05-08.再会と和解と決着と
「驚きましたわ。まさか魔王が直々にいらっしゃるなんて」
落ち着いた女性なのだわ。これが噂の王妃様なのだわ?
王子と共謀してトリスティアを追放した元男爵令嬢?
もちろん中身が違うことは知っているのだわ。
「会談の場を設けて頂き感謝申し上げるのだわ」
「これで私の立場は益々悪くなることでしょう」
気安い方なのだわ。確かにこれは貴族らしくないのだわ。
「失礼。余計なことを申しました」
「かしこまる必要はないのだわ。人族と魔族は敵対関係にあるのだわ。それにあなたの境遇も理解しているのだわ。たかだか一年で随分と頑張っているそうなのだわ」
「……そっか。あなたが……道理で人の姿を」
あら?
「……ぐす」
あらあら?
「……おだがい……ぐろうじまじだね」
めっちゃ泣いてるのだわ。
あと誤解されているみたいなのだわ。
「……いえ……ずび……あなたを苦労させたのはわだじでじだ……申し訳ございません!」
今度は深々と頭を下げた。
「違うのだわ。何もかも間違っているのだわ」
わたくしは席を立ち、若き王妃を抱き締めた。
彼女を守る者たちが、わたくしの行動を咎めることは無かった。
「転生者はわたくしではないのだわ。そしてトリスティアを追い出したのは今のあなたではないのだわ」
「……う、うわぁぁぁぁぁああん!! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!! 私は!!」
「大丈夫なのだわ。よく頑張ったのだわ。本当にあなたは頑張ったのだわ。わたくしはそれを知っているのだわ」
もう一人の転生者を誰より近くで見てきたのだから。
----------------------
「なんでこうなったん?」
「ナズナ。目覚めたのですね」
「なんでティアが女の子抱いてるの? 浮気?」
「よくあの光景を見てそんな感想が出てくるものだな」
まあうん。ごめんなさい。茶化すことじゃないよね。
「それであの子は?」
「例の男爵令嬢だそうですわ」
……なる……ほど?
「記憶が無いってことは、トリスティアが何かやったんだよね?」
「我々をこの地へ導いたのです」
「目的は?」
「『救う』とだけ」
「トリスティアが泣かせたの?」
「何もしていません」
「……何がしたかったの?」
「後は我々に任せるという意思表示かと」
「……本当にやりたい放題だよね」
『……うっさいな』
うわっ!? 何今の!? 頭の中に直接声が!?
『……後任せる』
トリスティアなの!? デレたの!?
『……デレてない』
デレたんだ!
『……デレてない』
やったぜ!
『……デレてない』
ねえねえ♪ トリスティア♪
『……うるさい』
仲良くしようぜ♪ 話したいことがいっぱいあるんだよ♪
『……必要ない……全部知ってる』
私は何も知らないもん♪ 教えて♪ トリスティア♪
『……うるさい』
もう♪ そんなことばっかり♪
『……』
大丈夫♪ 仲良くなれるよ♪ 友達に……ううん♪ 家族になろう♪ トリスティア♪
『……』
ね♪ 良いでしょ♪ トリスティア♪
『……善処する』
やったぜ♪ デレた♪
『……デレてない!』
あはは♪ ごめんごめん♪ もう言わない♪
『……そうしろ……もう話しかけるな……疲れる』
なら最後に一つだけ。
許してあげるの?
『……任せる』
そっか♪ ありがとう♪
----------------------
「七草 菜沙です♪ よろ♪」
「あ、うん。はい。私は……ティアレアでいいわ」
「なんでさ。そこは前世の名前を名乗り合う場面でしょ」
「ケジメがついていないもの」
「気にしぃだなぁ。けど困るよ。私のティアはもういるからさ。それに私の内に眠るトリスティアだって、ティアレアと仲良くしたくはないだろうしさ」
「……菜乃花」
「ナノカちゃん♪ 可愛い名前だね♪ 苗字は♪」
「……清白。清白 菜乃花」
「おっけ~♪ ナノカちゃん♪ 友達になろうぜ♪ それともナノカちゃんもティアティアハーレムに入っちゃう?」
「なによそれ。ナズナはハーレムなんか作ってたの?」
「そうなの♪ しかもね♪ み~んな名前にティアって入ってるの♪ おかしいでしょ♪ 面白いでしょ♪」
ティア、トリスティア、クラウディア、ユースティキア、モルレティア♪ そしてティアレア♪ 完璧だね♪ アルバお姉ちゃんにもティアって付けてもらおっか♪
『……なんで私まで』
逃さんぜよ♪
「結局ティアを名乗らせるの?」
「ううん♪ それじゃあ区別つかないもん♪」
「あはは♪ なによそれ♪」
よしよし♪ 元気出てきたね♪
まだ目が赤いけど。
「ナノカちゃん。この国滅びるよ」
「急ねぇ……もちろん知ってるわ。なんなら今だって」
ドタバタと部屋の外から音が聞こえてくる。
「ほら。言わんこっちゃない」
バタン!
扉が大きく開かれて、大勢の男たちが入ってきた。
「ティア! これはどういうことなんだい!?」
どこか情けない雰囲気を纏った金髪の優男が声を荒げた。
「君は本当に魔族と通じていたのかい!?」
白々しい。これだけハッキリと武器を向けてきておいて。
「ティアちゃんズ! アッセンブル!!」
てことで♪ あとよろしく♪ トリス♪
『……なんで私まで』
あれってトリスを振った王子様でしょ? 今はもう王様なのかもだけど。どうせなら自分で叩きのめしたら?
『……しかたない』
ふふ♪ トリスもケジメが必要だもんね♪
『……戦えないナズナの代わり。私の意思じゃない』
私に魔力をくれたら代わりに戦ってあげるよ♪
『……ナズナにはまだ早い』
そっか♪ なら頑張って♪
「かかれ~♪」




