12.指導
諸事情により、訓練場に顔をだした。ただ、少し体を動かしたくなっただけで、深い理由はない。ちょっと散歩を長めにしたのも、気が向いたからだ。昼過ぎの訓練場は活気がある。ちょうど連れ立って、休憩に行く人たちがいるらしく、訓練場の片隅が空いた。入れ替わりで、使わせてもらおう。
柔軟をしようとしたら、声をかけられた。
「あの、聖女さんですよね?この前は邪魔してしまい、すみませんでした。」
朝の訓練場で遭遇した人だ。タイミングが悪くて、失礼にも逃げるように去ったのを思いだす。誤解させてしまったようだ。
「…こちらこそすみません。訓練に熱中したせいか、急に気分が悪くなってしまって。気分を害されたのではと、気になっていました。」
うぅ、苦しい言いわけ。「それ」のせいって言いたい。
「あのっ、よろしければ、動きを指導していただけないでしょうか!」
「…私で良ければ、いいですよ。」
それくらいで、許してもらえるなら。それに、街を守ってもらいたい。
一瞬の静寂、そしてざわめき。「僕もぜひ!」「俺もっ」「お願いします!」「あ〜犠牲者が…」「これも経験だろ?」…あっという間に人が集まった。そして憐れむ視線も。まぁいっか、前もこんな感じだった。10人くらいかな。
さっそく、柔軟から開始する。怪我をしないために、また力をちゃんと伝えるために。体の柔軟性は大事だ。魔力が流れるのは、体なのだから。…慣れていないのか、みなさん動きがぎこちない。でも、顔を赤くしながらも、がんばっていてえらい。お姉さん、はりきっちゃうよ!
次は武器を構えて、魔力を巡らせる。攻撃の起点の姿勢で習慣づけると、いざというとき考えるより先に、体が動いてくれる。…1人ずつ腕とか足の位置を調整していくけど、なぜかちょっと腰がひけてる。自信がないのかな。それなら、荒療治だけどいい方法がある。
魔力誘導という技術だ、相手の魔力に働きかけて動かすことで、今より少し上の姿を体感できる。へたすると体を痛めるので、細心の注意が必要だ。せめて、手はつないでおきたい。幸い、快く承諾してくれた。
誘導された魔力で、それぞれが武器を振るう。ただ振ることだけに集中した、無心で良い動きだ。さすがに、負担が大きいのか、倒れこんで動けなさそうだ。私も息があがっている。相手の粗い魔力が入ってくるので、誘導する側も負荷が高い。
倒れてる人に、ベテランさんが声をかけてる。ほほえましい光景だ。しばらく、疲労で立ち上がれないと思うから、整理体操については見てもらって、あとで実践してもらおう。




