04-16.真の魔王
「なんだ貴様ら!? 足止めはどうした!?」
突然の裏切り。
モルレティアを抱えた三人娘が、黒獅子の下へと駆け込んできた。
「なっ!? まさか貴様ら!?」
気を失ったモルレティアを盾のように構えた三人は、黒獅子と扉を背に、迫りくるトリスティアに向き直った。
「巫山戯た真似を!!」
慌てて前に飛び出す黒獅子。
三人娘は即座にその場を飛び退いた。
「「「よし!!」」」
「よし! じゃないですわぁっ!?」
土壇場で目覚めたモルレティア。
彼女は珍しく高速で思考を働かせ、現在の状況を読み当てた。
「ぐわぁぁぁあああ!!」
「兄上!?」
腕が!? 消し飛んだ!?
「黒獅子! 下がりなさい!」
「もっと引きつけるんだよ!」
「遠距離から撃たせろ! 扉に誘導するんだ!!」
三人娘の声が届いたのか、或いはその高度な知性で状況を察したのか、負傷した黒獅子は大きく飛び退り、扉の前に張り付いた。
トリスティアの攻撃方法は主に二つ。
至近距離に迫った者を塵に変える圧縮。
距離のある者を切り裂く圧力の刃。
黒獅子が離れたことで、トリスティアは不可視の刃を解き放った。
黒獅子は咄嗟にそれを避けた。来るとわかっていたとはいえ、魔力を感じられぬその一撃を避けられたのは奇跡だ。黒獅子の高い実力と警戒心が成し遂げた快挙だ。彼は決して金獅子に劣る弱者などではないと証明してみせた。
「なん……だと……」
しかし彼は絶望を抱かずにはいられなかった。トリスティアが無造作に放った一撃は、まるで紙切れのように開かずの扉を引き裂いていた。
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トリスティアは脇に避けた黒獅子に意識を向けることもなく、扉に向かって歩みを進めた。
「そっち……だったんですか……」
「これは想定外だ」
「兄上を餌にする必要無かったじゃありませんの!!」
「なんでナズナが真の魔王になんて興味を持つんだい?」
「「さあ~……?」」
「さあじゃありませんわ!!」
「あれ?」
部屋に入ったトリスティアはすぐに引き返してきた。その腕には見覚えのない少女が抱かれている。
どことなくトリスティアに似た少女だ。意識を失っているらしい。だらりと腕が垂れ下がっている。
「……」
トリスティアは騎士の下に歩み寄った。
少女を突き出して受け取るように促した。
騎士が少女を受け取ると、トリスティア本人はアルバの下へ歩み寄り、その身を預けるように意識を失った。
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「……?」
「ナズナ!! ナズナ! 起きたのだわ!! ナズナ!!」
……?
「ナズナ! ナズナ!! 聞こえているのだわ!? しっかりするのだわ! ナズナ!!」
「ティア。落ち着け」
ティア……?
「落ち着いてなんていられないのだわ!!」
「……ティア? 本当にティアなの?」
「ナズナぁ!!!」
私にしがみついてわんわん泣いているこの少女はティアで間違いないらしい。
「久しぶりだね。ティア。驚いたよ」
「こっちのセリフなのだわぁ~~~~!!!」
あらま。泣き止ませないと話にならないかも。
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「なるほどね。つまりティアが真の魔王になっちゃたんだ」
「違うのだわ。そんなつもりはないのだわ」
けど扉の先で何か手に入れちゃったんでしょ? その身体が何よりの証拠でしょ? やったね♪ 夢が叶ったね♪
「黒獅子はどうなったの?」
「彼は腕を失いました。自らの腕だけでなく、多くの部下たちを。故に灰燼に敵わぬと負けを認めました」
「あ、ユーキちゃん。それにモルモルも」
「ナズナ様♪ お目覚めになられたのですわね♪」
あれ? モルモルなんか変わった?
「うふ♪」
……まあいいや。見なかったことにしておこう。
「ナ・ズ・ナ・さ・ま♪」
見せつけてくるし。
「何さその首輪。捕虜にでもなったの? やっぱり黒獅子のスパイだったの?」
「やっぱりってなんですの!? 疑ってたんですの!?」
そりゃあね。
「ナズナ様が所有してくださった証なのですわ! ティア様が付けてくださったのですわ!!」
なるほど。調教されちゃったと。私が寝過ごしている間に何をやってたんだか。
「もう。ティアったら」
「プレゼントなのだわ♪」
ティアがいいならいいけどさ。
「で? 新しい魔王様は? アルバお姉ちゃんが?」
「それがアルバも旅に出てしまいまして……」
なんですと?
あかんでしょ。流石にそれは無責任過ぎるでしょ。
「誤解しないでください。彼女はナズナのために旅立ったのです」
「もしかしてトリスティアに? 負けたから?」
「そんなところです」
……? なんか誤魔化してる?
なんだろう。気になる。
「何があったの?」
「……」
「話して。ユーキちゃん。ちゃんと全部話して。どうしてトリスティアはここから旅立たなかったの? わかってることだけでもいいから。皆はいったい何をしたの?」
さっきも少し聞いたけど、たぶん全部じゃないんだよね。ティアが知ってたことって一部だけなんだろうし。騎士様は何も言ってくれないしさ。私は知るべきなんだよ。きっと。




