6.訓練
昨日の討伐は、もっとうまくやれたと思う。直接的な原因は、斥候の人だけど。わずかな気配でも感づけるようになりたいし、なにより魔法の練度を高めたい。ややだるい体をなんとか動かして、私が早朝の訓練場にいるのはそのためだ。
魔物と戦う人々がいる関係で、その訓練のための場所が、街の公共施設として整備されている。施設といっても、壁に囲まれた運動場みたいな空間だ。武器を振り回したり、魔法を使ったりしても良いように、かなりの広さがある。
この時間帯に訓練する人は少ないので、集中するのにはちょうど良い。今日にいたっては、だれもいなかった。私は訓練場の片隅で、ゆっくりとロングスタッフを動かす。
体の隅々まで魔力を巡らせ、循環させる。もっと解像度を上げて。淀みなく。ローブやスタッフも、魔力で繋がれば体の一部だ。繊維の一本。空気の動き。目指すのは、あのとき「それ」が支援した解呪の感覚。
汗が滴り落ちる。具体的なお手本があるから、あとはそこへ向かえば良い。私ならできる。強く信じる。気が向いたのか、どうやら「それ」が相手をしてくれるらしい。私はスタッフを握り直す。
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僕の目は、早朝の訓練場にいた人に釘づけになった。きれいな女の人が、ゆっくりと舞っている。小柄な体つきなのに、内包する存在感がすさまじい。汗に濡れた髪が動き、きれいなうなじが見える…ってどこみてるんだ僕は!
なにかを見据えて、女の人の動きが変わる。戦いを想定した動きだ、速い!魔力が燐光となって煌めき、ぞっとするほど鋭い攻撃が繰り出される。純粋な殺意だ、なのに美しい、目が離せない。あれ?でもときどき、どこかかわいらしい表情が混じる。別のことを気にしてる、そんな気がする。
「…」
突然の静止。女の人と目が合った。こちらが恥ずかしくなるほど赤面して、逃げるように訓練場から去っていく。まだあどけなさの残る、女の子だった。
「おう坊主。あれが聖女の嬢ちゃんだ。まるで夢でも見てる気分だろ?夢見の聖女とはよくいったもんだ。あと、次に見るときには、バレないように気配を消せ。俺らみたいにな…」




