↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
24/43

非常に長く険しい序章 24

待ち望んでいたものが来た!


3分間は長かった!


危うく死ぬところだったよ。


「貴様っ!」


ドウガンがあわてる。ま、好きにしろ。


「どうやら、なぶり殺しにするチャンスは終わったみたいだ。こっからは、俺のターンだよ――」


油断していた。


いきなりドウガンに脇腹を蹴られた。横に飛ばされ、壁にぶつかる。


痛えー! 人が話をしているときに、何をするんだ!


だけど、ドウガンたちを見たら、それが最高にラッキーなことだと分かった。


電子レンジから飛び出した、長い長い俺の武器が、ドウガンとお付きの者二人をぶっとばしてくれたからだ。俺が立って喋っていたら、間違いなく、俺の背骨を直撃していた。ドウガン程度のへなちょこな蹴りで助かったぜ。


半分は強がりだけど。


まあ、こんな状況になるのも当たり前だな。折らないと入らないものを、元の長さに戻したんだから。そりゃあ、蓋も開くぜ。というか、この電子レンジ、頑丈すぎないか? 入りきらなくなったら、壊れる前に中のものが飛び出すのかよ。危ねえ。次からは気をつけよ。


長くて黒く、そして頼もしい俺の棍は、三人の鎧に強烈な一撃を与えた後、きれいな弧を描いて、俺の手に収まった。


手になじむ。

三人がひるんでいる隙に、三度軽く振る。

すげえ! 

本当に手の延長みたいな感覚だった。

これは、使える!


三人は態勢を直した。でも、武器を持った俺を警戒して動こうとしない。


はは、こいつは気持ちがいいな。


俺は棍を左右に回し、胸を張った。こういうときは、高らかに名乗りを上げるのが作法だって、武術の師匠が言っていた。俺もやろう。


俺はもう、この世界で生きていく。


「鍛冶屋カツラガワユウヤ、推して参る!」


「……ださっ」


冷たい声。

ドウガンたちの先に、立っているレネが……。

かろうじて直立しているだけで、壁に身体を預けていた。

お前……聞いていたのか……。


つーか、そんな状態でまで、ツッコミを入れるのか。


「しょうがないじゃない。馬鹿は指摘されないと分からないんだもん」

「……さいですか」


「め~」


ヤギ太郎が、レネの横からそっと出てきた。


「ヤギ太郎! お前は、どう思った? 俺、悪くないよな?」

「……へっ」


うおっ! ヤギに鼻で笑われたよ。


「よし、二人ともそこで待ってろ。すぐにこの棍の錆にしてやる!」


「おい、小僧! 俺たちを無視する気か!?」

「ああ、ドウガンか。わりぃわりぃ、忘れてた」


ははは、と軽く笑ってやる。


「殺してやる、殺してやる、殺してやる!」


ドウガンが地団駄を踏んでいた。馬鹿で感情表現がお約束な奴だな。

俺は、棍で隙だらけのドウガンの胸をついた。


「おおお!」と驚きと戸惑いの声を上げながら、数歩後ろに下がった。

ドウガンの鎧の中央、みぞおちのあたりには、俺の棍の跡がついている。


よし。素材は分からんが、鎧を相手にしても、通用する。


これで、こいつらを撃退することができる!


「くそ、武器を作ったからと言って、いい気になるな!」


左右のお付きが、同時に襲い掛かってきた。


二人とも、鏡で合わせたみたいに左右対称の動きで、剣を振り下ろす。


「動きがきれいすぎるんだよ、お前ら」


俺は二人の斬撃を、棍で受け止める。息が合いすぎるのか、棍と剣が衝突したときの音は一つだった。そのまま、一歩前に踏み出しながら、棍を持つ手をあげた。当然、二人の手もつられてあがり、ついでに急な接近で、二人とも左右対称に態勢を崩した。


「ほれ」左のお付きの剣を棍ではたき落す。


「ほいっと」そして、すぐさま右のお付きの剣も同じようにしてやった。


「あっ」

「あっ」


不意すぎたのか、間抜けな声をあげている。


でもな、まだこれからなんだよ。


と、中央のドウガンが、突きを出してきた。


「おおら!」


「鋭さが足りないぞ、ドウガン」

切っ先を、棍で受け止める。

そして、力任せに後ろへ押すっ! 

勢いが強すぎたのか、ドウガンは尻餅をついた。

へへ、ざまあ。


「あなた、本当に強いのね」レネが心底感心した声を出す。

「め~」


ストレートに褒められると、ちょっと照れる。

が、今は戦いの最中、まだまだ俺の手は止まらない。


床に落ちた剣を棍の先で突く! 

突く! 

二つとも、ボキって音がして、折れた。


「ああ、騎士の」

「魂が!」


おー割り台詞か。無駄に凝ってんな、二人。

でも。


「夜中に、近所迷惑だろうが、二人とも!」


横なぎを一回、二回。

二人とも左右に飛んで床に倒れた。

手加減はしてるから、気絶はしてないと思うけど。

ただ、こいつらの鎧の脇腹にも、棍の跡を残させてもらいましたあ。

ゆがんで、簡単には脱げないかもね。


「げほっ、げほっ」

「どうして、棒を手にしただけで?」

「ただの棒じゃない、棍だ。ほら、先端が細くなってるだろ?」

「知るか!」

「今後のために知っておけ」


ぶん、と音を立てて振ってみる。


二人は首をすくめた。いい子だ、恐怖が刷り込まれたみたいだな。


「武器がないんじゃ、戦えないんじゃないか?」


俺は威圧的に聞こえないように、ことさら優しく言った。


二人ともうなだれてしまう。


これでいい。


これが俺の作戦だった。

俺は、武器破壊を狙っていたんだ。

ドウガンたちは、意地とプライドと上からのプレッシャーがあるせいで、容易には帰ってくれない。俺とレネは殺したくないから、無茶はできないし、怪我をして動けなくなったら介抱しなくちゃならないと思っている。


だからさっきは、ちまちま殴って疲れさせようとしていたんだが、それは向こうも取れる作戦な上に伏兵がいるだけで破綻してしまうような弱いものだった。


でも、棍があれば、話は全く変わってくる。

レネの持つ細身の刀にできなくて、俺の棍にできること。


それが、武器破壊だった。


さすがに武器を壊されれば、戦えない。素手で来たら? 素手だって、壊せるんだよ、ふふふ。


しかも、武器破壊の良さは、第三者が見ても想定していた戦闘が続行できないことが分かるところ。

一目瞭然だよね。

それは、裏を返せば、ドウガンたちが撤退する言い訳になる。逃げ道になってくれるんだ。

武器も防具もぴかぴかのままだったら、職務怠慢を指摘されるだろうが、ぼろぼろだったら努力の証になってくれる。

「しょうがない」という空気を出せるわけだ。


「さ、ドウガン。あとはお前だけだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。