1.治療
硬貨に表と裏があるように、多くのひとにも、見えている部分と、見えていない部分がある。夢見の聖女なんて呼ばれてる私も、例外なくそんな多くのひとの1人だ。
「聖女さん、急にお願いしてすみません。」
「…いえ、空いていたので、大丈夫です。」
今日は治療院でお手伝い。私は治癒の魔法が得意なので、こうしてときどき治療院で仕事をしている。どうやら、職員さんが急に体調を崩して、人手が足りなくなったらしい。
「やった、聖女ちゃん診てくれるの?」
「俺、もう1回並びなおそうかな…」
「怪我して良かった!」
ちょっと、反応がおおげさな気はするけど、治療院ではそれなりに評価されてると思う。夢見の、とか言われるのは、口数が少なかったり、反応が薄かったりするせいだろうか。もちろん、仕事には全力で取り組んでいる。
「…魔法で体力を高めます。薬で治療しましょう。」
「…しみると思いますが除菌して、魔法で治療しましょう。」
「…えっと、これは治療いらないと思います。」
本音を言うと、できればみんな魔法で治療してしまいたい。でも、治療院という仕組みを維持すべきだし、なにより魔力は有限だ。
「聖女ちゃん、急患の方お願いできる?」
ついていくと、男性が寝かされていた、かなりひどい怪我だ。魔物との戦いで負傷したらしい。傷から判断するに、討伐依頼のでていた大型の魔物だろう。激しい戦いだったことが分かる。
「聖女さんいたのか…なんとか倒してやったぜ。あんたに看取ってもらえるんだ、悪くない最期だ…」
あの魔物を倒せるなら、なかなかの強さだ。打算的で申し訳ないけれど、なるべく早く復帰して、街のためにがんばってもらいたい。あと、話ができるようなら大丈夫だ。
「…死なないで。魔法で治療します。」
励ましの声をかけつつ、愛用のロングスタッフを掲げて集中する。いけない、この状況をおもしろがって、「それ」が協力しようとしてる。「それ」の力加減は壊滅的で、しかも派手な演出が大好きだ。
まばゆい光とともに、輝く羽が降りそそぎ、傷は跡形もなく消え去った。
「あれ?俺、死にかけてた、よね?」
私が聖女なんて呼ばれてるのは、絶対「それ」のせい。




