0.悩み(みえる)
『50回 スクワット』
「…ん…もうっ。」
足を肩幅くらいに開いて、手を頭のうしろで組んで、ゆっくりと体を上下させている。なんどもやらされているとはいえ、疲れることには変わりないんだから、不満がもれるのは仕方ない。
せめてもの救いは、ここが宿の個室だということ。どちらかといえばかわいい系の白いローブを着て、顔を赤くしながらスクワットをしている姿は、できれば見られたくない。
ものごころついた時から、私のそばにいつも「それ」はいた。小さいころの記憶は曖昧だけど、「それ」はときどき重いものを持たせたり、長時間走らせたりしていた。
…考えてみると、子供にやらせることではない。昔は、なんだか変な遊びをしてると感じる程度だったけど。今ならあれは、トレーニングの一環だったと断言できる。でもなぜか、私の体には筋肉がつかない。おかげでいつもへとへとだ。
すぐに、然るべき場所に突きだしてやりたい。でも、そういうわけにはいかない理由があって、私は「それ」を受け入れている。すごく不本意だけど。
最大の理由は、私にしか「それ」が認識できないこと。基本的に、他の人には見えない。私が主張しても、夢でも見てると思われるだけ。あと、トレーニングさせるのを罪に問えるかという、根本的な問題が残っている。
「…」
ようやく終えたら、背中を力強く叩かれた。ナイスワークということらしい。意味不明だけど、害意はないのが余計に腹立たしい。つかれた。お風呂に入って早めに寝よう。




