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【独り立つ】  作者: 春の嵐
二章.鳥籠
21/28

17話:鍵

第一遊撃隊副隊長:アルフォン・ヤードナー:男:25歳


あらすじ

包囲を完成させた連盟軍。しかし、予想外のリエの負傷、計算にない大軍の到着により、彼らは危機に陥る。ハリコフにとって、地獄の30分が始まる……

全体を俯瞰できる場所に着き、即座にリーン中将に通信を繋ぐ。

「中将! こちらハリコフ、そちらの軍は後どれほどで着くのか!」

(ーー30分ほどで連結点に到着すると思いますが、如何しましたか?)

「申し訳ない、こちらの想定外の事態が起きた。できるだけ持ちこたえる、可能な限り速く救援に来てほしい!」

(ーー! 分かりました、20分でつかせます!)


応答の返事の後、通信を切る。そして向かってくる機械化部隊と敵援軍に交互に目をやる。

(おおよそ12000、といったところか……! 対してこちらは多くても5000……戦力差がありすぎるな……)

その数値に絶望することなく、これ以上ないほどに脳味噌を最大速度で回転させ始める。やれるかじゃない、「やる」んだ。

即座にジェームズに指示を下す。


「ジェームズ、君に1000託す。対戦車火器も持たせているから、30分持ちこたえてくれ!」

「了解しました! ご武運を!」

力強く同意し、坂を下っていく。今最も対応すべき相手は、間違いなくあの大軍であることを、俺もジェームズも理解していた。

移動する最中、敵が2つに別れるのを目撃する。


(4:1の比率……向かう先は第五師団か。援護なんてさせないと言いたげだな?)

敵の指揮官はどうしてもこの部隊(俺たち)を潰したいらしい。上等だ。返り討ちにしてやる。

指揮場に着くと、少ない味方を動員し、約2倍の敵を迎え撃つのだった……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


敵を殲滅しようと押し潰していくゾリオと、生き残るために藻掻くハリコフの間で、戦闘は苛烈を極めた。狙撃兵が肉弾戦を行い、一般兵が対戦車火器で前衛を吹き飛ばす、まさに"地獄絵図"。その中で、ハリコフはできうる限り兵士たちを死なさないように全力を尽くしていた。

彼と伝令の兵士たちのあいだで、声が激しく交差する。


「伝令! 左翼第17歩兵中隊、敵の猛攻を受け損害拡大!」

「すぐに引かせろ! 白撃隊の援護射撃を側面から加えてやれ!」

「っ伝令! 敵戦車隊が8時方向に突貫を開始!」

「誘引しろ! 対戦車火器で叩き潰す!」

その合間に戦場を見やる。前線では兵士たちが死に物狂いで防衛を行っている。そのなかでも気を吐いていたのは、シャルル率いる白撃隊だった。戦場を縦横無尽に駆け続け、味方の崩壊を防いでくれている。

リエの隊員たちも、その身を守る粒子は消えているにも関わらず戦線の維持を行い続けていた。


(あと、10分……!)

時計を確認し、その長さに歯噛みする。綱渡りの状況を、あともう一度しなければならないなんて……

そして、状況はさらに悪化する。


ーーゾリオは、不敵に笑っていた。

(やるな、少し侮っていた。力攻めではなく、少し策を使おうか)

左右から二隊を突撃させる。一隊は1000人の別働隊、そしてもう一つはーー


復讐試合(リベンジマッチ)だ、戦姫ぃ!」


マークとアキラが突撃を開始したのだ。ゾリオの誇る必殺の鉞。先の別働隊に気を取られ、白撃隊をそちらに回してしまったハリコフは思考が停止する。

「クソッ!」

(しくじった! 急いで対応を……間に合うか……!)

ハリコフがどうしようもない状況に絶望しかけていたとき。


「それ以上味方を(なぶ)るのは止めてもらおうか!」

「おぉっと危ねぇ!」

先頭のマークに、別戦線にいたサマル少将が攻撃を仕掛けた。マークは驚きつつも即座に回避する。


「馬鹿が、隙だらけ……っ! ぐっ!」

アキラがサマルに攻撃を仕掛けようとするも、何者かの狙撃に体勢を崩される。視線の先には冷徹にアキラを見つめ、銃口から煙を吹かせるシャルルがいた。


「突然の奇襲……もしやと思い引き返してみれば、やはり罠だったか。カーディアに仇なす小蝿が……撃ち落としてくれよう」

「"白騎士"、シャルルか……相手にとって不足なし」

2人は目標を見据え直し、再び構える。レールガンと狙撃銃による狙撃合戦が始まった。


それを遠くから見つめていたハリコフは戦略をすべて捨て、再び練り直す。

(この戦闘に第五師団が無理やり加勢したということは、包囲に穴が空き、相対していた軍勢がそのままやってくる。ならば……!)

策を思いつくと同時、ジェームズに通信を飛ばす。


「ジェームズ、聞こえるか!?」

(ーーはい、聞こえております!)

「今すぐそちらに100送る。彼らを右から機械化部隊にぶつけ、奴らの進路を左に反らしてやれ!」

(ーー!? し、しかし、その先には第五師団が……)

「彼らは無理やりこちらに参戦してきたようだ。包囲に穴があいてしまったが、いい機会だ。今この場にいる敵を減らす! 包囲の外に追い出したらこちらに加勢してくれ!」

(ーー心得ました、直ちに!)

通信を切り、再び戦場を見直す。その時、彼はあることに気づいてしまった。


リエは、どこだ……?

6月7日 戦いにおいて、30分というのはあまりにも長い。それに加えて戦力差……その場のすべての者の奮戦でようやく成り立つレベルの戦いだ。彼らはよくやっていたよ。


今日は気分がいい。さらにもう一部書けそうだ。

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