05-02.分離不安
ティア、騎士様、ユーキちゃん、モルモル、お姉ちゃん。
私にも大切な人たちが出来た。少し前まで考えられなかった程多くの人たちに囲まれている。
アルバお姉ちゃんはトリスティアを超える為の武者修行に出ちゃったけど。……大丈夫かな? 目的忘れちゃわない?
お姉ちゃんって、ジッとしてられない質なのかな。動いていないと落ち着かないのかな。ルクス君の件にはケジメがついたのかな。それともまだ途中なのかな。
わからない。私にはお姉ちゃんがわからない。わからないのはお姉ちゃんだけじゃない。ティアだって騎士様だってユーキちゃんだって、モルモルでさえ、私にはわからない。
皆頑張ってる。それはわかる。
けど何を目指しているのかがわからない。
私に拘る理由がわからない。
……本当に?
本当に私はティアのことがわからないの? 一緒にいた期間は一年にも満たない短い間だったけど、それでも誰より側に居てくれていたのに?
そんな筈はない。他の誰を理解出来ずとも、ティアの想いを受け止められない筈がないのだ。
「ティア♪ 何かてつだ」
「ごめん! ナズナ!」
あらま。通り過ぎてっちゃった。
忙しすぎて語尾まで忘れてるし。
「ナズナ様♪ どうぞこちらへ♪」
モルモルが近づいてきた。
なんだかんだモルモルも忙しいんだよね。騎士様とユーキちゃんもあっちこっち駆けずり回ってるみたいだし。
王様も楽じゃないんだね。
「ううん。邪魔しちゃ悪いから」
「遠慮なさらず♪ 陛下からも仰せつかっておりますわ♪」
モルモルは私の手を引いて強引に歩き出した。
「モルモルだってお仕事中だったんでしょ?」
「最優先はナズナ様ですわ♪ それが私のお役目ですわ♪」
モルモルこそ魔王国には必要だろうに。
「ティアは魔王国を作り変えるつもりなの?」
「ご慧眼ですわね♪ その通りですわ♪ 人族と国交を結ぶつもりなのですわ♪」
「そりゃまた随分と大それた……」
「全てはナズナ様のためなのですわ♪」
「私は別に人族の社会に未練なんて無いよ?」
「そうではないのですわ。欲しているのは知識なのですわ」
「……トリスティアを抑えるために?」
「ですわ♪ 目指すは世界統一ですわ♪」
世界征服の間違いじゃ……。
「流石はティア様なのですわ♪ 決して壮大な夢物語なんかじゃないのですわ♪」
「そもそも魔族は人間を滅ぼしたくないんでしょ?」
前に言ってたじゃん。攻め込む範囲には限りがあるって。
「滅ぼしなんてしませんわ。世界統一ですわ」
絶対戦争になるってわかってるでしょうに。
「傀儡とするに都合の良い国があるのですわ♪」
「……まさか」
「トリスティア様の故郷を内側から奪い取りますわ♪」
「獅子身中の虫?」
「なんですの……? その悍ましい例えは……」
あれ? ちょっと違ったかも?
とにかく、人間の国の内側から裏切らせるつもりなのね。
「トリスティアの機嫌でも取るつもり?」
「そのような意図も無きにしもあらずですわ♪」
一石二鳥だね。色々考えてるんだ。
「このまま散策に出るのですわ♪」
「まさかと思うけど、私を口実に仕事サボろうとかしてないよね?」
「ま、まさかですわ~♪」
いいけどね。ふふ♪
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「やあ王妃様♪ 今日も良いの入ってるよ♪」
「ありがとう♪ おじさん♪」
うまうま♪
「なんだかんだ言いながら上手くやっているのですわ。ちゃっかりしているのですわ」
「姉ちゃんもどうでい♪」
「いただきますわ。……あら。本当に美味しいんですのね」
「そうだろ♪ そうだろ♪」
食べ歩きはやめられないんだよね。この身体ってあんまり燃費よくないみたいだし。常時無敵バリア張ってるせいだよね。間違いなく。
「また来るね~」
「あいよ♪」
うまうま♪
「今日はどこへ行くんですの?」
「連れ出したのはモルモルじゃん」
「ナズナ様がこちらの屋台まで行きたいと申したのですわ」
「もう用事はないから好きに連れてって」
「かしこまりましたわ♪」
「休憩宿に連れ込んだらティアに言いつけるから」
「そんなことしませんわよ!?」
冗談だって。
「そっか……しないんだ……」
「なな!? ガッカリされているのですわ!?」
「……ぐすん。やっぱりモルモルは私のこと好きじゃ」
「大好きなのですわ! 敬愛しておりますわ!!」
「いいよ。気は遣わなくて」
「っ!!」
あかん。悪ノリしすぎたかも。
「行きますわ!!」
冗談だってば。
モルモルは私を抱き上げて駆け出した。
「待って。ダメだよモルモル。ティアが悲しむよ」
「焚き付けたのはナズナ様なのですわ!」
「冗談だってば。ありがとう、モルモル。少し安心したよ」
「少しじゃ足りないのですわ!!」
「悪かった。ごめんなさい。ちょっと構ってほしかっただけなの。悪ふざけが過ぎました」
「ならば尚の事ですわ! 好きに吐き出すのですわ!」
「ストップ。止まって、モルモル」
「なりませんわ! 今更引き下がれませんわ!」
「ダメだってば。私を困らせないでよ」
「困らせようとしたのはナズナ様なのですわ!」
「だから謝ってるじゃん……」
「謝る必要なんてないのですわ! それでいいのですわ! ティア様からもくれぐれもと言われているのですわ! サインを見逃すなと念を押されているのですわ!」
「違うんだってばぁ。そんなんじゃなくてぇ~」
「いいから好き放題するのですわ!」
「お願いだから止まってよぉ……ティアを泣かせたくなんてないんだよぉ……」
キュキューと音を立てて、モルモルが急停止した。
「そうでしたわね。相手が違いますわよね」
「そうそう。ありがとう。わかってくれて」
「ではすぐに向かいますわよ!」
くるりと反転したモルモルは、再び猛スピードで駆け出した。




