(二)循環型接続
◆ 二 並列術式ではなく、循環型接続
篠宮は、式守の再構成図を見ていた。
そこに並んでいるのは、通常の並列術式ではなかった。
「これは通常の並列術式ではありませんね」
白鳥は頷く。
「はい」
「通常の並列術式は、同期を合わせます」
「息を合わせ、接続を揃え、負荷を均等に近づける」
「だからこそ、人数も接続数も系統も絞る」
篠宮は画面から目を離さない。
「では、これは?」
白鳥は少しだけ言葉を探した。
「仮に呼ぶなら、循環型接続です」
「揃えるのではなく、巡らせます」
「一人の内部で閉じるはずだった負荷を、八人の間で循環させる」
透は、画面の輪を見た。
八つの柱。
その間を巡る、複雑な線。
「巡らせる……」
白鳥は続ける。
「ただし、循環する以上、隣に侵食します」
「侵食されもします」
透は少し顔をしかめた。
「あ、他人の手足がぶつかり合うみたいな?」
「近いです」
白鳥は即答した。
「ただし、ぶつかるのは手足ではなく、接続、負荷、名前、反応です」
透は顔を引きつらせる。
「怖くなった」
土御門が言う。
「怖いと思えるうちは、まだよい」
白鳥は、輪の継ぎ目を拡大する。
「柱と柱の間には、隙間ができます」
土御門が補う。
「輪を作るなら、継ぎ目が生まれる」
「継ぎ目があるなら、そこから漏れる」
「漏れるものを見ずに結べば、結び目ごと持っていかれるぞ」
篠宮は、表情を硬くする。
「並列術式よりも、むしろ危険ですね」
白鳥は否定しない。
「はい」
「ただし、一人に戻すよりは危険を見える場所に置けます」
黒瀬が言う。
「見える場所に置いたところで危険は危険だ」
「同意します」
白鳥は画面を切り替えた。
「なので、手順にします」
そこで初めて、美緒が端末を手元に引き寄せる。
「術式の話ではなくなってきましたね」
白鳥は即答する。
「はい」
「術式単体で解決する段階は終わりました」
黒瀬が少し苦く笑った。
「最悪だな」
白鳥は端末を見ながら言う。
「はい」
「最悪です」
その声に、以前のような効率化への高揚はない。
白鳥は、面倒を削ろうとしていなかった。
面倒だから、手順にしようとしていた。
「これは分割ではありません」
「負荷の再配置です」
白鳥は、項目を一つずつ読み上げる。
「誰が柱を持つか」
「誰が隙間を抜くか」
「誰が柱を縫い留めるか」
「誰が名痩せを確認するか」
「誰が停止判断を下すか」
「誰が帰還確認を行うか」
「誰がその責任を記録するか」
篠宮が聞き返す。
「柱を縫い留める?」
「外縁から観測を入れます」
白鳥は、輪の外側に別の点を表示する。
「柱本人の主観測ではなく、外から柱が柱であり続けていることを確認する工程です」
土御門が頷く。
「輪の外から、結び目を見る役じゃな」
篠宮は小さく息を吐いた。
「術式というより、作戦ですね」
白鳥は答える。
「はい」
そして、画面に仮称を表示した。
> 八重結び。
土御門が目を細める。
「名だけは縁起がよい」
黒瀬が画面を見たまま言う。
「中身は最悪だな」
白鳥は頷いた。
「はい。最悪です」
※第7話「空席の条件」は全十回です。
続きます。
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