六話 睡眠は悪魔
「魔界にはね、たくさんの種類の悪魔がいるの。魔法の詠唱っていうのは、この世に一時的に悪魔を顕現させて、自分の魔力と引き換えに魔術を放つ契約なのよ。今回で言うと、悪魔の『ブルーメ』を顕現させて、少しの魔力と引き換えに花を出現させたの」
エリカは少し自慢げな顔で語ってくれた。
悪魔の名 ➔ 呪文 ➔ 詠唱者の名、の順で詠唱する。そして魔力の量が多ければ多いほど、展開される魔法陣も大きくなり、より位の高い悪魔を顕現させることも可能らしい。ちなみにブルーメは、格がひくい。
「じゃあ、一度復唱してみて。『悪魔【ブルーメ】——土と恵みを司る者よ、その威光を示し一輪の華を咲かせよ。』」
T大学に受かると周りから言われていた俺の頭脳が、一度聞いた言葉を忘れるはずがなかった。
「悪魔【ブルーメ】——土と恵みを司る者よ、その威光を示し一輪の華を咲かせよ。名は、峰小輔!」
すると、手のひらから鮮やかな魔法陣が展開され、一輪の大きな花が咲き誇った。
初めての魔法で一発成功だ。気のせいか、魔法陣もエリカのより一回り大きかった気がする。
「……なんか、しょぼくれてね? エリカ」
「あれ? エリカ、どうしたの?」
エリカは自分の指を所在なさげにこねくり回しながら、ぽつりと呟いた。
「だって……私より上手に魔法を使って、しかも一発でこんなに綺麗な花を咲かせているのを見たら……なんだか私、自分が情けなくなっちゃって……」
なんかエリカに申し訳ないな。俺もこういう経験は初めてだから、気の利いた接客やフォローなんて上手くできない。
そうこうしているうちに、日が暮れてきた。
この世界の時間概念は、なぜか元の世界の時計とまったく同じだった。これが意外にも一番驚いた点だ。先人が普及させたのか、それとも他の召喚者の仕業なのかは分からないが、24時間365日制がそのまま採用されていた。
太陽が沈みかけ、室内が茜色に照らされた頃、部屋のドアがノックされた。
「どうぞ」と返事をすると、ドアが開き、エリカを治療室まで一緒に運んでくれた執事と、あのダサい仮面をつけたカイロ騎士団長が入ってきた。
カイロ騎士団長は、明日についての説明と、城内の案内を直々にしてくれるらしい。横を見ると、エリカも執事から何か指示を受けていた。
「じゃあエリカ、また明日な」
俺が別れを告げると、エリカはパッと表情を和らげ、
「はい! 手伝ってくださる約束、忘れないでくださいね」
と、太陽のような笑顔で答えてくれた。
(……待てよ。このまま俺が軍に組み込まれたら、エリカと自由に会えなくなるんじゃないか?)
エリカとの約束もあるし、なんとか軍に拘束されずに動けるよう立ち回りたい。俺はカイロの話を聞きつつ、上手く交渉できないかと頭を巡らせながら治療室を後にした。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!初めての魔法を一発で成功させた小輔ですが、エリカの健気なリアクションもあって、二人の距離が少しずつ縮まってきた気がします。もし「面白かった!」「エリカが可愛い!」「続きが気になる!」と思っていただけたら、ページ下部の【ポイント評価(★★★★★)】や【ブックマーク登録】をして応援していただくと、今後の執筆の大きな励みになります!




