(九)普通の術式も分かっていない
◆ 十 普通の術式も分かっていない
瀬良は、そこで話をすぐには進めなかった。
まず、白鳥の前提を崩しにかかった。
「で」
瀬良は白鳥を見る。
「禁呪の解析をしていると言ったな」
白鳥は頷く。
「はい」
「はっきり言って難航しています」
少しだけ間を置く。
「この言葉はあまり使いたくありませんが、常識外です」
瀬良は笑った。
「そもそも術式が非常識だからな」
透が小さく言う。
「この場、ほとんど非常識集団」
篠宮がすぐに反応する。
「三枝さん」
「すみません」
白鳥は続ける。
「術式については、過去データがあります」
「通常術式であれば、構成、出力、対象反応、事故率、術具消耗の関係は解析可能です」
瀬良はそこで、少しだけ目を細めた。
「それよ」
白鳥は聞き返す。
「それ、とは」
「過去のデータから、術式がなぜ成立するかまで読めたか」
白鳥は黙った。
瀬良は、責めるようには言わない。
「術式は現象です」
白鳥は慎重に答える。
「成立している術式を、入力、比較、評価することはできます」
瀬良は頷く。
「じゃあ禁呪も成立してる現象だな」
白鳥は、返せなかった。
「別にいじめようと思って言ってるわけじゃねぇ」
瀬良は頭を掻く。
「まずは、頭の中の先入観ってやつをぶっ壊した方が聞きやすいと思っただけよ」
白鳥は、その言葉を繰り返す。
「先入観……」
「術式は、もう分かってるもの」
「禁呪は、分からないもの」
瀬良は白鳥を見た。
「そう分けてるうちは、多分読めねぇ」
白鳥は少しだけ顔を伏せる。
「通常術式も、解析対象として見直す必要がある」
「そういうことだな」
瀬良は軽く言う。
「成功してるから分かってる、とは限らねぇ」
「事故ってるから分からない、でもねぇ」
「分かってないまま、たまたま事故ってないものもある」
つづりが横から言う。
「職人の家の手順みたいだね」
「なんでか知らないけど、やめると壊れるやつ」
瀬良が指を鳴らす。
「そうそう」
「そういうのが一番怖い」
白鳥は黙る。
式守に入力できないものを手順に入れられない。
その判断自体は間違っていない。
だが、入力できないものが存在しないわけではない。
白鳥は、それをもう知っている。
※第6話「六十四接続」は全十四回です。
続きます。
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