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【独り立つ】  作者: 春の嵐
二章.鳥籠
26/29

幕間:欠乏 【アキラ】

アキラにまつわる話だ。


補足:ファリオン力自慢大会…ファミナスで行われる4年に

              1回の力自慢大会。詳しく

              は幕間:星空を参照

俺は貴族の生まれだ。貴族といっても名ばかりで、この時代では実権なんて何も持たない出涸らしのような家だ。

両親はそんな現状を変えようと必死だった。残りカスのようなコネを用いて、財政に干渉しようとしたり。そのためには実の息子を利用しようとする程に。どうやら彼らは俺を政治家にならせて、王政復古を行わせようとしたみたいだ。

つくづく滑稽だと今でも思う。民主主義のこの国で、懐古主義の奴が選ばれるわけないだろうに。


ただ、「政治家になりたい」という思いは同じだった。自身の能力でこの国をどれほど発展させられるのか、知りたい。試してみたい。そこらのやつらとは違う、明確な意思()を持って。


だから俺は、両親に従うふりをした。彼らは嬉々として俺に投資してくれたよ。買いたい道具は買わせてくれたし、塾や道場にも行かせてくれた。まぁ、なぜ道場?と聞かれはしたが……

とても厳しい日程でも、未来を思えばどうということはなかった。与えられたものは全部吸収していった。自分の土台が組み立てられていくような感じがして、気分が高揚した。もっと、もっと上を目指したい。


学校では天才ともてはやされた。親に磨き上げられたおかげで容貌の人受けも良かったからか、多くの人が蛍光灯に寄ってくる蛾のように群がってきた。

彼らにプライドはないのだろうか?客観的に見て、吐き気がする。自分に自信があるなら、こうも寄ってこないだろう。

特に興味を持つわけでもなく、彼らを追い払う。即座に帰路につく。俺には夢があるんだ、邪魔をするな。

そう思考する心の片隅に、何か違和感があるのを感じた。

お前には何かが足りないぞ、と語りかけてくるように。


16歳のある日。高校の生活ーーまぁ人が群がるのは同じだがーーに慣れ始めた頃だった。その日も本を読みながら一人で帰っていた。そこで勉強中の菓子が欲しいと思って、店に入って少し経ったあと。


「おい、この袋に金を詰めろ」


強盗がきた。手には拳銃と袋が握りしめられている。店員が悲鳴を上げた。そこらの客もパニックに陥っている。

(なぜ銀行ではなくこの店なんだ!?狙うならもっと上のところだろ!)

意味がわからなかった。が、思考を切り替える。


(今はとりあえず、あの強盗を撃退しなくては……!)

そう考え、足を踏み出……せなかった。足が動かない。体も震えている。なぜだかわからない。

未来の政治家なら動くべきだろ。動けよ。うごけよ!

心のなかで喚いても、体は言うことを聞かなかった。大事なところで何もできない。自分は何のために……。

俺が恐怖に染まりきっていたとき。


「なぁ」

「あ?」

強盗の肩に、誰かが手を掛ける。刹那。

轟音(轟音)とともに、強盗の顔が、彼の拳とともに床にめり込んでいた。一瞬の出来事だった。その場にいた全員が、その状況を理解するまでにかなりの時間を要しただろう。その男を除いて。彼は受付の人のの安否を確認すると、気絶した強盗を担いで外へ出る。周りの客が騒ぎ出した。


「……なぁ、あれってマーク・ラジェガーじゃね?」

「嘘、2年前の力自慢で優勝した、あの伝説の!?」


マーク・ラジェガー(伝説の男)ファリオン力自慢大会(世界最高峰の大会)に初出場して、優勝をもぎ取った男。噂ではそのまま兵隊に上がったとかなんとか……。

彼の強さの秘訣を知りたかった。買い物なんてほっぽり出して、彼の後を追い話しかけた。


「あ、あの!」

「ん?」

彼が振り返る。即座に疑問を投げかけた。


「なぜあなたは、あの場面でもすぐに動けたのですか?」

「……? あぁ……」

彼は少し頬を掻き、続けた。


「受付の人が、あまりにもかわいそうだったもんでな」

「……へ?」

そんな理由で?あんな簡単に動けるものなのか?脳が理解を拒んでいる。

狼狽(うろた)えていると、彼はこう呟いた。


「だから"助ける覚悟"を決めた。それだけだ」


そう言って彼は(きびす)を返す。夕暮れに染まる後ろ姿が、とても様になっていた。

そうだ。自分に足りないのは"覚悟"。今までちゃんとしてきたか?思い返すと、夢だの何だの考えて、それに甘えて動くだけで、"それ"を実行する"覚悟"がなかったんじゃないのか?


"覚悟"が、欲しい。切に願った。


その日帰った俺は考えた。どうやったら手に入れられる?考えに考えて、俺は兵に志願することにした。

本来徴兵は18からだが、試験に合格すれば齢に関係なく少し高い官職で入隊することができる。

これも政治家になるための箔付けだ、なんて理由付けをして、俺は親を説得して試験を受けに行った。結果は当たり前に合格だった。

鷲のエンブレムをつけて、廊下を歩く。すると向こうから2人歩いてくるのが見える。片方はマークだった。もう1人は用事なのか、すぐに別れてしまう。マークに声をかけた。


「こんにちは」

「ん、アンタ新入りか。いや、どこかで見たことある顔だな。名前は?」

「名前、ですか? ……私の名前はーー」


トリイ・アキラ。人を守る"覚悟"を手に入れて、いつか上に立つ人物だ。

実際に実行に移せないことなぞ、この世には多々あるものだ。私もそうだった。今でも思い出せば、腕が震えてしまう。


追記:幕間の月日の記入を忘れていた。

   加えて、記入部分を二章に変えておいた。

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