12話:起死回生
あらすじ
ハリコフの指示を受け、2つの遊撃隊は前線に到着した。紅白の逆襲が連邦を襲う。
一方、数刻前に西部方面軍司令部にてハリコフは将校たちに作戦説明を行っていた。
「まずはこの地図をご覧ください」
将校の一人が地図を広げ、俺とジェームズは身を乗り出して地図に視線を落とした。
「現在判明している、敵味方の師団配置です」
広げられた地図の上、鈍く光る「機械化師団」の駒が、山脈に沿って深く、深く這いずるように進軍していた。その先にあるのは、孤立無援の我が第五師団。完全な包囲網が、着々と形成されつつあった。
将校たちから重苦しい空気が放たれる。事態の深刻さを考えると当然のことだった。だがその空気を切り裂くように俺は声を発した。
「分かりました。第三師団の状態は如何様でしょうか」
その声に驚く将校たちにかわり、リーン中将が長い髪をかき分けて説明を始める。
「概ね良好です。率先して治療させたので万全の状態を維持しています。……肝心の弾薬は不足していますが、ね」
「弾薬に関しては、支援兵とともに運んできたため問題ありません」
支援兵の指揮を行っていたジェームズが淡々と告げる。それはありがたいです、とリーン中将は続けた。
報告の後、ソート西部総司令がこちらを見据えて質問する。
「それで、今日君たちに来てもらったのはこの未曾有の危機に対処する防衛策を共に考えてもらう為なのだが、何か案はあるのか?」
その言葉に微笑しながら、俺は口を開く。
「えぇ、ありますよ。この状況を逆転させる、起死回生の防衛策……いや、"反撃作戦"が」
「何だと、反撃!? それを行える程の力は、今の我らにはないぞ!」
第二師団を率いるサイゼム中将が声を荒げてそう喚く。事実、敵の機械化師団の猛攻をくらった友軍は、無理に反撃すれば前線が崩壊する状態にまで弱体化していた。
このままならただ防衛するしか道はないだろう。"この部隊だけ"なら。
「大丈夫です。既に反撃作戦を行う地点に両遊撃隊を派遣しています」
「!」
その場の全員が、息を呑む。なかには持っていたペンを落とす者もいた。目の前の参謀の手腕は、神にも匹敵するのではないか、と。
「さすが"神童"、手際がいいな」
総司令が感嘆の声を漏らす。しかし未だにその目には一抹の不安が宿っていた。それを気にすることなく、俺は将校たちに詳しい説明を始める。
「まず、リーン中将は第三師団を率いて、敵臨時司令部に向かってこのように攻撃を行ってください。くれぐれも敵の誘引のみとするように」
「分かりました。ですがそれだけではありませんよね?」
「はい。できれば即座に転進することができるように軍の展開をお願いします。そしてその間にサイゼム中将には第二師団の回復を頼みたいです」
「任せておけ!」
サイゼム中将が肩を回して力強く頷く。
「その後、反撃を崩すために別戦線……中間に位置する敵機械化師団が対応に来ると思います。その隙をつき……」
俺は言葉に合わせて駒を動かし、指をなぞる
「遊撃隊を突貫させます。前方の第三師団と遊撃隊で相手を挟み込み、敵を大混乱に陥れます。その間の戦線維持は、第五師団に要請させておきました」
将校たちは声を押し殺して作戦の意図を理解し始める。場は静まり返り、俺の声だけが響く。
「そして敵機械化師団を一気に分断し、包囲。その数は約20000に上るかと」
囲まれた敵軍の駒を指し、そう締めくくる。
「成功すれば、敵の機械化師団の約2割をこの場で殲滅できる……!」
サイゼム中将を筆頭に、場がざわめき始める。俺は人指し指を口に当てて、説明を再開する。
「この作戦に必要なのは、迅速な行動と判断です。敵にいかにしてこちらの作戦を悟らせないが鍵となります」
「なるほど、"転進"、というのは第三師団で戦線を埋めさせるということか」
総司令が顎に手をやって呟く。それに頷く俺を見て、全員が納得の表情を作った。もう彼らに異論はないようだ。
俺は体を上げる。その場にいるすべての将校たちの、決意に満ちた顔を確認する。
(絶対に成功させてみせる。戦友と、リエを守るために)
決意を固く持って、宣言した。
「作戦、開始といきましょう!」
6月2日 まずいな、地図を載せることに夢中になりすぎて、余白がほとんどないではないか。これからは少し自省するとしようか。




