02-01.勇者御一行と行き倒れ
「閣下。勇者一行を補足しました」
どことも知れぬ森の中。
人知れず佇む館。
その一室に、彼らは居た。
「ふむ」
異形の男だった。
紳士然とした身なりの男だ。その首元から頬にかけては豊かな黄金色の毛並みに覆われている。
その姿は紳士服を着た獅子とでも呼ぶべきものだ。
「計画を進めよ。抜かるでないぞ」
「ははっ!」
部下が去った部屋で、獅子は一人、呟いた
「魔王様。必ずや勇者めを討ち取ってご覧にいれましょう」
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「大丈夫かい?」
……ふへ?
「行き倒れかねぇ~」
「うむ」
……ありゃ?
……イケメン、美女、マッスルの三人が覗き込んでいる。
ぐぅ~~~……。
「あらま」
「……おなかすいたぁ」
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「ガツガツガツガツガツガツガツガツ!!!」
「いい食べっぷりだねぇ♪」
「おかわり!」
「はいよ♪」
ああ! 生き返る!! 何日ぶりの食事だろう!!
「まだまだあるから好きなだけお食べ♪」
「ありがとう!!」
ガツガツガツガツガツガツガツガツ!!!
「すっごい食べっぷりだね」
「うむ」
「こらっ!」
「あいたっ!?」
「女の子の食事をマジマジ見るもんじゃないよ! そんなんだから恋人の一人も出来ないんじゃないのさ!」
「それはアルバ姉のせいだろ!」
「なんだって!?」
「この前だって!」
「うむ」
「「……」」
なんだろう。この三人組。
そういえばまだ名前も聞いてなかった。
「はひゅひゃ」
「なんて?」
「いいよ♪ 食べ終わってからにおし♪」
あんがと!
ガツガツガツガツガツガツガツガツ!!!
ガツガツガツガツガツガツガツガツ!!!
ガツガツガツガツガツガツガツガツ!!!
「いつまで食べてるんだろう……」
「こらっ!」
「あいたっ!?」
愉快な人たちだ。
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「お控えなすって! 手前、日ノ本の生まれ、姓は七草、名は菜沙と発します。この度は身に余るご厚意を賜り、誠にありがとうござんす。手前、七草の菜沙ぁ〜。この御恩は、たとえこの身が泥にまみれ、骨が砕けようとも決して忘れはいたしません。生涯を賭してお返しいたす覚悟にござんす。以後、万事よろしくお頼み申します!」
「……は?」
「あはは♪ 面白い子だねぇ♪」
「うむ」
流石に悪ふざけが過ぎたかしら?
「失礼。私ナズナっていいます。この御恩は忘れません」
「あ、うん……ナズナ……さん。いいよ、気にしないで」
「そうさね♪ アタシらは天下に名高き勇者御一行様だ♪ 一飯の恩義くらい貸しにも思わんよ♪」
「うむ!」
めっちゃ良い人たちだぁ~……うん? 勇者?
今、勇者って言った?
『言ってたのだわ♪』
はぇ~……。いるんだね。勇者って。
『魔王だっているのだわ♪』
まっじで!?
『マジなのだわ♪』
そういうの早く言ってよ。
『見に行きたいのだわ♪』
いや。厄介事は避けなきゃでしょ。
『そんなのつまらないのだわ!』
はいはい。狙い通りになってよかったね。
『日頃の行いのお陰なのだわ♪』
よく言うよ。食料だって見つけられなかったくせに。
『心外なのだわ! ナズナが無茶したせいなのだわ! わたくしはとめたのだわ!』
……いつも適当なことばっかり言うからじゃんかぁ。
『いつもは信じてくれるのに今回は疑ったのだわ!』
ごめんて。次からちゃんと従うから。
『ならいいのだわ♪ 許してあげるのだわ♪』
ぐぬぬぅ~……。腑に落ちないぃ~……。
「ナズナ……さん?」
あれ? どこ見てる? え? まさか?
『凄いのだわ♪ わたくしの存在に気付いているのだわ♪』
えぇ!?
『まだ確証までは持っていないのだわ♪』
それでも十分凄いでしょうに……。
「えっと……」
あ、やべ。
「さんはいらないです」
「あ、うん。……わかった。僕はルクス。こっちは姉のアルバ。それからブルーノだ」
ティアの件は一先ず飲み込んでくれたようだ。
「よろしくね♪ ナズナ♪」
「こちらこそ♪」
「うむ♪」
「うむ」しか言わないな。ブルーノさん。
「ナズナはこんなところで何をしていたんだい?」
こんなとこって言っても街道だけどね。私が倒れていたのは。馬車に轢かれなくてよかったね。くわばらくわばら。
そして今は、街道脇に設置したキャンプ地で、食後のお茶を楽しんでいるところだ。染み渡る~♪
『誰に向けた説明口調なのだわ?』
いいから。そういうのツッコまなくて。
『気になるのだわ♪』
本当になんでも気になっちゃうんだから。もう。
「家出かい? あんた、どこぞの貴族んとこの子だろ?」
「アルバ姉!」
「これは必要なことよ。いいからルクスは黙っとき」
「えっと、その件で迷惑をかけちゃうことは無いと思う。私の故郷は遠く離れた国だから」
「そうかい」
……それだけ?
「他に話しておきたいことはあるかい? 遠慮せんで、お姉ちゃんに全部任しとき♪ 力になってあげるよ♪」
「そうだね。どこか目的地があるなら送り届けるよ」
「うむ」
めっちゃええ人たちやぁ~!
「目的地は……特にありません。逃げ続けてきたんです。……ずっと」
なんか自然と敬語になっちゃうよね。眩しすぎるぜ……。
「なら話は簡単だ♪ 暫く一緒に居な♪ 新しい居場所はアタシたちが見つけてやるさね♪」
お姉ちゃん……!!
「取り敢えず次の町までは一緒に行こうか」
「なんだい。そこで自分の隣に居ろくらい言えないもんかねぇ」
「アルバ姉。人助けが悪いことだとは言わないよ。けれど僕たちにも使命がある。それに彼女を巻き込むわけにはいかない。いつ魔王軍の者たちが仕掛けてくるとも限らないんだ」
今のはそういう話じゃないと思う。
「はぁ~……この子は。もう。仕方のない子ね」
まあ、お姉ちゃんもお姉ちゃんで若干ズレてる気がしなくもないけれど。ふふふ♪




