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ベータだった俺が後天性オメガになったら、幼馴染アルファがもっと過保護になりました  作者: 一ノ瀬麻紀


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18/42

18 信じている

 とうとう明日は、(しゅう)と遊びに出かける日だ。普段から大学周辺は柊と二人で出かけることはあっても、大学エリアから離れることはなかった。久しぶりの遠出って感じで、ワクワクする。


 風呂上がりにスマホを見ると、長々と泰雅(たいが)からメッセージが届いていた。泰雅は口数は少ないけど、文字で送ってくるメッセージは結構長いんだ。女子かよ。


「なになに。……明日の目的地、時間……行動予定、全部送れってか」


 はぁ……と、俺は大きなため息をついた。

 大学周辺はオメガの保護に力を入れている地域だし、泰雅たちの目が届きやすい場所だ。けど俺らが明日行こうとしている場所は、電車で一時間ほど先にある街。だから、泰雅が心配するのは無理もない。


 そこに新しくできた『オメガ専門ショップ』に行く予定になっている。でもそれは表向きの理由で、実は柊から龍星への、誕生日のサプライズプレゼントを買うためなんだ。


 明日の目的地と、乗る電車の時間と、お昼はまだどこで食べるか決めてなくて、駅周辺の商店街あたりのつもりでいる。帰りの電車の予定も書いて、メッセージを送信した。


 その直後にすぐ既読がつき、スマホから呼び出し音が流れた。


「もしもし?」

『今大丈夫か?』

「大丈夫、お風呂を出て後は寝るだけ」

『明日は、本当に気をつけるんだぞ? オメガへの理解があるところばかりじゃないんだからな? 人の少ない場所へは行くなよ? 何かあったら大声で呼ぶんだぞ? GPSもちゃんとオンにしてるよな? ……ああ、やっぱりついて行っちゃダメか?』


 泰雅にしては珍しく途切れなく喋るから、俺は黙ってずっと聞いてみた。そしたら最後は、なんか情けないことを言い出した。


「ダメに決まってるだろ。ちゃんと話をして、俺は泰雅から許可をもらったんだ」

『それはもちろんわかってる。圭太(けいた)の意思を尊重したいと思ってるし、信じている。だけど……』

「何度も言うけど、今回は俺の友達柊のためでもあるんだ。過去に何があったかは聞かないけど、いつも周囲を気にしていた柊が、俺となら勇気を出して遠出をしてみたいって言ったんだ。龍星のために、プレゼントを準備したいって希望、叶えてやりたいだろ?」


 こんなやり取りは、出かけることが決まってから何度かした。わかっている。泰雅は俺を信用していないわけじゃない、ただ単に心配をしてくれているんだ。

 それでも、俺はただ守られているだけじゃ嫌なんだ。泰雅と肩を並べて隣を歩きたいんだ。


「でもさ、泰雅。俺、本当にこの大学を選んでよかったって思ってるんだ。泰雅が提案してくれた時、正直ショックも受けた。オメガになったら、自分の夢さえ諦めなきゃいけないのかって。……けどそれは違った。道は変更されても、俺が俺らしく進む道はいくらでもある。この大学に来たことで、また選択肢が増えたんだって思えるんだ。……だからさ、心配なのはわかるけど、見守ってて欲しいんだ」


 スマホの向こうで黙って話を聞いてくれた泰雅が、小さく息を吐くのを感じた。


『圭太、ビデオ通話に切り替えてくれないか?』

「ん? ああ、オッケー」


 俺は、ビデオ通話をオンにした。スマホの画面に、少し困ったような顔をした泰雅が映っていた。


『俺は、圭太のことを信じている。けど、心配してしまうのもわかってほしい』

「わかってる。泰雅は昔からそうだもんな」

『いつもより、GPSで居場所の確認を頻繁にさせてもらうし、出来れば柊くんには悪いが、まめにメッセージでもいいから連絡が欲しい』

「了解。なるべくまめに連絡するよ。柊だって、龍星に連絡したいだろうし。……それに、このネックガードいいやつなんだろ? こういう時こそ、その性能発揮させないとな。あ、念のために、スマホの位置情報共有設定もしておくか」


 俺は、テーブルの上に置いてあるネックガードをスマホ画面に映すと、ニヤッと笑った。


『……柊くんとの外出、楽しんでこいよ』

「おうっ」


 本当はもっと色々言いたいことがあるんだと思う。それでも泰雅は、もうそれ以上言わずに、黙って送り出してくれるんだ。

 アルファは独占欲が強くて、横暴な人も多いと聞く。泰雅も、俺に対して独占欲が強いのかな? って思う時はあるけど、でもすごく優しいし、俺の気持ちもちゃんと聞いて尊重しようとしてくれる。


 そんな泰雅だから、俺は(つがい)になりたいと思ったし、この先も一生そばにいたいと思ったんだ。


「泰雅、俺を信じてくれてありがとう」

『ああ、いつでも信じている』

「俺も、泰雅のこと信じてるから」

『大丈夫だ。ついて行ったりしない』

「そこまでは言ってないけど、やりそうだってちょっと思っちゃった」

『やるなら、見つからないようにするさ』

「ははは! 見つからないように頼むよ。……お土産買ってくるからな」

『お土産話も楽しみにしてる』


 電話を切るのが惜しくて、なんとなく会話を引き延ばしてしまう。


「そろそろ……寝ないとな」

『そうだな』

「泰雅は、今実家にはいないんだっけ?」

『ああ、親父と一緒に県外に来ている』

「そっか、大変だな。親父さんにもよろしく言っといて。今度みんなで出かけましょうって」

『そうだな。久しぶりに両家族で出かけたいな』

「いいね。計画するか。……じゃあ、切るか」

『明日、無茶はするなよ』

「わかってるって」

『じゃあ、おやすみ』

「おやすみ」


 俺たちは、名残惜しい気持ちに区切りをつけ、通話を終了した。

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