11.商談
気分転換のために、雑貨屋めぐりをしていたら、3店目で商業協会の人につかまった。私は悪いことしてない、頼みごとがあるらしい。
商業協会は、この街のお店を束ねている協会だ。お店全体の互助会みたいな面もある。変な依頼が多いので、なるべく近寄らないようにしているのだけど、こうして買い物中に捕獲される。1店目で検知、2店目で推測、3店目で捕獲、と前に教えてもらった。私は悪いことしてないから、ほんとだよ。
「いや〜いつもすみませんね。」
申し訳なさそうな表情の会長さん。もちろん表情だけだ。ここの人たちはみんな、裏でなにを考えているのか、まったく分からない。近寄りたくない理由の1つだ。そっと、高級そうなお茶とお菓子がだされる。
「隣街の協会と商談があるので、聖女様にご同席いただきたいのです。護衛みたいなものですね。小心者なもので、不安なのです。いや〜お恥ずかしい。」
特に不自然なところはない。毒や刺客にも、私ならある程度対応できる。それに、威圧感もないから、おだやかに商談できるだろう。
「…分かりました、お引き受けします。」
「いや〜ありがたい。そうだこれ、うっかり買いすぎてしまいまして、せっかくなのでどうぞ。」
私の好きなお菓子の詰め合わせ。悪いことしてない…よね。
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夜の高級料亭で、食事会の形をした商談が始まった。いや、見えないところで、どろどろした戦いがあったのかも。
「お互いにとっていい商談にしましょう。」
「そ、そうですね。」
明らかに、隣街の人たちの顔色が悪い。その後ろの壁にずらりと並ぶのは、屈強そうな護衛さんたち。こちらは私ひとりなんだけど、数あわせしなくていいのかな?皆さんなぜか私と、目を合わせようとしない。
「では、この件についてはその条件で。」
「それは…はい、良いです。」
変な空気のまま、商談は進む。さすが高級料亭、料理がとっても美味しそう。料理を見ていたら、隣街の代表の人と目があった。気まずい。
「せ、聖女様はお食事されないのですか?」
「いや〜本当はその予定だったのですよ。でも、そちらの護衛の方々の監視が優先と、固辞されまして泣く泣く。」
さりげなく、虚実が混ぜられる。
その後、商談はスムーズに終わった。私はなぜか、帰りに高級料亭のお弁当をもらった。隣街の代表さん名義で、手書きの手紙がついてる。おあずけ状態だったから、正直うれしい。でも、すぐには作れなさそうなこのお弁当、いつ注文したんだろう?




