12.指導(みえる)
『10名 基礎指導』
「…それでは、よろしくお願いします。」
集まった人に指導を始めるけど、いつも私がやってることを、一緒にやるだけだ。
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聖女さんの指導が始まった。
「…まずは、柔軟から始めます。魔力が流れるのは体ですから、地味ですがとても大事です。」
そう言って、屈伸や伸脚をしていく。聖女さんを眺めながらの運動、素晴らしい。俺たちも真似するが…大変なことに気づいてしまった。何気ない動きなのに、まったく真似できない。おそらく、柔軟性と体幹。みえない場所の、鍛え方が違う。
周囲に目を向ける。となりのやつと目があった。うなずく。みんな気づいたみたいだ。それなりには、俺たちも鍛えてるはずだ。必死でついていこうとするが、ぐっ…正直かなり厳しい。おいっ、聖女さん「…?」って顔してるぞ!みんな全力でやれっ。
なにかスイッチが入ったような聖女さんが、こちらの柔軟に指導を入れてくる。スタッフで角度を示し、押して位置を調整し、並べてずれを理解…指摘されるとたしかにとは思う。でも聖女さん、厳しすぎます!ちょっと待て、端のやつ、かなり顔が赤いぞ。これまだ準備運動だよな?
「…攻撃の構えで魔力を巡らせます。無意識にできるのが理想です。姿勢を確認しますね。」
次は基本姿勢の確認。いろいろな人を見てきたのだろう、聖女さんの指導は的確だ。
「…さわりますね。そんなに固くしないで。足はもう少し前の方が、入りやすいと思いますよ。」
足の位置を調整される。初動が早まれば、先を制することができる。
「…ん…しょ。腕は人を包むイメージで。空間を意識してください。」
腕の位置調整。懐が深くなれば、飛び込まれても対処できる。
そして、さらに魔力を巡らせる…いや無理だ。相手を想定すると魔力が崩れて、魔力に集中すると姿勢が崩れる。だが、聖女さんはごく自然に見本を見せてくれた。完全な静止。なのに、間合に入ったら死ぬことは分かる。恐怖で腰が引ける。
「…私が外から、みなさんの魔力を動かして、目指す場所を体感してもらいますね。」
そんなことできるの?
「…ただ、調整が難しいので、直接肌にふれたいです。…えっと、手、で良いでしょうか?」
一斉に首を縦に振る。俺たちが普段見ている、ちょっと遠慮がちな聖女さんだ。すごく安心する。
聖女さんが、俺の手をにぎる。体に澄んだ魔力が流れてくる。俺は姿勢の意識だけに集中する…待ってくれ、魔力とバランスをとろうとして、体が誘導されてる!破裂しそうだ!そして、聖女さんの負荷が大きいらしい。
「…はぁ…はぁ…大丈夫です…思いっきり、動いてください。」
…死から逃れるために振った剣は、すべてを斬れそうだった。そして一気に力が抜ける。立っていられない。
次々に倒れていく俺たちに、先輩たちが声をかける。予想通りの展開だったらしい。
「次はやめとけ。」
その通りだ。命に関わる。
「だが、向かうべき道は見えたはずだ。聖女の嬢ちゃんの力になりたい者を、俺たちは歓迎する…あと、整理体操は夢にでるほどかわいい。特等席でちゃんと見とけ。」
えっ?
「…最後に、訓練後の整理体操をやります。まだ動けないと思いますので、やり方を覚えておいて、あとでやってくださいね。」
その日の夜、聖女さんを夢で見た。




