7.迷子
今日は朝からおだやかに、雨が降っている。こんな日は、部屋で読書するのが良い。でも、そろそろ別の本が読みたいので、図書館で借りてくることにする。
いま借りている本を、鞄に入れて斜めがけし、傘を開く。いつもより静かな街。雨の香りがする。念のため、鞄には保護の魔法。多少濡れるけど、雨の散歩も悪くない。図書館には、魔法関係の蔵書も多い。実際に魔力を動かすときに、感覚だけでなく言葉でイメージすることは大切だ。あと残念ながら、「それ」の正体につながる文献は見つかっていない。
おや?男の子がうずくまって泣いてる。魔法で周囲の気配探知。怪しい気配はない。罠ではなさそうだ。私の性格を逆手にとって、無力化しようとする人が稀にいる。それほど恨まれるようなことは、してないと思うのだけど。ちなみに、襲ってきた男は、「それ」が無力化した。
「…どうしたの?」
男の子と目を合わせるように、かがんで話しかける。…話をまとめると、迷子になったらしい。子供なりに、いろいろ悩みがあるのだろう。ずぶ濡れで少し震えている。浄化と乾燥の魔法をかけて、頭をなでてあげる。安心したのか、私に抱きついてきた。よしよし。お姉ちゃんが助けてあげるからね。
警備隊の詰め所に連れていくのは、さすがに気の毒だ。でも、探索の魔法は役に立たない。教えてくれた特徴の家は、そこら中にある。だから、ちょっと特殊な魔法を使う。
小さな光の球体が、少しずつ動いていく。この魔法は、今まで読んだどの本にも載っていない。私は天啓の魔法と呼んでいる。求めるものの方へ向かう。そんな効果だと、感覚的に理解しているけど、原理は不明だ。
男の子と手をつないで、傘を分かち合い、静かな雨の散歩を楽しむ。小さい頃に、こうしてお母さんと、ときどき散歩したなぁ。
「おねーちゃん、ありがと!」
いっぱいお話して、心の整理ができたのだろう。もう道が分かったようで、元気に走っていった。この冒険が、男の子を成長させてくれますように。一方、天啓の魔法は消耗が大きい。あと、ここはどこだろう?私は大人なので、道をたずねつつ、自力で帰ろう。




