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三十八話 睡眠は再会

昨夜の「混浴騒動」とリゼからの強烈なビンタのおかげで、俺の覚醒状態は完璧に維持されていた。目が冴え渡りすぎてもはやギンギンだ。オール成功への道は確実に拓けている。

昼過ぎ、俺とリゼは約束していた街の賑やかな酒場へと足を運んだ。ドアを押し開けると、雑多な喧騒と麦酒の香りの奥に、見知った二人の顔があった。太川と低須だ。

「おう、小輔ぇ! 無事だったか、兄弟! ガハハッ!」

豪快な笑顔で手を振ってきたのは太川だ。相変わらず一見強面だが、どこか親しみやすく、語り口に独自の熱量と魂が宿っている。

「小輔くん、無事で何よりだよ。……まあ、僕の医学的見地から言わせてもらえば、君のその目の下の隈はちょっと感心できないけどね」

隣で腕を組み、知的な眼鏡の奥の目が、相変わらずマイペースに光っている。

「二人とも! 無事だったんだね!」

リゼが嬉しそうに席へ駆け寄り、俺たちはテーブルを囲んで冷えた麦酒やジュースで乾杯した。

「よしっ! それじゃあお互い、この一ヶ月で集めた『資金調達競争』の結果発表といこうぜ!」

俺が切り出すと、太川がテーブルをドンと叩いて身を乗り出した。

「オイオイオイ、待て待て待て! まず俺から言わせてくれよ! 俺はこの一ヶ月間、とにかく自分の足と汗を使いまくって泥臭く金を稼ぎ出したわけ! わかる? どんなに小さなお願いだろうが、身体を張って信用を積み重ねてさ、着実にマネーを回収してきたんだよ! マジで言わせてもらうけど、俺のこの情熱と稼ぎへの執着は誰にも負けてねえぜ! マジで!」

熱弁する太川の語り口には、熱い哲学と圧倒的な説得力が漲っていた。

「ふむ、太川くんは相変わらずパワフルだね」

低須は静かに頷き、眼鏡のポジションをクイッと直しながら語り始めた。

「僕の方はね、もっと構造的なアプローチ……言うなれば高利回りなビジネスモデルの構築に注力したんだ。需要と供給のバランスを分析して、最小限のリスクで確実に利益を出す仕組みを作ったんだよ。結論から言うと、すごく効率的に資金を集めることができたんだね」

淡々としつつも説得力抜群の解説に、リゼが「なんかよく分からないけど凄そう……!」と目を丸くしている。

「で、肝心順位だが……まずは俺から提示するぜ」

俺がこの一ヶ月、トーナメントの賞金や賭け金などもろもろを合わせて稼ぎ出した金貨の山を提示すると、二人は目を丸くした。文句なしの第1位だ。

「マジかよ小輔ぇ!? お前、一人でそんな凄え金額稼いだのかよ! マジで凄えな! 正直めちゃくちゃ悔しいけど、完敗だわ!」

太川は頭を抱えつつも、清々しい笑顔で俺の肩を叩く。手堅く泥臭く稼ぎ出した太川が、堂々の第2位。

「ふむ……僕のビジネスも利益率はすごく高かったんだけど、小輔くんの爆発力には届かなかったか。僕が第3位だね。でもまあ、市場調査のデータとしては非常に面白い結果が得られたから満足だよ」

低須も納得したように頷いた。

「ちなみに小輔、お前は資金だけじゃなくて地下の戦いでも優勝したって噂を聞いたぞ! 一体どんな手を使ったんだよ?」

太川に尋ねられ、俺はフッと不敵な笑みを浮かべた。

「俺か? 俺は……『睡眠時間を削って魔力を20倍にする限界突破』と『短剣一撃で敵を空間ごと消去する無詠唱魔王魔法』で優勝した」

「……は?」

「……えっと、小輔くん。それは僕の専門領域から見ても、ちょっと医学的にツッコミどころが多すぎるんだけど……『徹夜で魔力20倍』ってどういうロジックなんだい?」

太川は開いた口が塞がらず、低須は理路整然としたツッコミを入れようと眉をひそめた。

「説明すると長くなるんだが……とにかく俺は今、明日の0時まで絶対に寝ちゃいけない『死の不眠サバイバル』の真っ最中なんだよ!」二人は驚いたが後で見せろよと言ってあまり深く聞いてこなかった。

資金調達バトルも終わり、俺たちの次なる目的は定まった。次に向かうはメトロポリス王国。

エリカのため、そしてクイヤの抱える真の秘密を暴き出すためだ。運良く貿易船に同乗させてもらえる手筈も整い、明日にはこのチバ王国を出港することが決まった。

旅立ちを明日に控え、俺たちはそれぞれこの街に最後のお別れをすることにした。

低須は静かな足取りで孤児院の裏手へと向かい、冷たい風が吹き抜けるクララの墓前でそっと静寂に身を委ねていた。眼鏡の奥の瞳を伏せ、淡々と、けれど誰よりも深く彼女に別れを告げている背中がそこにあった。

一方の太川は、この一ヶ月間汗を流し続けた職場へと足を運んでいた。

「おう、兄弟たち! 今まで世話になったな! 俺は次のステージへ行くけどさ、お前らも自分を信じて泥臭く前に進めよ! マジで感謝してるぜ!」

情熱溢れる咆哮とハグで、荒くれ者の仲間たちと熱い別れの握手を交わしていた。

俺はもうあの地下の大会に関わらないようにひっそりと孤児院で0時になるのを待った。時計が0時を過ぎると安心が押し寄せてきた。一応街の時計や他の時計を確認して熟睡をした。それでも三十分しか寝れないんだけどね。

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