(十二)同じ道の先
◆ 十三 同じ道の先
瀬良は、枝を一般化する。
「で、今ので分かったと思うが」
「これは別に禁呪とか八接続とか、そういう大技だけの話じゃねぇ」
透が顔を上げる。
「普通の術式でも起きるんですか」
瀬良は透を見る。
「起きてただろ、今の話」
「さっき聞いた商業施設の件は、禁呪じゃねぇ」
「八接続でもねぇ」
「四接続だ」
「それでも枝は入る」
篠宮が補足する。
「正式には、観測、固定、偏向、希薄の四接続」
「ただし問題になったのは、固定前の微弱偏向反応です」
瀬良は頷く。
「そう」
「あの時のお前は、固定の前に偏向の跡を残した」
「正式な接続じゃねぇ」
「でも、その跡が固定を押し上げた」
「だから苦手な固定が高出力で安定した」
透は呟く。
「押し上げた……」
「普通につないだら、四接続か五接続あたりで限界が来る術者がいる」
瀬良は続ける。
「でも枝が入ると、三接続あたりで妙に安定することがある」
「三で安定するなら、四が届く」
「四で安定するなら、五が届く」
「五で安定するなら、六も見えてくる」
透の顔がわずかに動く。
瀬良は、そこへ釘を刺す。
「もちろん、毎回そう上手くはいかねぇ」
「枝は便利な補助輪じゃねぇからな」
「でも、接続数の壁を押し上げることがある」
白鳥が入力する。
「接続数を増やすのではなく、既存接続の安定限界を押し上げる」
瀬良は頷いた。
「それだな」
「長いけど」
「必要です」
「で、禁呪で怖いのは、こういう隙間まで術者の側へ寄ってくることだ」
透が聞き返す。
「隙間まで?」
「そうだ」
瀬良は、禁呪資料の方を見る。
「目的が複雑だった」
「その複雑な目的に、複雑なまま対処しようとした」
「だから十六接続になった」
「でも、接続として数えられるところだけが術式じゃねぇ」
「数えない隙間にも、負荷や逃げ道や反発が残る」
「禁呪は、その辺りまで術者の側に抱え込ませる」
「その結果、人間の形の方が持たなくなった」
土御門が低く言う。
「普通の術式と本質が同じだからこそ、危ない」
瀬良は頷く。
「そういうことだ」
「まったく別物なら、近づかなきゃいい」
「でも同じ道の先にある」
「だから、知らないうちに近づく」
透は、自分の手を見る。
自分の固定に入った枝。
名前への反応の遅れ。
現場入り前の署名の欠け。
それらは、禁呪とは遠いもののはずだった。
でも、同じ道の先にあると言われると、遠いものではなくなる。
※第6話「六十四接続」は全十四回です。
続きます。
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※ネタバレ範囲にご注意ください。
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