13.発熱(みえる)
『10分 扇のポーズ』
ときどき水分補給しつつ、体に魔力を巡らせていたら、夕方くらいに寝てしまったらしい。今は朝日が差し込んでいる。
まだ寝起きでぼんやり。柔らかいものに体が包まれて、ぬるま湯にでも浸かってる気分。ときおりぷるぷると動き、体がほぐされる。すべすべした肌ざわり。気持ちいい。あっ、そこはもまなくていいです…
「…っ!」
目が覚めた。体を起こ…せない。透明な薄い膜のようなものに、首から下の体中が覆われているらしく、下着や服はその上から着ている。相変わらず謎の物質…「それ」のしわざだ。
いわゆる温湿布に近い効果なのだろう。もう体にだるさは残っていない。ただ、この薄い膜は見ためによらずかなり丈夫で、私の体を外から動かすほどの力がある。カウントが見える。もう体調は問題ないという「それ」の判断だけど、病み上がりなのだから休ませてほしい。
「…んっ…も…」
体を起こされ、いつの間にかベッドの上に設置されたマットに、あぐらをかくように座らされる。片足を伸ばして、それとは反対側の手を、息を吸いながらゆっくり上げる。そして息を吐きながら、上半身を伸ばしている足の方へ、ゆっくり倒していく。扇のポーズだ。また、ゆっくり戻して、次は反対側。
整理体操でもよくやっている動きではあるけれど、まだ少し体に違和感がある。「それ」によると、熱で体力を消耗してるだろうから、ある程度動かすのを補助してあげてるとのこと。動かされる方の身になってほしい。
「…」
…どうしよう、トイレに行きたい。えっ、そんなことどうでも良いから動きに集中!?優先順位おかしいよ!…わかった、ちゃんとやるから、カウント止めないで。できれば早く進めて。
「…」
慎重に足を組み替える。変に刺激しないように。
「…」
顔は上げてる方の手を見る。なにも考えちゃだめ。
「…」
呼吸と心臓の音だけ聴く。心を調和させる…
カウントが0になった、トイレにかけ込む。間に合った。なんとか尊厳を守れてほっとする。まったく、もし漏らしちゃったら、「それ」はどうするつもりだったんだろう。いや、そんなこと考えたくない。寝る前には必ずトイレに行こう。




