5.討伐-②(みえる)
『10回×10セット チューブトレーニング』
「…」
宿に戻ったら、部屋の中に太いゴム製のロープが置いてあった。ゴムの張力を利用した、トレーニング器具だ。「それ」が悪ふざけしてうねうね動かすから、大きな蛇のように見えて気持ち悪い。あと、回数を見て少しげんなりする。このチューブを使った運動は種類が多いので、いろいろやらせるつもりなのだろう。
チューブがゆっくりにじり寄ってくる。この演出いらないよね?あきらめて手をだすと、素早く手に巻きついてきた。反対側の手にも巻きつき、私は囚人のように連行されていく。試しにひっぱってみる。思ったより張力が強い。
ゴムの中央が、謎の力で壁に固定され、私は壁を背に両腕を広げて立つ。そして、壁をひっぱるようにして、両手を前方へ押しだしてゆっくり戻す、きつい!体を安定させるため、足を少し前後に開かせてもらう。えっ、いま戻すの早かった?胸筋がつりそう…3セット。
そのまま膝立ちになって、チューブの巻かれた手を肩に保持。そのままお祈りするように、腹筋の力で上半身を曲げてゆっくり戻す。反動をつけてはいけないらしい。「それ」の指導が入る。チューブの固定位置を上げると負荷が高くなるのは分かった。分かったから元に戻して…3セット。
「わっ」
急に手からチューブが外れて、足首に巻きつく。ばたりとうつ伏せ。壁の固定位置もそれに合わせて下がる。両足をひざのところで曲げて、かかとをなるべくおしりに近づける。普段意識して使わない、足のうしろ側の筋肉に負荷がかかる。ううっ、チューブのせいで全然曲げられない…3セット。
「…」
再び立たされて、チューブが両手に巻きつく。最後の1セットは、最初にやったやつだ。でも、これまでの疲れで体が悲鳴をあげてる。「それ」が肩をたたく。やればいいんでしょ!
「はぁっ…はぁっ…」
筋肉がぷるぷるしてる。
「う〜っ…もうっ!」
やみくもにひっぱっちゃだめだ。
「んっ、くっ!」
チューブを体の延長線に。
「んーっ!」
筋肉と一体化させる!
チューブが消えて、私は倒れこんだ。汗だくで気持ち悪い。早くシャワーを浴びよう。あと、寝る前に入念にクールダウンだ。やっておかないと明日がつらい。




