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独り立つ 〜残された未来へと贈る英雄譚〜  作者: ルヴィカ・フォン・ワーグナー 訳:春の嵐
メナス――『鳥籠』編
13/47

9話. 紅白交わる。出づるは藍

あらすじ

味方が敵の猛攻で危機にさらされている中、ハリコフは、両遊撃隊を招集した。ここに、ハリコフの策が始動する。

サルーディア丘陵北部にて――


すでに集まっているリエ隊、シャルル隊のもとに俺は到着した。運転手に軽く礼を言い、ドアを強く叩き閉めすぐ天幕に向かった。 

天幕に着き、勢いよく扉を開ける。


「お、きたきた」

「……!」


リエとシャルルが待機していた。各々持っている情報を交換し合っていたようだ。


「すみません、遅くなりました」

「全くだ、レディ(リエちゃん)を持たせるなんて言語道断だぞ! 参謀部員である君はそれを理解しているのか!?」

「謝っているじゃないですか! それと、今は異能対策本部所属ですよ……」


ため息をつく。俺が苦手なのはこういうところだ。この熱血貴公子(シャルル)は何かあればすぐ小言を言ってくるのだ。しかも俺限定。理由は未だに分からないが……なぜだ?


危うく思考が脱線しかけるところで、リエが仲裁(助け)に入る。


「まぁいいじゃないですかシャルルさん、私別に気にしていませんし。それよりも、今はこの先の友軍ではありませんか?」

「それもそうだね!!」


おいおい、明らかに俺のときと態度が違うぞ、と脳内で突っ込む。ふとリエを見やると愛想笑いを(ドン引き)していた。あのリエに愛想笑いをさせるとは、さすがはシャルルといったところか……


「それで? 私たちをここに派遣してきたのだ、それ相応の目的があるのだろうな?」


振り返ったシャルルが尋問してくる。その目線にめげることなく、俺は不敵に笑う。


「はい、二人の隊にしか頼めない重要な役です。それは――」



◇◆◇



時は過ぎ、包囲下の第五師団で。


「倒しても倒しても、湧いてくる……」


迫る敵兵を斬り倒し、包囲下のサマル少将は呪詛(じゅそ)を吐く。不意打ちで襲ってくる刺客を、地中から生み出した岩礁で跳ね飛ばす。


目の前には焼けた森と赤く染まった肉塊が散らばっている。どちらの軍のものかも判別つかない。かれこれ二日間はこんな戦いを続けている、限界だ。


末端の部隊に退却指示を飛ばそうとし――敵狙撃兵の集中攻撃で、戦友は爆音とともに燃え盛る炎の中へと消えていった。


「……クソッ!」


胸を埋め尽く悔しさに歯噛みしながら、全隊に何度目かも分からない後退命令を出そうとした瞬間。


戦場を、純白で統一されたマントを背負う部隊が駆け巡る。瞬く間に、敵に対し熾烈(しれつ)な攻撃が始められた。


防御力のある前衛は烈風や爆炎で吹き飛ばされ、狙撃兵の眉間には一発の銃弾が撃ち込まれる。反撃することもままならず、敵部隊は壊走を始めた。


「あれがシャルルの"白撃隊"、間近で見るのは初めてだな……」


サマルは呆然とその光景を見届ける。いや、今はこの機会を無駄にしてはいけない。即座に生き残った兵を集め、部隊を再編成する。その最中で。


前線に爆発が起き始める。目を凝らしてみると、赤い粒子が広がっていくのを確認できた。紅いバンダナを腕に着けた兵が敵を蹴散らす様も見える。


「お嬢の隊も……まさか、両遊撃隊が加勢に来たのか!?」


死を覚悟していた部下たちの目に希望が宿る(光が戻る)のを感じる。事実、彼の心の内も高揚していた。この局面での加勢は、神の救いにも感じる。だが――


「なぜここに……」


一つの疑問が浮かび上がる。正直言ってここは死路だ。残れば帰れない地獄への道。そんなところにわざわざ貴重な遊撃隊を送るなんて……


思考を続けていると、敵軍を追い払ったのか両隊長が自分の前に現れる。シャルルが率先して挨拶をしてきた。


「サマル少将、お久しぶりです」


「あぁ。二人とも、救援感謝する。このままではこの部隊は全滅していたところだっただろう」

感謝の意を述べる。だが、それはそれとして、だ。


「しかし、なぜこちらの加勢に? 殲滅(せんめつ)されかけて兵の少ない我らよりも、主戦線に加勢するのが得策と思っていたのだが……」


率直な疑問をぶつけると、合流したリエが説明をしだす。


「救援も主要目的の一つなのですけど、ここに来た最大の理由は反撃作戦のためなのです」

「反撃作戦? ここからか?」

「はい、ハリコフの案なのですけど。そしてあなたがたはその"鍵"となる役割を担ってもらいます」


その言葉を聞き、胸が高鳴る。


(やられてばかりで絶望しかけていたが、ようやく反撃が始まるのか。それも我らを起点に!)


武者震いするサマルを見て、シャルルは楽しそうに呟いた。


「さて、鷲狩りの開始といこうか」

最近は筆記用具も手頃に買えるようになった……復興が進んできたな。

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