10話:白騎士
異能調停部副長:ニム・アラメイン:男:41歳
あらすじ
無能力の可能性が高いとみなされたハリコフは、その無力感に苦しむ。しかしミハイル元帥との話で自分にできることを再確認し、守りたいものを守るためにどうやっても抗うことを決めたのであった。
現在はその数日後、調査ではなく作戦会議の役割を果たす日である。
作戦会議室で、俺と複数の参謀部員は前線の対応に取り組んでいた。長官は別件で動いてるため、今は俺が代理でまとめている。
「それで、ピューリ川の防衛態勢はどうなっている?」
眼下の机に広がる地図に指を落とし、俺は問う。
「初戦闘以降、下流地域はトーマス北部総司令のもと防衛と要塞化が進められております」
報告書をまとめ、部下の1人が地図を指差して応える。
彼の報告によれば、初戦闘後複数回突撃が行われたものの、守備隊の増設に加え第二遊撃隊の参戦により全て退けたようだ。やはりあの男の隊は強力だな。
「戦闘の沈静化を受けて、遊撃隊は補給を受けるために基地メシアに撤退しました」
「なお、砲兵の攻撃が定期的に続けられており、川岸に建設はできておりません」
部下はそうやって報告を締めくくった。下流地域は問題なさそうだった。だがーー
「続けて中流に移りますが、こちらは厳しい状態と言わざるを得ません。川幅が狭いため、一般兵に加え戦車や装甲車が渡河できる状況にあり攻撃が激しく、苦戦を強いられています」
「詳しく教えてくれ」
俺の言葉に、現地から戻ってきた部下の1人が悔しそうな顔をして口を開く。
「前衛の突撃と敵空軍の対地攻撃により戦線が一度突破されました。リンドウ山脈に押し込められたサマル少将以下第五師団は山上で孤立しています、おそらく半数以上死傷しているかと……」
俺は顎に手を当てて少し考える。冷や汗が垂れるのを感じた。想像以上に深刻だ。「第五師団の物資が不足する前に、作戦を実行すること」が必須だな……。
続けて残りの師団の状況の説明を受ける。
「第二師団は死守命令を実行中、残った第三師団はリーン中将のもと再編成を行っています」
「反撃能力は残されている、と」
「はい、そのため本部から数名派遣し共に策を練ってほしいという旨を、ソート西部総司令から預かっております」
俺は目を閉じた。前線で戦う兵士の顔を思い浮かべる。彼らの命を守るためになすべきことはーー
目を開け、即座に判断を下す。
「分かった、私が向かおう。一つ作戦案もあるしな。ジェームズ、ラッタ、行けるか?」
2人の同意を確認する。
「よし、その他のものはこの後合流するケーニヒスを中心に南部の対応策と、物資補給の効率化を考えてくれ。西部に関しては私と長官が合流した際に始める。以上」
全員の敬礼を確認し、俺は2人を引き連れ部屋を出た。そして後ろにつく2人に指示を飛ばす。
「ラッタ、メシアにいる第一、第二遊撃隊にサルーディア丘陵に出発するよう伝えてくれ。彼らの力が必要となるからな」
「了解です」
「ジェームズは支援兵を100名ほど組織して合流してくれ、第二師団の回復に充てる」
「心得ました、副長」
2人はくだされた指令を果たすため別方向に駆け出した。俺も急いで現地に向かうことにしよう。運転手が待機する車に向かって走る最中に、第二遊撃隊隊長の顔が浮かび、少し足を止めてしまう。
(……あいつ苦手なんだけどなぁ……)
面倒なあの男を思い浮かべながら、俺はため息をついていた……。
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少し後、基地メシアにて。
「分かりました。すぐに向かいます」
"白騎士"シャルルは、天幕からラッタの伝令に即座に応じた。周りの部下が少しうなだれたように見えるが、気にしない。ラッタが別れを告げ車で走り去るのを見送った。
(おそらくリエちゃんのところに行くのだろうな)
そんなことを思っていると、遠くから砲撃音が聞こえる。その音のもとで、今も味方が死闘を繰り広げていると考えると、居ても立っても居られない。
「さて、アホ鳥どもに我ら"白撃隊"の力を見せてやろうかね」
振り返り、純白のマントを戦場の風にたなびかせながら、シャルル隊長は不敵に笑った。
祖国にあだなす敵を徹底的に潰すために、白騎士は彼の"愛銃"を抜く。
5月31日 当時の地図を載せてみると、中々よい仕上がりになった。当時の写真を載せてみるのもありだな。




