04-12.突貫作戦
「か~ちこみじゃぁ~~~~~~!!!」
「「「「「うおぉぉぉぉぉおおお!!!!!!」」」」」
魔王城の正門前には既に大量の魔族が待ち構えていた。
そりゃそうだよね。わざわざ城の中で待ち構えたりしないよね。数が多いなら広いところで袋にした方が有利だもん。黒獅子はやっぱり賢いね。
『黒獅子本人までいるのだわ!』
あらま。度胸もあるのね。
流石は金獅子の弟か。そんな言い方をしたら本人は嫌がるのかもしれないけれど。
「灰燼様。少し離れてもいい?」
「うむ。好きに動け」
そう言い残し、お姉ちゃんも敵軍に突っ込んだ。
早くも千切っては投げ、千切っては投げの大活躍だ。
案外と正面突破も不可能ではないのかもしれない。
「ユーキちゃん。騎士様。私たちだけで潜入できないかな」
このままじゃ三日間ここで時間稼がれちゃうかもだし。
彼ら待ち構えているだけで、囲い込んでこないんだよね。
私たちからしたら正面からの一点突破しか手段が無いんだけど、あんな風に展開して待ち構えられたら攻め込みづらいよね。どのみちやることは変わらないんだけどさ。
いつでも袋に出来るのに、そうせず敢えて広がってるんだもん。不意を突かれて横から抜けられるのを怖がってるみたい。それに私たちを倒し切ることを目的にした動きじゃないっぽいんだよね。ちょっと当てが外れたよ。もちろんこれはこれで順当なんだけどさ。
「私がご案内いたしますわ」
「ダメ。モルモルはここに居て。もしかしたら黒獅子が手心を加えてくれるかもしれないから」
期待薄だけどね。とはいえ連れて行くわけにもいかないだろう。そもそもモルモルの知ってる道なんて全部使えないだろうし。黒獅子がお見通しだろうからね。
「大丈夫。心配は要らないよ。これは殺し合いじゃない。王を決める戦いだ。王が臣下となるべき者たちを不必要に殺す筈がない。安心してカカシになっていて」
「は、はい……ですわ……」
『やっぱり酷いのだわ。もう少しくらいは優しくしてあげてもいいのだわ』
そう? なら次からね。
「ナズナ」
バサッと。ユーキちゃんが翼を広げた。
普段は小さな黒い翼が、大きく広がって月明かりを受けている。濡羽色ってこんな感じだったろうか。
「綺麗……」
「ありがとうございます♪ 行きますよ。ナズナ」
ユーキちゃんが私と騎士様を抱えて飛び上がった。
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「確かに中には入れたけれども」
ここは城の尖塔だ。最上階だ。どうやら城の殆どは結界で囲まれているらしい。直接侵入できる場所は限られているそうだ。
「この世界にもバリアなんてあったんだね」
私だけのものかと思ってた。
「緊急時用の特別なものです。そう長くは保ちません」
なるほどね。
「まあいいけどね。私たちは囮でもあるし」
ガッハッハ! 潜入と言ったな! あれは嘘だ!
もちろんこんな行き当たりばったりな行動を思い付きで実行したわけじゃない。
私たちはモルモルが情報を流している可能性を考慮していた。もちろん本人の意図があるかどうかは関係ない。盗聴器的な何かが仕掛けられているかもしれないからね。
だから敢えて戦場で思いついたことにして、敵の眼の前で飛び上がったのだ。今頃正面軍の何割かも、城内の守りのために引き返していることだろう。
「謁見の間を目指そう! お姉ちゃんたちと競争だ!」
「うむ!」
「はい!」
ユーキちゃんが先導役として駆け出し、騎士様が私を抱えて後に続いた。
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「いたぞ!! 奴らだ!!」
当然のように見張りがあっちこっちで待ち構えている。これは元々用意されていたものっぽい。
囮作戦は失敗かしら? 全部読まれてた?
何せ敵は数千だからね。私たちとは段違いの数だ。正面を三日間守りつつ、空からの侵入者少数を抑えるくらい造作もないのかもしれない。
「こちらへ!」
私たちは極力戦闘を避けて城の中を駆け抜ける。
もちろん追手は増えていく。そろそろどこかに隠れた方がよくないかしら?
「もうすぐです!」
やっぱり一旦どこかに寄っていくんだね。これは謁見の間へのルート取りじゃないっぽいし。
突然角を曲がったユーキちゃんは、騎士様の手を掴んで正面突き当りの壁に飛び込んだ。
どうやら隠し扉になっていたらしい。壁の一部がくるりと回って、滑り台みたいに急角度の螺旋階段が姿を表した。
そのまま半分落ちるみたいに駆けて行く。騎士様は足を取られることもなく、しっかりとユーキちゃんに付いて行く。
さては最初から知ってたな? 味方を騙すなら私から? もとい。敵を騙すなら味方からってこと? 私も信頼されてなかった?
『単にチャンスと意味が無かっただけじゃないかしら』
まあそうね。私が自分で走るわけでもないもんね。わざわざ注意喚起しておく意味もないよね。普通に怖いけど。ここでうっかり落とされたら、間違いなくトリスティアが現れるだろう。それはそれで名案……なわけないか。魔王城内の魔族を皆殺しにしかねないし。じぇのさいど。
「謁見の間はすぐそこです!!」
階段が終わり、再び隠し扉を潜って外へと飛び出した。
「「「なっ!?」」」
そこには視界を埋め尽くさんばかりの魔族たちが待ち構えていた。




