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独り立つ 〜残された未来へと贈る英雄譚〜  作者: ルヴィカ・フォン・ワーグナー 訳:春の嵐
異想の会談編
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25話. 後始末

あらすじ

『血の無き会戦』後、捕らえられたサイゼムは基地メシアの地下の拘留所へと連れて行かれた。そこで、ハリコフとサイゼムは話し始める……

基地メシアの奥深く――戦犯者拘留所内の面談室にて。

俺はサイゼムとガラス越しに向かい合っていた。諸々の事情聴取を行うために。


「サイゼム中将……いや、サイゼム。何故お前は連盟を裏切ったんだ?」

「……もともと連盟に仕えていた気はない。それに俺が元連邦軍である調べはついているんだろう? しらばっくれてんじゃねぇよ」

「分かっている。その上で聞いているんだ」

「益々分からんな。調べがついているのなら、聞く必要はないと思うが」


手錠が掛けられた両手を上げ、理解できないというジェスチャーを取るサイゼム。その手には手当てされた包帯が見て取れる。彼の発言に対し、ハリコフが問う。


「元から裏切るつもりなら、何故あれほど部下を大切にしていたんだ?」


その問いに、サイゼムは一瞬だけ固まった。だがすぐに平静を装い、飄々と言葉を返す。


「ぞんざいに扱っていたら、上の役職につけないだろう? その時が来るまでの下準備をしていただけだ」

「……捕らえたお前の部下247名は、全員がカーディアを出生地としていた。祖国を守ることよりも、1人の男に付いていこうと決めさせるほどの愛情が、『下準備』だけだと?」

「……」


サイゼムは黙り込んだ。反論のための糸口が見つからなかったのだろう。俺は続けて話す。


「それに、裏切った部下以外の兵士達も、皆お前の助命嘆願を行っていたよ。必要のない相手にさえも、情をかける意味はないはずだ」


サイゼムは大きく息を吐いた。


「……お前の言いたいことは、恐らく半分合っていて半分間違っている。さっきも言ったが、俺は最初から連盟に仕えている気はなかった。最初から連邦の"駒"になるつもりだったし、それはあのとき捕まるまで変わってない」


彼は続けて話す。


「……でもな。連盟に入って、部下や戦友ができた。くだらねぇ話で盛り上がった。お互いに背中を預けたりもした……こいつらが同じ人間だってことを思い知らされて、初めて迷いが生じたんだ」


独白は続く。過去を振り返っていくサイゼムを、俺は静かに見つめていた。


「そして、連盟――ゾリオから接触があった。そして最終的に、俺はあっちを選んだ。そんだけだ。つまらねぇ話だろう?」


自嘲気味のその声に、俺は静かに言い放つ。


「……そうだな、つまらない話だ。戦友との話題程度にしか使えないだろう」

「……あいつらは、笑ってくれるかな?」

「あぁ、それは呆れる程に」

「なら悪くない終わり方だな」

「……勘違いしているようだが、処刑する気は毛頭ないぞ。獄につないで、罪を反省してもらうからな」


退出時間のアナウンスとともに、サイゼムが看守に連れて行かれる。その間際に。


「せいぜい、頑張れよ」


そう言い残して、彼は去って行った。



◇◆◇



基地メシアから出て、大空のもとにその身を差し出す。入り口のすぐ横の壁に人影を見つける。


「面会は終わりましたか? 先輩」

「……ライアンか。そう言えばお前も助命嘆願者の1人だったな」

「はい。僕がまだ入りたての頃、彼にはとてもお世話になりましたから」


そう言うライアンの顔を見て、俺は少しだけ笑う。


「安心してくれ、最初から殺す気はない。取り敢えずは投獄だけだ」

「なら、良かったです……それと、情報局関連についての報告を持ってきました」

「聞こうか」


向き直る俺に、ライアンは人差し指と中指を立てた。重々しい雰囲気で話し始める。


「報告は二つ……一つ目は、情報局の完全な粛清に失敗しました」

「何だと!? 何故!」


あり得ないほどの怒気を放つ俺に、ライアンは目を伏せて応える。


「……申し訳ありません。大半は捕らえたのですが、一部の情報局員の戦闘力が想像以上に高く、包囲の突破を許してしまいました」

「腐っても情報局、万が一に備えて隠していたというわけか……」


握り込む手から血が滴る。政務官が、命を懸けて引き留めてくれていたというのに……!

ライアンは続けて話す。


「ただ、一度突破はされましたが執拗に追撃を行うことで、再び包囲を完成させました」

「……場所は?」

「アイオス山脈中層部に建つジーク砦です。局員は約五十名ほど、スケーロ・シッチやサン・ジュリアン・ソリテール両名を確認しております」


後は潰すだけ……ならば問題ない。次で決めるだけだ。


「分かった。本来は一ヶ月の間に粛清後の体制を整えるつもりだったが、好都合だ。上層部に作戦立案の認可を取ってきてくれ」

「分かりました。そして二つ目ですが……」

「ん? 突破と再包囲の二つのみではないのか?」


自室に戻ろうとする矢先にその言葉を聞き、俺は振り返る。そこにはまだ、人差し指を一本だけ残したライアンがいた。


「はい。死亡したとされていたサレンダ政務官の『生存』を確認しました」

「……は?」


その報告をすぐに理解することができず、まともな返事を返せなかった。政務官が、なんと?


「隠蔽されていた資料を確認した所、政務官の暗殺計画と、その"失敗"の報告を確認できました。行方は未だ不明ですが、殺されていないことは明らかです!」


その情報を聞き、俺の体は震えだす。同時に、胸が熱くなるのを感じた。だが、今はそうしている時ではない。


「報告ありがとう、ライアン。なら尚更、早いとこ粛清を終えて帰ってきてもらわないとな」

「はい! 頑張りましょう、先輩!」


ライアンの同意に頷き、俺は顔を上げる。


砕けない決意を、抱いて。

戦争をするのは、どちらも人間なのだ。


……次は、彼の幕間を書こうか。一番やりやすいかもな。

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