(三)第一段階:足跡
◆ 四 第一段階:足跡
地下道の累積霊障は、最初に足跡として現れた。
濡れた床に、誰もいない足跡が増える。
逃げ道を探す足跡。
出口を探す足跡。
閉じた防火扉の前で、行き場をなくした足跡。
それは、まだ怨霊というより移動の残滓だった。
白鳥が読み上げる。
「足跡群、拡散傾向」
篠宮が外側から状況を見て言う。
「境界固定、入ります」
八重士の一人が境界を仮固定する。
別の八重士が流れを封印路へずらす。
囲えばいい。
導けばいい。
封じればいい。
この段階は、まだ処理できる。
透は、自分の担当する隙間を見る。
固定が少し強い。
その前の偏向枝が、わずかに細すぎる。
このままだと、固定の反発が柱へ戻る。
透は言った。
「少し抜きます」
黒瀬が聞く。
「やれるか」
透は、担当枝だけを見る。
「ここなら約束できます」
透は、偏向を細く入れる。
逃がす。
ただし、逃がしすぎない。
白鳥が確認する。
「固定前偏向枝、圧低下」
「固定柱、安定」
篠宮が言う。
「流しすぎないでください」
「分かってます」
篠宮は、少しだけ間を置いた。
「今のは、分かっている人の流し方でした」
透は思わず顔を上げる。
「褒めてます?」
「作戦中です」
「ですよね」
足跡は、封印路へ流れていく。
出口を探す足跡は、出口ではない場所へ誘導される。
逃げ道を探していたものは、封じられるための道へ流れていく。
それは救いではない。
だが、これ以上迷わせないための処理だった。
※第8話「八重結び」は全十二回です。
続きます。
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