォンの野郎に散々スカウトをやらされてきた経験が、こんなところで役に立つとは。


「ガー、キケン、キケン」


フェイルノが、俺を見ながら喋る。


「わかってる。でも、行かないとフィオたちを助けられない」


ピアノ線のように、切れたら張り直しをしないといけないものは、出入りできない場所にはないと考えていいだろう。


古代秘術で作ったゴーレムに、秘術で対抗しようとしても、全てに施すことはできないはずだ。


つまり……アナログで強力な罠がある。


俺は床板を慎重に見極めた。

重さがかかったり、光を塞いだり、振動を与えたり。


そういったものが、発動の条件になるだろう。


「ドウスルノ?」


オウムのフェイルノが、心配そうに聞いてくる。


俺は自分の考えを話した。


「おそらく、一つ罠が発動したら、連動して他の罠も起動すると思う。全部をかわす余裕も時間もないから、発動させてしまおう」


「エ!?」


オウムのフェイルノは、首を傾げる。


まあ、みてろ、て!


俺は一旦館の外に出て、その辺に落ちている大小の小石を掴むと、扉の隙間から中に投げ入れた。


バラバラバラー!!


バン!! と、扉が閉まり、ゴトン!! と大きくて思い音がする。


槍が刺さる音、床が開く音、そして、スズーン!! と、岩のようなものが壁に当たる音。


扉の下からは、毒ガスのような煙もはみ出してきた。


「すげぇ。これでもかというくらいの、仕掛けが作動してる。これくらいしないと、ここから出ようとするオメガゴーレムを止められないのかもな」


ふー、入らなくてよかったぜ。


俺は扉の外で、音が静まるのを聞いていた。


「ガー! ゼンブ? オワリ?」


「待て」


シーンと静まり返った館を前にして、フェイルノが声をかけてくるけど、もうひと押し。


バリバリ!!


中で、雷鳴のようなものが大きく鳴り響いた。


トドメの雷撃だ。


もう終わったと油断した後にくる、トラップあるあるだな。


俺は近くの窓を叩き割った。


中を覗くと、思った通り、発動した仕掛けが戻っていく最中だ。


次に備えて、自動的に戻る仕組み。

この時間が一番安全。


抜けた床も確認しておけば、そこを踏まずにすむ。


フィオたちの姿が見えないから、ここはなんとかやりすごしたのだろう。


続いてカッと床が光り、大きな魔法陣が現れている。


「これは、ここまで来たオメガゴーレムを、元の場所に戻す魔法陣だと思う」


「ガー! ソウダ、ソウダ! フィオタチノトコロ、イケル!」


俺は毒の煙が引くのを見極めてから、中に入って魔法陣に乗る。


今、行くからな!! みんな!!


読んでくださってありがとうございます。

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