14.孤児院-①(みえる)
『10分 プランク』
大きな部屋に布団を敷いて、みんなで寝る。なんだか中等部で行った、クラス旅行を思いだすなぁ。はじめは大騒ぎしてたけど、もうみんな夢の中だ。
私も布団をかぶって横になる。おや?甘えんぼさんが、もぐりこんで来たみたいだ。まだお母さんが恋しい時期だよね。お姉さんが代わりになってあげるよ。
そっとしがみついちゃってかわいい。私をひっぱって、うつ伏せにして、足と腕の位置を調整して、背中に腰をおろす!?よく見ると、輪郭がぼやけてる。「それ」が紛れこんでたみたいだ。他の子もいるから、うかつに動けないんだけど。
「…」
両肘とつま先で、体を1本の橋のように保持する。プランクだ。体幹を広範囲に鍛える運動で、省スペースで動きが少ないから、子供が寝ていたって平気…普通こんなところでやらせる?私の背中に腰かけた「それ」が足を組み、肩を叩いてトレーニングをうながす。こんなことする子供、ぜったいいない。やだ、ついでとばかりに重くしないで!
「…ぅ…ん…」
ゆっくり時間をかけて、姿勢を維持することで、体に負荷をかける。1分維持して、1分インターバル。もちろん、インターバルはカウントが減らない。体が少しずつ、汗でぬれていく。徐々に溜まっていく疲労に、体が震えそうになる。
「う〜ん、お姉ちゃん好き…」
寝言だ。まだ眠りが浅い子がいるかも。
「…んっ!」
布のようなものが巻きついて、胸がおおわれた。えっ、少し床につけて楽してるんじゃないか?もうっ、そんなわけないでしょ、仕方ないことなの!押さえつけられたせいで、少し呼吸がしづらい。う…少しぼーっとしてきた。
「…は…あ…」
インターバルが終わった、再び姿勢を維持する。疲労と酸素不足が、私の集中力を絡めとろうとする。姿勢を維持しないと。こわばる私の体に、「それ」がゆっくりと腰をおろす。だめ、体がぷるぷるしてきた。なんとか持ちなおして、肘の位置を調整しようとしたところで、肘がすべった。
「わっ!」
驚いて声が漏れる。いつもならすべりにくいマットでやるけど、今日はみんなが散らかした布団の上だった。まだカウントは少し残っているけど、「それ」が小さな腕を交差させて、テクニカルノックアウトを宣言する。どういうこと!?唐突に「それ」が消えた。
「…?…おねえちゃん?」
心臓の音がうるさい。とにかく寝たふりするしかない。幸い、その子はすぐ寝たようだ。私は目が覚めてしまった、どうしよう…




