05-07.前人未到の第一歩
「ナズナ……ではありませんね」
「……」
トリスティア。彼女は早速ワタシの下を訪れた。モルレティアから報告を受けていたとおりだ。
執務室の壁に掛かっていた地図を引っ剥がし、とある場所を指さした。
「連れて行けと?」
「……」
彼女は頷きすらせず、示し続けている。
「準備が必要です。一日お時間を」
「……」
引く気はないようだ。今すぐ行くつもりらしい。変わらず地図を指し示し続けている。
やむを得ない。出立しよう。ナズナ本人とティアからも許可は出ている。モルレティアがティアを呼びに行った筈だ。すぐに合流出来るだろう。
「わかりました。十分以内に支度を済ませます」
「……」
トリスティアはようやく指を降ろした。
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「ナズナの言っていた通りなのだわ」
「馬車の準備は済んでいます」
「完璧なのだわ。短い時間でよくやってくれたのだわ。早速出発するのだわ」
「「「御意!」」」
わたくしたちも出るのだわ。皆で行くのだわ。決してナズナを一人になんてしないのだわ。
トリスティア(ナズナ)、ユーキ、騎士様、そしてわたくしは、一台の馬車に乗り込んだ。
この馬車には馬の代わりに亜竜たちが縛り付けてある。乗り心地や耐久性については未検証だ。流石にそこまで確かめられる程の時間は無かった。
「出発致しますわ!」
四方四匹、中央一匹の計五匹繋がれた内の、中心に位置する一際大きなワイバーンに跨ったモルモルが、皆に聞こえるよう、声を張り上げた。
モルモルには意外な才能があったようだ。飛竜たちは寸分違わぬ膂力で空へと飛び立った。
身構えていた程に揺れは感じない。本当に短い時間でよくぞ準備を済ませてくれたものだ。ナズナの世話もよく焼いてくれていた上でこの成果。これは相応の報酬が必要だ。
そろそろモルモルのハーレム入りを認めるべきなのかもしれない。ナズナも喜ぶだろうし。
……やっぱり後でもう少し考えるのだわ。切り札は最後まで取っておくのだわ。……決して抵抗があるわけではないのだわ。とっくにモルモルのことだって認めているのだわ。
「トリスティア。話してくれ。目的はなんだ。もし仮にあの国の民を皆殺しにしようと言うなら……」
「……」
「……そうではないのだな?」
「……」
「トリスティア」
「……救う」
「そうか。ならば憂いは無い」
やったのだわ! 遂に引き出したのだわ! 流石騎士様なのだわ!
というか普通に喋れるのだわ! 何か制約でもあるのかと思ったのだわ! こんにゃろ! なのだわ!
「……」
「……」
「……」
「……誰かなんか喋るのだわ」
今はナズナもモルモルも居ないのだわ。静か過ぎて息が詰まりそうなのだわ。
「トリスティア」
「……」
流石騎士様♪ 率先して高難易度に挑んでくれたのだわ♪
「……私はお前にとってのなんだ?」
「……」
「トリスティア」
「……従者……だった」
「そうか。ならばそのように扱え」
「……いいの?」
「無論だ。でなければ不自然であろう」
「……」
凄いのだわ! いっぱい引き出したのだわ!
「トリスティア」
「……」
こんどはユーキがいくのだわ!
「その体に施された忘却の呪いを解いては頂けませんか? ワタシたちが必ずナズナを守り抜いてみせます」
「……」
「トリスティア」
騎士様の援護なのだわ!
「……善処する」
やったのだわ♪ 遂に譲歩を引き出せたのだわ♪
次はわたくしの番なのだわ!
「トリスティア!」
「(ぷいっ)」
こんのっ!! あんぽんたん!!




