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【独り立つ】  作者: 春の嵐
一章.カオス
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幕間:光 【ハリコフ】

ハリコフから聞いた話だ

俺は、カーディア共和国首都、リンゲージの地に生まれた。父は陸軍大将だった。訓練の見学に連れて行かれたとき、一度だけ見た「兵隊の父」の姿を、幼気ながらかっこいいと考えたのを覚えている。

いつかは、父と並んでーー


7歳の頃、第2次世界大戦を契機に突如ファミナス国に攻め込まれた祖国は、激闘の末に敗北した。

その中で父も戦死した。

世界は、俺から夢と父、大切なものを奪っていった。


俺は、周りのようにその事実を受け入れられなかった。なぜ、父が死ななければならなかったのか。

その憎悪の対象は、ファミナス国ーーファミナス=リトヴィルド連邦ーーへと向けられた。


学校が再建されてから、俺は狂ったように勉学に努めた。残された母を守り養うためーーなんて聞こえのいい理由は持てなかった。復讐しか考えられなかった。

傍から見れば、俺は視野の狭窄(きょうさく)が激しい、何も知らない子供だったろう。


いつしか人は、俺のことを神童と呼ぶようになった。滑稽なことだ。自分は知っている。「神童」なんて二つ名は、理解のできない子供につけられるものだと。


母が亡くなった。父の死が、もともと抱えていた病を促進させてしまっていたらしい。死に際に母は俺の頭を撫でてこう言った。

「自由に生きなさい、私たちのことは忘れていいから……幸せになりなさい」

こう、言い残して。


俺は自分がわからなくなった。自分は何のために生きているのだろう。何が幸せなのかわからなくなった。ただの抜け殻に、憎悪のみが溜まる。


俺のことを褒めてくれる人は、腐るほどいるけれど。

愛してくれる人は、もういない。


その日その日を無機質に生きていると、とある男が話しかけてきた。彼はルヴィカと名乗った。(いわ)く、レジスタンスに加入してほしいとのこと。即座に快諾した。復讐を果たして死ぬのに、ちょうどいいと思ったからだ。光の差し込まない路地裏でのことだった。

そして配属された先、相方となったリエと出会って、俺は言葉を失った。


あまりにも、(まぶ)しすぎたから。


彼女はよく笑った。誰とでも明るく接してくれる。真っ黒に塗りつぶされた醜い心を持つ、こんな俺にも。

最初彼女に話しかけられたとき、俺は目をそらしてしまった。異性に慣れてないとか、人と話すことがあまりなかったとかはあるが、その姿があまりにも(まばゆ)くて、直視することができなかった、というのが1番の理由だ。

そんな対応をしても何度も話しかけてくるため、段々と慣れてきた。自分の齢とか、出身地のことを話してみる。なんと、齢・出身地ともに同じだった。

「え、君もリンゲージ出身?」

「嘘、じゃああの時計塔の近くの……」

そこからは会話がトントン拍子に進んだ。楽しい時間だった。

会話中、俺と君は学校であったことがあるのかもな、と冗談交じりに言ってみた。すると彼女は少し目を伏せてこう言った。

「私、学校に行ったことないんだ。少し羨ましいな」


そこから、彼女は自分の身の上話を始めた。好きだった男の子の話、レジスタンスに入った経緯、初めて人を殺した瞬間。大層なことでもないんだけどね、と述べて彼女は話を締めくくる。

その話を聞いて愕然(がくぜん)とした。天使のように振る舞う彼女の背中には、こんなに壮絶な過去がのしかかっていたなんて。

自己嫌悪に陥りそうな自分に、彼女は告げる。

「だからさ、初めてのお友達になってよ!」


その瞬間、自分が生まれた理由はこれなのだ、と理解した。同時に、彼女といると幸せになる自分がいることにも気がつく。


母の遺言を、ようやく果たせそうな気がした。


そして今に至る。

俺には新しく夢ができた。朗らかに笑う目の前の破天荒な親友と、彼女が望む祖国を守り続けること。

いつか彼女が危険にさらされたとき、俺はその身をもって盾となろう。


澄み渡る青空を見上げ、もう見えない父に誓った。

声が、聞こえた気がした。

子供にこんな思いをさせていたとは、大人として不甲斐ないな……。次の世代が笑って暮らせることを、祈ろうか。

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