幕間:ともだち 【リエ】
リエから聞いた話だ。
補足
おじいちゃん=ミハイル元帥
わたしは小さいころのことをよく覚えていない。物心がついたときには既に、わたしのことを育てていたのはおじいちゃんだった。だから、両親の顔は思い出せなかった。
普通の子が学校に通う年頃のとき、わたしは学校に通うことはできなかった。カーディア共和国が併合されて1年経ち、既にある程度のインフラは復興していたにも関わらず。あとから知ったことだが、私の血縁はファミナスにとって忌み嫌われるものだったらしい。
なんで行くことができないの?とわたしは尋ねた。
危ないからだ。とおじいちゃんは答えた。
なんであぶないの?とわたしは聞いた。
敵兵がうろついているからだ。とおじいちゃんは続ける。
ほかの子は学こうに行ってるよ。とわたしは伝える。
君は、例外なんだ。とおじいちゃんは告げた。
ねぇ、おじいちゃん……。
ともだちが、ほしいよ。
わたしの言葉を聞いたおじいちゃんは、何もいわずに足早に部屋を出た。私は独りになった。ずっと独り。
齢が二桁になったころ、突然勉強をさせられた。ずっと独りで遊ぶことしかしてこなかったわたしは混乱した。家の中でやる勉強は、一つも楽しくなかった。座学が嫌いになったのもこの頃だ。
始めて、気になる人ができた。隣の家の、男の子。少し前に引っ越してきた家庭だった。家の前で転んだわたしを、助けてくれた。
うれしくて、そのことをおじいちゃんに話した。おじいちゃんは驚いて、少し悲しい顔をした。そして、
「その子とは、もう話さないほうがいい」
そう、言った。
なんでなのか分からなかった。辛かった。
その日は布団に蹲って泣いていたのを覚えている。
あとから知ったけど、その家庭はファミナスの人たちだったらしい。そして、当時ファミナスはカーディアに対して差別的だった。私が彼と最後にあったとき、彼は憲兵によって倒れる骸と化していた。
17歳のとき、レジスタンスに加入した。おじいちゃんにはさんざん止められた。
済まなかった、だからお前までその道に行かないでくれ、なんてよくわからないことも言われたけれど。
我慢するのはもうごめんだ。
組織の人たちは私にとても優しくしてくれた。多分リーダーであるルヴィカの姪だから、っていうのが理由だろうけど。それでも居心地が良かった。初めて自分が自分でいられる気がした。
初めて人を殺した。連邦軍の駐屯基地に潜入していた時だ。何か変な感覚がした。すぐに周りを見渡すと、仲間を狙っていたから、咄嗟に銃を抜き打った。敵兵が崩れ落ちる。引き金を引いた指が震える。私の胸にどうしようもない罪悪感が広がった。潜伏している地下に逃げ延びたあと、私は吐いてしまった。私は大罪人だ。天国に行くことはないだろうな。
その次の日、助けた仲間がお礼を言いに来た。そしてこう言った。
笑っているあなたが好きだと。
自分のしたことが、報われたような気がした。
その後、捕虜になった彼の遺体を見てーーもう、敵を殺すことに何も感じなかった。
私は仲間に話しかけるようになった。よく知らないままお別れするのはもう嫌だったから。皆の意外な一面も知った。話すのが楽しかった。その姿を見た彼らはいつしか私は、皆から"お嬢"と呼んでくれるになった。
そして1年前、あいつがやってきた。彼は私の新しい相方として配属された。早速話しかけてみるけども、最初はかなりよそよそしかった。それでも根気強く話しかけていると、諦めがついたのか、話に付き合ってくれるようになった。すると、まさかの齢、出身地が一緒だったことが分かった。さすがに私も彼も驚いていた。そして笑った。そこから段々と意気投合するようになった。
人生で初めて、友達ができたんだ。
ある日、ハリコフがプレゼントをしてきた。私は特に気にしたことなかったけど、その日は私の誕生日だったらしい。確認すると、赤いマフラーだった。私に似合うと思って買ってきた、だそうだ。
それ以来、私はどこでもマフラーをつけるようになった。
……私は人殺しだ。天国に行くことはないと思う。
けど、後悔はない。大切なものを守って死ねるなら、無間地獄だっていってやる。
だから私は戦い続ける。私が私であるために。
もっと、支えてやりたかった……。
追記:風邪を引いてしまった……。
体調管理には気をつけねば。




