(四)一人で支える
◆ 七 一人で支える
■■■■■は、一人で封印術式を支える。
本来必要だった接続数は、八を超えていた。
それは事前に分かっていた。
だから彼は、追加の八接続を乱れなく行う。
書類上は、八接続が二つ。
だが実際には、最初の八接続を折らずに伸ばした十六接続。
追加の八接続は、ただひたすら救えるものを救うために手足を伸ばすだけの術式だった。
目はいらない。
欲しいのは、救うための手足だけ。
怨霊がいる。
希薄は十分に追加している。
物が落ちる。
固定は十分に追加している。
偏向も効いている。
人々がおびえている。
恐怖は同調で十分に引き受けられる。
彼の術は、式として接続される。
複雑であると同時に、万能な式として完成する。
この場のすべての怨霊と物体に作用する。
複雑だから、すべてに作用できる。
怨霊には怨霊の形で。
瓦礫には瓦礫の形で。
人の恐怖には人の恐怖の形で。
術式が歪んで届く。
だから万能。
そして、それは時間軸にも同じように作用する。
だから禁呪。
目を捨てた彼には、それが見えない。
誰も、彼を縫い留めてはくれない。
名前を呼ぶ人間はいた。
だが、術式の外側から彼を観測し、記録し、帰還を確認する仕組みはなかった。
署名を確認する者もいない。
名痩せを異常として扱う者もいない。
術式そのものの反発を逃がす者もいない。
彼は、全部に届いた。
怨霊にも。
瓦礫にも。
人の恐怖にも。
けれど、自分が放った術式そのものが何を残すかは、前提条件に入っていなかった。
術式そのものの残滓。
それが八十年後まで絡まり続ける。
※第0話「防火扉を閉めた日」は全五回です。
続きます。
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