6.訓練(みえる)
『30回 素振り』
スタッフを構えなおした私の前に顕現するのは、輪郭の曖昧なひとがたをした「それ」だ。もちろん他の人には見えないけど、この姿の「それ」には攻撃があたる。「それ」はフロントダブルバイセップスで私を挑発する。落ち着いて。あんな挑発にのってはだめ。あと、見えてる素振りの表示も気にしてはだめ…絶対にあててやる!
今まで練り上げた魔力を、破邪の魔法をのせた、魔導連撃に昇華する。威力を上げるほど、制御が難しいけど、大丈夫いける!渾身の連撃が「それ」を捉えた。体制を崩す「それ」に追撃、でも今回は制御が甘い。
「っ!」
追撃を受け流した「それ」に頭をなでられる。距離をとるための薙ぎ払い。だがそこにいない。うしろから肩をたたかれる、回り込まれた、まずい。とっさに前へ飛んで背中への攻撃をかわす。確実に、素振りの回数が減っていく。にやにやしてる気がして腹立たしい。
仕切りなおして反撃、でも集中しきれない。「それ」が攻勢に転じる。裏拳、回し蹴り、サイドチェスト…もうっ!完全に「それ」のペースだ。「それ」にさわられるたびに、私のロングスタッフが重くなっていく。身体強化ありの場合の、独自ルールだ。くやしいけど、いずれ動きが鈍くなり、結果的に素振りになることが多い。「それ」のサイドトライセップス。トレーニングしてもぷにぷになの、私は結構気にしてるのに!
「ふっ!はっ!」
動揺しちゃだめ。集中して。流れるような攻撃が「それ」を打ちのめしていく。…そういえばかなり汗をかいてた。いつもは室内だから気にしないけど、女性としてどうなんだろうという見た目かも。残念ながら、カウントは0になった。くやしい…えっ?
…いつの間にか、他の人が来てた。それ自体は良いのだけど、今日はタイミングが悪い。汗のせいでローブに体のラインが少しでてる。あと、全力でやってたせいで、ローブも着くずれてる…もう無理。失礼だとは思いつつも、軽くおじぎして、ローブをととのえつつ逃げだす。次にもし会ったら、今日のことを謝ろう。




